365調査隊
「噛む」という行為は、食べ物を歯で切ったり砕いたりするだけではなく、唾液や消化酵素の分泌を促進する働きもあります。健康や正常な代謝に必要不可欠な行為ですが、果たして牛乳の吸収率には効果が期待できるのでしょうか……。咀嚼に関するウソ・ホントについて、調査隊が真相に迫ります。
消化酵素が分泌され吸収率向上の可能性はある
健康は食から作られるもの。だからこそ、日々の栄養バランスにはこだわりたいですが、せっかく食べるなら食材の栄養を最大限に享受したいところです。
よく「旬の野菜を食べるのがいい」といわれるのもそれが理由で、旬の時期には野菜それぞれが抱える栄養分が最大化します。そのため、積極的に摂取することが推奨されています。
一方で、「牛乳は噛みながら飲むと栄養の吸収率が上がる」という、まことしやかなうわさも耳にします。いかにも都市伝説的ではありますが、もしこれが事実ならぜひ実践したいところ……。SOグレイスクリニック院長の近藤惣一郎先生に聞いてみました。
「残念ながら、科学的な根拠はありません。ただ強いていうなら、牛乳を噛みながら飲むと、唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素が乳糖やほかの成分の消化・分解を促進し、結果として小腸での吸収効率を高める可能性はあるかもしれません」
近藤先生によれば、消化には3つの種類があるとのこと。唾液や胃液、小腸中に分泌される消化酵素による化学的消化。口の中で食べ物を噛み砕く物理的消化。最後に、腸内細菌による生物的消化の3つです。
咀嚼することで唾液の分泌が促され、消化酵素の作用によって食物の成分が化学的に分解される化学的消化が促進されることは十分に考えられそうです。
「もう1つ、冷たい牛乳を冷たいまま飲むと胃腸を刺激することにつながりますが、噛んでいるうちに牛乳が体温に近い温度に温まって胃腸への負担を軽減する効果もあるでしょう。さらに、噛むという行為は満腹中枢を刺激するので、心理的な満足感が得られるかもしれませんね」
つまり、牛乳を噛むことは、栄養吸収の促進や胃腸の負担軽減、満腹感の向上など、思いのほか多くのメリットをもたらす可能性があると近藤先生は語ります。特に、冬場の冷え症に困っている人や体質的に冷えやすい人、胃腸が弱い人は、噛みながら飲むのは意外と良策かもしれません。
なお、牛乳というのはカルシウムの吸収において、非常に優秀な飲み物。近藤先生も「牛乳にはカルシウムの吸収を助けるカゼインホスホペプチド(CPP)という物質が含まれていて、効率的にカルシウムを摂取できます」と太鼓判を押すように、ぜひ日々の食生活に取り入れたいものです。
カルシウムは加齢とともにどんどん減っていき、最悪の場合は骨粗鬆症を引き起こすことも。また、イライラの原因にもなるので、日頃から十分な量の摂取を心がけましょう。


