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ヘバーデン結節とつきあって20年!ペットボトルのキャップを開けられないほどの激痛に苦しみました

有名人が告白
タレント・ハワイアンキルト作家 キャシー中島さん

右手小指の第一関節にできたコブが他の指にも現れて〝ガンッ〟という激痛が走りました

[きゃしー・なかじま]——1952年、米国ハワイ州マウイ島生まれ。1969年、モデルとして芸能界でデビュー後、タレントとしても活躍。1979年、俳優の勝野洋さんと結婚。日本を代表する〝おしどり夫婦〝として活躍の場を広げる。現在はタレントの他、ハワイアンキルトの第一人者としてキルト教室の運営や展示会、イベントのプロデュースも手掛けている。

いまから21年前のある日、右手小指の第一関節に激痛が走りました。どこかにぶつけたわけでもないのに、飛び上がるほどの痛みが続いたんです。痛みの程度を言葉にするのは難しいですが、あえて表現すれば〝ガンッ!〟という痛みでしょうか。思わず指を見ると、右手小指の第一関節に小さなコブができていました。

知人に話すと「関節リウマチじゃないの?」といわれました。でも、関節リウマチの症状は、主に指の第二・三関節に現れます。しかも、関節リウマチは片手ではなく両手の指がこわばって、朝の起床時に動かしにくくなるはずです。ところが、私が痛みを感じたのは第一関節だけ。こわばりも感じなかったので、「これは関節リウマチではない」と思いました。その後、40歳から毎年受けている人間ドックでリウマチの検査を受けても異常は見つかりませんでした。そこであらためて「私の指の痛みは関節リウマチではない」と確信したのです。

「この指の痛みは関節炎かな」と思いながら1~2年過ごしていると、痛みはしだいに治まっていきました。その代わり、コブのできた指が徐々に変形してきたんです。若い頃に「白魚のよう」といわれた指が、まったく別の指になりましたが、痛みが治まったことでひと安心できました。

ところが1年後、左手の小指にも同じようなコブが現れたのです。50代では右手の人さし指にもコブが現れました。さすがに心配になったので、健康に関する本を読んだり、インターネットで徹底的に調べたりしました。そこで見つけたのが「へバーデン結節」という病名だったのです。

へバーデン結節は、手の指の第一関節にコブのような結節ができ、激しい痛みを伴う指の関節症です。症状が悪化すると、指が変形してしまうこともある怖い病気なのです。へバーデン結節は、この病気を初めて報告したイギリスのへバーデン医師にちなんで名づけられた病名ですが、いまから200年も前の話。日本では長く「指曲がり症」と呼ばれ、へバーデン結節と呼ばれるようになったのは、ここ数10年のことだそうです。

残念ながら、へバーデン結節の治療法はいまも確立されていません。多くの患者さんは痛み止めの薬や湿布、テーピングなどでなんとか対処するしかないのです。

へバーデン結節に関する知識を学んだ私は「治療法がないなら病院へ行ってもしかたがない」と思うようになりました。一方で、「へバーデン結節の痛みはいつか治まる」という知識もあったので、病院には行かず、市販の痛み止め薬や湿布を使ってしのいでいました。虫のアリから抽出したエキスが効くらしいと聞いたときは、アリの健康食品を取り寄せて試したこともあります。効果はそれなりに感じたのですが、アリを食べつづけることに抵抗があったので、結局やめてしまいました。

その後は左手の人さし指にも症状が出て、激しい痛みを感じるようになりました。続けて左手の親指にも症状が現れたときは親指下の関節も痛みだし、肩に響くような違和感に悩まされました。

うまく絞れなかった雑巾からボトボトと落ちるしずくを見て心から悲しみを覚えました

へバーデン結節の症状が現れはじめたときから、ペットボトルのふたが開けられなかったり、ペット(ネコ)用の缶詰のプルトップを開けられなかったりしましたが、指の痛みが次々と続くと生活に支障が出るようになりました。ペンがうまく握れない、香水をシュッと吹きかけられない、靴下や下着がうまくはけないという状態になってしまったのです。絞れない雑巾からボトボトと落ちるしずくを見たときは、心から悲しみを覚えました。指の第一関節の動きが不自由になっただけで、これまであたりまえのようにできたことがほとんどできなくなってしまったのです。指は想像以上に大切な働きをしている部位であることを、つくづく感じました。

