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運動生理学の権威が告白する健康寿命を延ばす秘訣

整形外科
大阪大学名誉教授、医学博士 大山 良德

テレビ番組で大反響を呼んだストレッチは健康寿命を延ばす適度な刺激として最適

[おおやま・よしのり]——1930年生まれ。京都大学助教授、大阪大学教授を経て、1994年より大阪大学名誉教授。大阪科学技術センター・ヘルスケア産業フォーラム委員長、第37回近畿学校保健学会会長、第9回日本健康科学学会会長などを歴任。著書に『大山式ストレッチ健康法』(JDC)、『しあわせストレッチ』(主婦と生活社)、『大山式ウォーキング』(主婦の友社)など多数。

2019年11月に89歳を迎える私は、毎日をはつらつと過ごしています。体力の低下が懸念される同年代の人たちだけでなく、現代の若者たちと比べても、心身ともに健康であると自負しています。

私は「心と体への適度な刺激」こそ健康寿命を延ばす秘訣ひけつだと考えています。私たちの心と体は、適度な刺激によって活性化するのです。

心を活性化させる刺激は、人との会話や新しい体験を通して生じます。常に好奇心を持ちつづけることで、いきいきとした毎日を過ごすことができます。

体を活性化させる適度な刺激として有効なのがストレッチです。毎日のように同じ姿勢や動作を繰り返し、同じ筋肉を使いつづけていると、よく使う筋肉は硬くなり、使わない筋肉は衰えます。また、関節にも不自然な力が長期的に加わることで可動範囲が狭くなり、痛みが生じるようになります。

いまでは誰もが行っているストレッチですが、約20年前の日本ではほとんど普及していませんでした。当時、大阪大学を定年退職する直前だった私は、ストレッチに関する米国の文献を読んで興味を持ちました。研究と実践を独自に重ねる中で、ストレッチが健康維持に役立つと確信するようになったのです。

研究を続けていたとき、ストレッチ教室のテレビ番組への出演依頼がありました。依頼を受けた私は、2001年から3年間にわたって出演。番組は大きな反響を呼び、放送も隔週から毎週へと増えました。番組内でストレッチ教室に参加されたすべての方が、ストレッチによる健康効果を実感していました。

ストレッチを行うと、ふだん使っている筋肉はもちろん、使う頻度の少ない筋肉や関節も刺激されて柔軟性やしなやかさを高める効果が期待できます。筋肉の中には、血管や神経が通っています。筋肉が柔らかくなれば血流が促進され、神経を圧迫していた凝りやしこりが解消されやすくなります。また、全身の柔軟性が高まって転倒やケガなどをしにくくなるのです。

さらに、ストレッチは筋肉トレーニング(以下、筋トレと略す)と組み合わせることで効果が高まります。筋トレによって筋肉が鍛えられると、基礎代謝量(安静にしていても使われるエネルギーの量)が増加します。すると、余分な脂肪を燃焼する働きが高まり、全身から熱が作り出されます。その結果、低体温が改善し、体を病気から守る免疫力の向上にもつながります。

大山式ストレッチトレーニング(OST)の教室ではストレッチと健康についての講義で心と体を刺激している

私が考案した「大山おおやま式ストレッチトレーニング(OST)」は、ストレッチと筋トレを組み合わせた運動です。私は毎日のようにみずから実践しているだけでなく、月に2回、OSTの教室を開いています。教室では、中高年層の生徒さんにストレッチや筋トレの方法について講義と実践指導を行っています。

OSTの教室を開いたきっかけは、大学の仕事を通じてお世話になった地元・関西の人たちに恩返しをしたいと思ったことです。私は20年以上にわたって教室での指導を続けていますが、いまでも多大な刺激を受けています。マンネリ化を防ぐため、心や体の健康に関する新しいことを取り入れようと日々勉強し、研鑽けんさんを積んでいるのです。

入浴後のスクワットや腕立て、ストレッチで体に適度な刺激を与え元気に年齢を重ねた

私には毎晩欠かすことのない習慣があります。入浴後にスクワットを60回、ひざをついた状態での腕立て伏せを50回行っているのです。もちろん、筋トレで硬くなった筋肉をほぐすために、約20分間のストレッチも入念に行います。

さらに、最近ではストレッチと筋トレに加えて、足裏やふくらはぎのマッサージを取り入れています。特に足裏は、内臓や全身の器官につながる末梢まっしょう神経が集中していると考えられています。足裏をまんべんなくマッサージすると、全身を刺激することができるのです。

足腰の筋肉が柔軟性を取り戻せば、歩くことが楽しくなります。外へ出かけると、刺激を受ける機会が増えていきます。心と体に適度な刺激を与えて、元気いっぱいの毎日を過ごしましょう。