丸山
神奈川県鎌倉市にある「古都鎌倉・思い出図書館」を取材しました。椎原館長が運営する思い出図書館は、自分史に関する書物をはじめ、自分にとって大切な品物を「思い出」として蔵書するコンセプトの図書館です。終活という言葉が定着した昨今、「思い出」をキーワードに人生を振り返ることで、生き方や人生観の気づきにつながることもあるそうです。
興味津々で鎌倉を目指した私。20~30代の時に都市情報誌の編集をしていた私は、日本有数の観光地・鎌倉の街をよく取材したものですが、何年経っても歩いているだけで楽しくなります。
細い路地の突き当たりに位置する思い出図書館は、木々に囲まれたたたずまいの、まさに隠れ家的な雰囲気です。「ようこそ、思い出図書館へ!」と、柔和な笑みを浮かべて迎えてくれた椎原館長は、かつて毎日新聞社に勤務していたときに携わっていた認知症関連の事業から、認知症の生活アドバイザーとしての肩書もお持ちの方。新聞社時代に考案した「思い出ノート」を活用して、思い出をキーワードにした脳活の啓発にも活躍されています。

椎原さんによると、高齢者は直近の記憶が薄れても、幼少時代の記憶がしっかりしていることが多いとのこと。認知症と診断されても、幼少時代に好んでいた歌や、通っていた学校の歌詞を覚えていることが多いのだとか。思い出ノートに自分の思い出を書き込んでいくことで、家族でも知らなかった意外な発見や脳活につながる活力を取り戻すこともあるのだそうです。
取材をひととおり終えた後、椎原館長が「では、第2部に移りましょうか…」と言って出していただいたのがビール。蒸し暑かった取材日の古都・鎌倉で味わうビールの喉ごしといったら…取材したことをすべて忘れてしまいそうなほど強烈でした。
椎原館長が「まだまだこれからです」と話すように、現在の思い出図書館の蔵書は少ないものの、多くの問い合わせがきているのだとか。今後はデジタルデータで思い出のアーカイブス化を考えているそうです。観光名所が多い古都・鎌倉に、新しい名所ができました。