ハワイアンキルトの展示会やイベント、新しく本を出版したときのサイン会などでは、ファンの方から握手を求められることがあります。ファンの方からいただく熱い想いはほんとうにうれしいものですが、感激している方ほど〝ギュッ〟と強く握手をされるんです。そのときの激痛は悲鳴を上げたくなるほど強烈なものでした。

不思議なのは、ハワイアンキルトを制作しているときには痛みを感じないことです。ハワイアンキルトを作るときに動かすのは、親指と人さし指の先だけだからかもしれません。ハワイアンキルトを作ることが天職と思っている私にとって、痛みを感じずに作れるのはありがたいことです。

日常生活での不自由が続いて、ようやく整形外科で診察を受けたのはいまから9年前、57歳のときです。正式にヘバーデン結節と診断してくれた先生からいわれたのは、「老化だからしかたがありません」という言葉。痛み止めの薬と湿布薬を処方してもらっただけの治療でしたが、先生からは「1本1本の指を反らしてほぐすといいですよ」といわれました。

以前の私は、指の動きを少しでもよくするために、手を握ったり開いたりする「グーパー体操」をしていました。でも先生から、「へバーデン結節の患者さんは手を握るだけでも痛むときがあります。無理して手を握ることはありません」といわれて納得しました。さらに、先生は「指を反らせるときは、1本ずつていねいに伸ばすのがいいですよ」とアドバイスしてくれました。

指反らしストレッチを実践してもヘバーデン結節の症状がすぐに軽くなることはありませんが、痛くて動かさない指をほぐすことは大切です。私の場合、指反らしストレッチは毎朝の起床後に行って、ちょっとした休憩時間にも実践しています。指反らしストレッチをすると、気持ちもほぐれてスッキリします。

60歳を過ぎてからは、左右の薬指に「ブシャール結節」のコブができました。ブシャール結節は、指の第二関節にヘバーデン結節と同じ症状が見られる指の関節症です。いまは痛みが治まっていますが、今後は他の指にもコブができるのではないかと心配しています。

私の生徒さんの多くもヘバーデン結節を発症。新しい薬が開発されることを願っています

キャシーさんのハワイアンキルト教室には、多くの生徒さんが集まっている

私がヘバーデン結節を発症したときは、「患者さんの数が少ない珍しい病気」と思っていましたが、実はまったく違いました。

私が直接指導しているハワイアンキルト教室の生徒さんは約200人いるのですが、そのうち20人近くの生徒さんがヘバーデン結節を患っています。生徒さんの中には、指先がねじれたように変形してしまった方もいるんです。生徒さんのみならず、キルト教室のスタッフもヘバーデン結節を患っています。そのスタッフは、「へバーデン結節の痛みがこんなにつらいとは思わなかった」と、いつも悲鳴を上げています。

私の母は、40代半ばのときに関節リウマチと診断されました。関節リウマチに効くと評判のいい温泉で湯治をしていましたが、もしかすると母が患っていたのはヘバーデン結節かブシャール結節だったのかもしれません。

へバーデン結節でつらい思いをしている人はおおぜいいるのに、どこか軽視されているような気がしてなりません。生死に関わらない病気だからでしょうか。医学・薬学界が協力して新しい薬を早く開発していただきたいものです。新しい薬や治療法によって、1人でも多くのへバーデン結節の患者さんが救われることを、心から願っています。

私たちへバーデン結節の患者ができることは、痛みに負けない基礎体力をつけ、免疫力を高めておくことでしょう。私は指反らしストレッチのほか、下半身の血流をよくする「貧乏ゆすり」、筋力をアップさせる「つま先昇降」を実践しています。

いまも続けている貧乏ゆすりは、半月板損傷が原因で起こったひざの痛みを解消するために始めた運動です。専門的な理論は分かりませんが、痛みが治まってからも、ひざに違和感を覚えたときに実践しています。

つま先昇降は、つま先立ちの姿勢で階段を昇り降りする運動です。つま先昇降を続けると、ふくらはぎやひざ、股関節など足全体を構成している部位周辺の筋力を高められるだけでなく、動きそのものを意識することができます。

へバーデン結節やブシャール結節は、ほんとうにつらい病気です。「痛みはいつか治まる」と分かっていても、痛みに耐える生活は長く続けられません。へバーデン結節やブシャール結節を発症するのはほとんどが女性です。男性はもちろん、社会全体がヘバーデン結節やブシャール結節に対する理解を深めていただきたいと思っています。