プレゼント

てんかん、認知症、ED、リウマチなどに著効とされる「CBD」と「大麻水」(前編)

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会理事長 小林 平大央

75年ぶりの大麻取締法の大改正!日本の大麻関連市場が大激変の真っただ中

小林平大央
[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主宰。一般社団法人日本先進医療臨床研究会理事長(臨床研究事業)、エポックメイキング医療研究会発起人代表(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

ガンをはじめとするさまざまな難病に効果があり、鎮痛効果も高く、重度のてんかん症候群に著効として、大麻由来の医薬品やサプリメントが注目をされているという話を第39回にお伝えしました。それ以降、大麻に関していろいろと分かってきましたので、詳細情報をお伝えします。

大麻は世界で最も乱用されている薬物であることが報告されています。そして、その規制は国によって異なり、医療用大麻として臨床での使用のみを認めている国もあれば、こうてきな使用を認めている国もあります。

日本ではかつて「大麻取締法」という法律によって大麻の所持だけが禁止され、使用は許可されていました。しかし近年、大麻所持の検挙数が増加していることや、若年層を中心に乱用が拡大し、30歳未満の検挙者が約7割に上ることなどで社会問題となっていました。

これらの問題の原因の1つとして、大麻は「合法な国がある」から「無害である」などの誤った情報によって、その危険性を軽視して入手してしまうことが考えられます。また、大麻取締法では所持には罰則がありますが、大麻の使用自体には罰則がないため、大麻の乱用に関して、ある意味〝ざる法(抜け道が多い法律)〟だったことも関係しているといえます。

そして、大麻の問題を複雑にしていることの1つに、近年、大麻草を原料とした医薬品が米国をはじめ、欧州各国で承認されたことがあります。既存のてんかん薬に強い抵抗性を示すなんせいのてんかん患者に対して、長期に発作頻度を大きく低下させるなどの効能を示したのです。

しかし、日本国内では、大麻取締法の制限により、大麻草から製造された医薬品は、仮に日本国内で医薬品として薬事承認された場合でも、医療現場において使用することができないという問題がありました。ちなみに、これら大麻由来の医薬品が効果を発揮すると思われる日本国内の適用患者数は推計で2万~4万人ほど存在します。重度のてんかん症や難治性の疾患に対しては、大麻由来の医薬品以外に効果的な医薬品がなく、WHO(世界保健機関)などの機関も大麻の医療上の有用性を認める方向にかじを切りました。

こうしたさまざまな問題に対処するため、1948年の制定以来、手を加えられていなかった大麻取締法が75年ぶりに改正されることになりました。2023年12月6日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」として成立し、13日に公布されたのです。この法律での主な変更点は、大麻の規制方法を「部位の規制」から「容量の規制」に変更したことです。

これまで大麻取締法では、大麻の葉や未成熟なくき、樹脂、根を原料とした製品は規制の対象として所持不可でしたが、大麻の種と成熟した茎を原料とした製品は規制の対象外でした。それが、今回の改正によって、大麻の部位による規制ではなく、欧米の規制と同様に大麻のめいてい成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)の含有量によって規制する方向に変更されたのです。

ただし、欧米と大きく違うのは規制の基準となる含有量です。例えば、欧州ではTHC含有量が0.3%未満の大麻草全体を「ヘンプ」と定義する国が主流です。米国でも州によってTHCの含有量に上限が設けられていて、一部の州ではTHC含有量が5%未満の製品を安全な大麻成分であるCBD(カンナビジオール)製品として認めるなど規制が細分化されています。

『日本人のための大麻の教科書』大麻博物館著(イースト・プレス)

これに対して、今回の日本の法改正で規制される含有量は、なんと0.1~10ppmです。日本の大麻規制で使用される「ppm」という単位は100万分の1のことで、欧米の大麻規制で使用される「%」という単位は100分の1のことです。日本の規制は欧州の1万倍厳しいことになります。つまり、日本では実質的に大麻由来の酩酊成分であるTHCを含有した製品は一般市場での普及を認めないということです。

なお、今回の法改正で基準値以上の成分を含む大麻は麻薬扱いになったため、以前のざる法とは違い、今後は従来の麻薬と同じく厳しい取り締まりと罰則が適用されることになりました。そして、取り締まりが厳しくなったと同時に大麻が麻薬扱いになったことで、大麻由来の医薬品はTHCが基準値以上含有されていても医師などが治療に使用できることになりました。

ただし現時点では、医師が大麻由来のTHCを基準値以上に含む製剤を医療で使うためには「特定臨床研究」の形で厚生労働省のデータベースに登録し、厳しく管理された状態で治療を行う必要があります。これは大麻の乱用を防ぐための措置ですが、当面はこうした厳しい管理の下で、てんかん症候群やガン性とうつう、難治性疼痛などの治療を行うのが標準になると思われます。

なお、特定臨床研究を行うためには、特定臨床研究を審査できる厚労省認定の臨床研究審査委員会で審査を受けて承認される必要があります。そのため、THCを基準値以上に含む「CBDブロードスペクトラム(THC低含有の自然状態のCBD製品)」など、これまで使用していたCBD製剤を使用する治療は思った以上にハードルが高い治療となってしまいました。

また、THCを基準値未満しか含まないCBD製品は、今回の法規制でフリーパスとなったため、THC成分を含まない「CBDアイソレート(CBDのみを抽出した高純度の粉末)」などの治療素材は医療現場や一般市場にサプリメントとしてこれまで以上に出回ることが予想されます。

さて、次回はこうしたCBD製剤とは違い、大麻の有効成分と考えられているCBDも酩酊成分であるTHCもまったく含まないにもかかわらず、韓国で多くの症例に著効であったというデータがある「大麻水」という不思議な液状のサプリメントをご紹介します(後編へ続く)。