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ADHD女子・雨野千晴のうっかりさんでもちゃっかり生きる!第8回

ADHD女子・雨野千晴のうっかりさんでもちゃっかり生きる

雨野 千晴

未来の自分にお任せ!?先のばしグセに対する工夫

[あめの・ちはる]——北海道生まれ。北海道教育大学札幌校卒業。公立小学校教員として10年間勤務。2017年にADHD(不注意優勢型)と診断。現在はADHD専門ライフコーチ、NPO法人代表理事、福祉事業所スタッフなど"多動な"複業活動を展開中。

やらなければいけないことがあるのについつい先のばしにしてしまう。「今やらなくてもいいよ、それ!」ということばかりやってしまう……。ADHD傾向のある方から聞くことが多いお悩みの一つです。もちろん私もそうです!

私はNPO法人ごちゃまぜという、「障害啓発活動をお祭りでやろう」という法人の代表理事をしています。今日は年に一度の総会があったのですが、投影資料を作りはじめたのは前日の23時でした……。いえ、決して時間がないわけではないんです。いつも頭の片隅で「あれ、そろそろやらなきゃなぁ……」と思っています。それなのに、やらなくてもいい別のこと、普段は全然やらない片付けや掃除を熱心に始めて止まらなくなったり、積読になっていた本を急に読みだしたり……。結局、総会の資料は夜中の2時にできあがりました。作業時間は正味3時間ほどだったので、日中にやれば夜中までかからない量なのに、分かっていてもなかなかできないんですよね。

うちの次男は小学4年生。診断はありませんが、私と同じ脳タイプのようです。我が家は自分の洗濯物は自分でたたんで片づけるシステムなのですが、「洗濯物をたたんでしまう」という行為が彼にとってはなんの楽しみもない、苦痛でしかない作業。ある日学校から帰ってきた次男に「洗濯物あるよ~」と声をかけました。すると、「うん、未来の自分に任せるよ! 遊びに行ってきまーす」と意気揚々と出かけていきました。なんだかすごくかっこいいセリフで思わず笑ってしまいました。しかし、未来の彼もいやいややっていたことはいうまでもありません。人はそれを先のばしという(笑)。

「やらなければいけないこと」に取り組むための工夫の一つだと私が感じているのは「誰かと一緒にやる」ということです。洗濯物をたたむのに、全身から〝やりたくない〟オーラを醸し出してスローモーションのような動きをしている次男も、私が「じゃあ一緒にやろう!」というと、なんだかんだいいながら、会話をしているうちにやる気が出てきて、途中から自分一人でできることが多いのです。

ある年のこと。私は例によって市役所に提出しなければいけない法人の資料作成がなかなかできないでいました。そういう私の特性を知っているメンバーが、「今、一緒にやっちゃおう!」とカフェでの作業に誘ってくれたのです。彼女が隣に座ってくれているだけで作業が進み、あっという間に仕上げることができました。

これはどういうことなのか、自分なりに考えてみました。先のばし傾向のあるADHD脳タイプは、ドーパミンなどの神経伝達物質が脳内でうまく働かないというのが原因として考えられているそうです。ですから、「つまらなそうな作業にちょっと楽しい刺激をプラスするドーパミン」を働かせる工夫をしてみるといいのかなと(笑)。私は人と会うのが好きなので、「誰かと一緒」というだけで楽しい気持ちになることから、「ちょっとやってみようかな!」とエンジンがかかるのかな、次男もそうかもしれないなぁ、と思っています。

「やりたくないやりたくない」と思っている作業でも、ちょっと手をつけてみると、意外にその後はスムーズにできる場合もあります。その最初の一歩に手をつけるために、誰かの力を貸してもらうのもありですよね。

そんな経験から、Zoomをつないでそれぞれの作業を遂行する「タスク会」をうっかり女子仲間と開催することもあります。ただZoomでつながって、お互いの作業を黙々とするだけなのに、一人の時より集中できたり、この時間だけがんばってみよう!と思えたりするから不思議です。

「やらなきゃいけないタスクになかなか手が伸びない……」。私も日々、そんな先のばしが発生しておりますが、一緒に工夫しながらトライしていきましょう!

イラスト/雨野千晴