プレゼント

20年間『100歳元気ストレッチ』を実践しています

私の元気の秘訣

自治医科大学名誉教授 草野 英二

人生100年時代には心身の健康維持が不可欠!

[くさの・えいじ]——1949年、福島県生まれ。1974年、東北大学医学部卒業後、北里大学で研修。1976年、自治医科大学に赴任後、1981年から2年間、米国メイヨー・クリニックに留学。自治医科大学腎臓内科講師・助教授を経て、2002年から同大学教授。現在は同大学名誉教授。2020年から、医弘会かわしま内科クリニック理事長。日本腎臓リハビリテーション学会監事、栃木県医師会常任理事、栃木県透析会理事などの要職を務める。

私は(まん)(せい)(じん)(ぞう)(びょう)(とう)(せき)患者さんに対して、「人生100年時代のいま、あなたの人生はご自身で計画を立てながら、目的を持って生きてください」とお伝えしています。もちろん、患者さんに伝えるだけではなく、私自身も人生100年時代を真剣に生き抜くつもりです。

現在の私は理事長や名誉院長、名誉教授といった名誉職の肩書が多いですが、いまでも診療の現場に立っています。週に3日はそれぞれ別の病医院で腎臓専門医として診療にあたっています。毎週木曜日は、栃木県医師会の常任理事の仕事に携わっています。現役を退いたとはいえ、医師会の中でもいくつか仕事を抱えているため、なかなか忙しい毎日を送っています。

私が医師の道を目指したのは、父の影響です。私が生まれた福島県()(ぶき)( まち)は、細菌学者として世界的に有名な()(ぐち)(ひで)()博士の出身地の近くにある小さな町です。子どもの頃から父親にすすめられて、福島県の名士である野口博士の伝記を何回も読んでいました。小学生になった頃には「自分も医者になろう」と、自然に思っていたんです。「自分はがんという難しい病気も治せる人間になれるかもしれない」とも考えていましたね。

実際に医学の道に進んだ私は、「腎疾患と老化の関係」を研究テーマとするようになりました。子どもの頃に抱いた「がんを治す医師になりたい」という夢から少しずれたように感じられるかもしれません。しかし、「人はなぜ老いるのか」「人はなぜ病気になるのか」というテーマは、医師として追いつづけるべき研究だと思っています。

近年の研究によって、腎臓にあるクロトー遺伝子という老化抑制遺伝子が、私たちの老化や寿命と深く関わっていることも分かってきました。クロトー遺伝子は、ミネラルの一つである「リン」を体外に排出するために必要な特殊なたんぱく質を生み出す働きがあります。クロトー遺伝子の働きが明らかになったことで、「リンこそが老化を促す原因物質である」という新しい考え方が生まれたのです。

クロトー遺伝子の発見は、老化というテーマを研究するにあたり、医学の大きな進歩となる発見だと思っています。人生100年時代に突入した時代に、腎臓の研究に携われることに大きな意義を感じます。

健康寿命を延ばすには心と体の健康が大切。私自身も100歳の長寿を目指します!

健康を維持するために、私は水泳と「100歳元気ストレッチ」を行っています。水泳は300~500㍍の距離を30分~1時間ほどかけて、週に3日程度泳いでいます。

私が「100歳元気ストレッチ」と呼ぶストレッチは、自治医科大学の教授職に就いた頃から始めているので、もう20年近く続けています。毎日の習慣として、仕事へ行く前に20種類のストレッチを15分ほどかけて行っています。

今回は、私が実践している「100歳元気ストレッチ」の中から、厳選した3つをご紹介しましょう。ポイントは体を伸ばすときに「1、2、3……」と数えるのではなく、「10、20、30……」と10刻みで数えることです。さらに、100まで数え終わったときに「100歳までいまのまま体を動かせる!」と強く念じることが大切です。自分の潜在意識に「100歳まで健康でいられる」ことをたたき込むのです。

潜在意識に訴えることは、心の健康を保つうえでも大切です。例えば、毎日10回ほど「自分は明るい」「自分は元気!」といった前向きな言葉を発して、自分の耳に入れてみましょう。この行動を1~2ヵ月ではなく何年間も続ければ、潜在意識が形成されてなんらかの変化が起こるでしょう。

また、何歳になっても目標を持つことが大切です。「家族と温泉に行く」「1日1000歩、歩けるようになる」といった、ささやかな目標でかまいません。目標を持って生きることで、心身ともに充実した毎日を送ることができるでしょう。私の目標の一つは、現在101歳を迎えた母の存在です。私も母のように、人生100年目の日を迎えたいものです。

栃木県医師会の常任理事を務める私は、少しは大局的な部分に携われているように思います。私自身の中では、患者さんを()ること、人間全体を見ること、医療体制の改革を通じて病気に苦しむ患者さんたちになんらかの貢献をすることは、「病の克服」という意味ですべてつながっているテーマです。野口博士に憧れた子どもの頃の夢をかなえるためにも、心身ともに百歳になる日を目指して努力を続けていきます。