メモリークリニックお茶の水理事長 朝田 隆
コロナ禍が続く中、家の中に閉じこもりがちの人が多いかもしれません。刺激が少ない生活は、認知機能の低下を招くおそれがあります。認知症研究の第一人者として知られる朝田隆先生が考案した脳をほぐすトレーニングで、認知症を防ぎましょう。
明度が低いイラストのほうが図として認識されやすく明度が高いと地になりやすい
第6回で紹介した「〝図〟と〝地〟の心理概念」はご記憶にあるでしょうか。一つの絵に描かれたものが、ほかのものを背景としながらはっきりと見えることを「図」といい、背景を「地」といいます。今回紹介するイラストも、図と地の概念を生かしたものです。
地と図の動物
下のイラストをご覧ください。何の動物が描かれているか、お分かりになるでしょうか。ネコしか見つけられないときは、もう少し見方を変えてみましょう。
ルビンの壺
図と地の概念を生かして描かれた有名な絵が『ルビンの壺』。「壺」にも「向き合った二人の横顔」にも見えることでしょう。なぜ、一枚の絵で二つの認識ができるのでしょうか。その謎に迫るためのキーワードが〝明度〟です。
赤、青、黄色などといった、色みの明るさの尺度を明度といいます。色の中で最も明るい色は白、最も暗い色は黒です。ルビンの壺を最初に見たとき、黒い壺がはっきりと見えて、向き合った二人の横顔を見つけるのが難しかったのではないでしょうか。色合いが明るい(明度が高い)と、「図」としてのアピール度が落ちて、逆に暗い(明度が低い)と「図」として見えやすいのかもしれません。
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