雨野 千晴
見えないものは「存在しないもの」になる!?
先日、ある民放テレビ局のユーチューブチャンネルから取材依頼をいただいて、「発達障害の女性特有の生きづらさ」についてお話しすることになりました。さらに、なんとわが家の様子も撮影したいというではないですか。謹んでお引き受けしたわけですが、内心私は「え、意外にADHDぽくないですね、みたいになったらどうしよう。わざわざ来てもらっても、使える映像が撮れないかも……」なーんて思っていました。
発達障害は見えない障害といわれることがあります。見た目に分かりにくいということですね。私が「ADHDなんです」と伝えると、けっこうな確率で「ええ⁉ 見えない!」といわれます。フォローのつもりでそのように表現されるのかもしれませんが……。そういう時に私は「じゃあADHDに見えるってどんな感じを想像してるの?」と思ってしまいます。服を裏返しに着て、髪の毛ぼさぼさで眉毛の色が左右違う、みたいな感じでしょうか(笑)。まぁ、服を裏返しに着ていることはたまにありますけどね……。見た目に現れる障害、見た目で分からない障害、それぞれに生きづらさや困り感があるのだと思います。
さて、わざわざテレビのスタッフさんたちが取材に来てくださるのに、「ADHDっぽくないですね!」といわれたらどうしよう。部屋は片づけすぎないほうがいいかな……なーんて心配をしていた私。それでも撮影日になったら少しは片づけようと思っていました。しかし私はいつもの見立ての甘さから、取材時間の直前まで、最近はまっているホットヨガのレッスンを入れてしまっていたのです。つまり、片づけが全然間に合わないという状況に!
「あと5分しかない!」と、自転車で大急ぎでヨガ教室から帰宅。無駄に血行がよくなった体で汗だくになりながら、とりあえずその辺に散らばっている洗濯物を全部押入れの中に押し込みました。
なんとか取材スタッフの皆さんをお迎えしたのですが、「押入れの中を撮影してもいいですか?」「もしよかったら冷蔵庫の中も見せてもらえますか?」のご依頼。はい、わざわざ来ていただいたのですから、これはもうどうぞというしかありません(笑)。押入れの中は服の山。冷蔵庫からは、なんと3ヵ月前に賞味期限が切れた牛乳が発掘されました。まったく心配する必要もなく、ADHDらしさが全世界に向けて動画となって公開されたのです。
ADHDといっても、一人ひとりの特性は違っている部分がありますが、「見えないものはないことになる」人は多いのではないかと思います。例えば、私は結婚祝いにすてきな蓋つきの食器セットを親戚からいただいたのですが、陶器製で中が見えないので、作り置きのおかずなどを入れてしまっておくと、私の中ではいつのまにか「存在しないもの」になってしまうのです。気がついた時は、おかずにカビが生えてしまっていたり……。また、食材を買い置きしすぎると、把握できずに腐らせてしまうことが多いのです。そこで、私は毎日の生活の中でこんな工夫をしています。
①作り置きは透明な容器で保存する
中が見えるか見えないかだけでもずいぶん違います。すてきさはありませんが、透明のタッパーやジップロックに入れて保存します。例のすてきな陶器製の食器は今やすっかりインテリアと化しています。
②その日に使うぶんの食材を買う
生野菜などはちょっと割高になってしまっても、八つ切りサイズや少量の小分けなど、その日に使うぶんだけを買うようにしています。
③冷凍野菜を使う
ブロッコリーやホウレンソウは、ゆでたものを冷凍して販売されているものを使っています。
そんなふうにしていても、ひょっこり3ヵ月も賞味期限が切れた牛乳が出てきちゃうわけですが……。液状化した野菜が出てくるのを防げているだけでもまあOKかな?と思っています。