日本先進医療臨床研究会理事長 小林 平大央
大麻成分をまったく含まないのに多くの疾患に著効と韓国で評判の「大麻水」とは?

今回は前号でご紹介したCBD(カンナビジオール)製品とよく似た効能効果を持つ不思議な液状サプリメント「大麻水」をご紹介します。「大麻」という名前がついていますが、大麻の種子を使って作られる製品で、大麻の成分であるCBDや大麻の酩酊成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は含有していません。そのため、大麻水は日本の麻向法(麻薬及び向精神薬取締法)には抵触しません。つまり、健康飲料の分類であり、いわゆる食品です。
大麻水は、もともと大麻の成分であるCBDやTHCを含まない大麻の種子から特殊な製法で成分を抽出した、お茶のような栄養ドリンクです。液状サプリメントとして、韓国で販売されている製品です。
日本先進医療臨床研究会では、認知症と関節リウマチに対して、この製品を使用した観察研究を「韓国産種茶(シードティー)」の名称ですでに行っています。大麻の規制成分であるTHCをまったく含まないため、特定臨床研究ではなく、通常のサプリメントと同じように食品使用の治療実績から後ろ向きに効果を測定する観察研究で、大麻水の効果を調べているのです。
大麻水は、韓国でCBDオイルなどでしか治療できないといわれる重度のてんかんやパニック障害などの精神神経疾患に対して、非常に効果があると評判になっています。それだけではなく、CBD製剤が効果を発揮する認知症やED、関節リウマチなどの自己免疫疾患、糖尿病、高血圧などの生活習慣病、老化疾患などに対しても著効であると評価されています。
そして、大麻水はこれら疾患に対して容量依存的に効果があるともいわれています。容量依存的とは、量によって効果が変わるという意味です。要するに、たくさん使用するとより効果が高まり、少なく使用すると効果が薄れるといった意味です。
これに対して、大麻水と韓国内で比較されるCBD製剤は、実は容量依存的ではありません。CBDの量を多く使用したからといって必ずしも大きな効果があるわけではなく、逆に少なく使用した場合でもあまり効果がないということもないのです。
CBDを使用することで効果があるのは確かなのですが、効果の程度は使用した量とは相関しない場合が多いのです。また、CBDだけを含有する製剤ではなく、THCをある程度含んだ製剤のほうがよく効くという話がある一方で、CBDだけを含有するアイソレート製剤でも製品によっては非常に効果があるという場合もあります。
このように、CBD製剤にはまだ知られていない部分が多くあります。そのため、これまで医師が治療の一環としてCBD製剤を通常の医薬品のように使用するには、医師の経験によるさまざまな知見が必要でした。
こうした事実から、当会の特別顧問で科学技術顧問である東京理科大学名誉教授の村上康文先生はある仮説を提唱しています。その仮説とは、従来効果があるとされてきたCBDという成分は実は効果を発揮する主成分ではないのではないかというものです。もっといえば、CBDやTHCに付随する、未知のなんらかの成分が実は効果の主成分ではないかということなのです。

(新興医学出版社)
さらに、これまでの膨大なCBD研究の中でもこの未知の成分が発見されてこなかったことを考えると、単一成分ではなく、漢方薬などでよくある数種の成分の複合効果かもしれないというのです。漢方などの生薬では、数種の成分が複合して初めて効果を発揮することがよくあります。効果を発揮する成分を1つずつ取り出して効果を測っても、1つの成分だけでは効果を発揮しないため、効果測定が非常に難しく、どの成分がどう効いているのか、判然としない場合が多いのです。ところが、決まった数種の成分をある程度の割合で調合すると、決まって一定の効果を発揮するというのが生薬の効能効果なのです。
西洋医学や西洋薬学では、こうした生薬の複合的な効果を測定するのは非常に困難です。つまり、CBDに代表される大麻医薬も、実はこの生薬の働きに近いのではないかというのが村上先生の仮説なのです。
もしこの仮説が正しいとすれば、今後の大麻由来医療の在り方は大きく変わってきます。つまり、今後の大麻由来医療では、単一成分であるCBDやTHCの含有量は着目されなくなる可能性があるのです。そして、大麻の種子に由来する複数の成分に着目して、これらの生薬的な効果を測るべく、複合的な成分分析が効果成分の解明への主流となる可能性があるのです。
THCが不要になれば、日本での流通に関して麻向法の規制を受けないため、大麻種子由来の製品は新しい規制以前の従来のCBD製品のように薬局や医療現場で普通に販売ができ、たくさん出回る可能性が高いのです。そのため、もし村上先生の仮説が正しければ、難治性のてんかんなどで困っている多くの患者さんやそのご家族にとって大きな福音となります。これまで違法かもしれないという不安の中で使用していた大麻製品ではなく、合法的に安心して購入も使用もできる大麻種子由来のサプリメントをご家庭内に所持して使用できる可能性が高まるのです。
このような背景を受け、当会では大麻水を使ってさまざまな疾患に対しての臨床研究を実施する予定です。当会ではすでに大麻水を使用した認知症と関節リウマチに対する観察研究を開始していますが、さらに会員クリニックでの治療を通した観察研究として難治性のてんかんやパニック障害などの精神神経疾患、自己免疫疾患、糖尿病、高血圧などの生活習慣病、老化疾患などへの臨床研究を順次行っていこうと考えています。
そして、次のステップとして、少数の患者さんを対象とした前向きの介入研究を実施していきます。興味のある医師、歯科医師、患者さん、ご家族の方はぜひ当会までご連絡ください。
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