美容と健康のためには「食」と「継続」がとても大切なんです
18歳のときからずっと働き詰めだったので、ほんとうは60歳くらいでリタイアして、その後はミニクーパーに乗って全国のおいしいおそば屋さんを巡るのが夢だったんです。ところが実際は、独立したのが60歳で会社を定年退職した後のこと。それからこうして今日まで美容に関する仕事をやらせていただいているわけですから、人生というのはほんとうに分からないものですよね。
76歳になったいまでも講演やセミナーなどで元気に全国を飛び回っていられるのは、やっぱり健康の賜物。あたりまえのことですが、美容と健康は密接につながっていて、不健康なのに美容は満点、なんてことは絶対にありえません。いつまでもキレイでいたいのであれば、まず健康でいることが第一なんです。肌というのはいわば、体のいちばん外側の臓器ですからね。
そのために大切なのが「食」。よく、「どんな化粧水を使えばいいですか?」という質問を受けますが、外側からつけるものよりも、何を食べるかのほうがはるかに重要です。私が日頃からお伝えしている「キレイの5原則」でも、「食」と「キレイ」の関連性を理解していただけると思います。
まず1つ目が「とにかく食べる」こと。これはきちんと栄養をとることと同義で、旬の食材を積極的に口にすると、なおいいですね。春の七草から秋の山菜まで、旬の食べ物をとることで体の中から悪いものを排出することができます。
2つ目は、食べるさいにできるだけ「左右対称に噛む」こと。人には必ずどちらで噛むか癖がありますが、動きが偏ると顔の筋肉や骨格もゆがんでしまいます。
3つ目は、「五感を意識する」こと。季節の食材を目で観察し、香りを楽しみ、そして食感や味を堪能する。こうして五感を使って暮らすことで、生き方もいいように変わってきます。
4つ目は、ちゃんと「両手を使う」こと。日本の文化は両手の文化で、何事もていねいな動作というのは両方の手を必ず使いますよね。この両手というのは神様が与えてくれた最高の道具ですから、その使い方を極めるべきなんです。
そして最後の5つ目が、「これらの4つを継続すること」です。
私がこうした美容の世界に目覚めたのは、オードリー・ヘップバーンの姿に感銘を受けたことがきっかけでした。小学校1年生のときにたまたま目にした映画雑誌に彼女が載っていたんです。ティアラを着けたオードリーの姿は、それはそれは美しくて……。まず、顔の大部分を占めるほど目がぱっちりと大きいことに驚かされましたし、そばかすだらけだった当時の私と違って、お肌もつるつるで毛穴一つ見えません。同じ人間とは思えない美しさに、心底うっとりしたものです。
以来、それまで男の子たちといっしょに野山を駆けずり回って遊んでいた私ですが、どうすればオードリーのように美しくなれるのかということばかり考えるようになりました。
試行錯誤した経験が美容の仕事をするうえでとても役に立ちました
そこで、自分の細い目を少しでも大きくしようと、毎日お風呂で目の回りをマッサージしていたんです。すると、何年も続けるうちに、ほんとうに少しずつ目が大きくなっていくではありませんか。後にこれは、マッサージでまぶたの周辺のセルライトを散らす効果があったからだと知りました。
さらに、スキンケアも徹底し、食べ物にも気を配ったおかげで、そばかすもしだいに消えてなくなりました。美容の仕事を続けていくうえで、当時こうして自分なりに試行錯誤した経験は、決して無駄ではなかったと思います。そのおかげでいま、全国のシニアの皆さんとお話しする機会をたくさんいただいているわけです。
そこで常々感じるのは、美容と健康の秘訣は心の持ち方だということ。私はよく「皮脳同根」という言葉を使いますが、これは皮膚と脳は同じ種類の細胞から形成されることを意味します。
人は何かにドキドキすることで血が巡り、それが健康の面でも美容の面でもいい効果をもたらします。だからこそ、できるだけポジティブな気持ちでいなければならないし、もしつらいことや苦しいことがあったとしても、作り笑顔でもいいからとにかく笑うことが大切なんです。脳というのは意外と簡単にだまされるものですから、たとえ作り笑顔であっても、心身にちゃんといい効果を与えてくれるんです。
好きなものを食べるのもいいし、時間を忘れて旅を楽しむのもいいでしょう。人生百年といわれる時代だからこそ、青春ならぬ〝老春〟を楽しんでほしいですね。