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専門医が実証! 股関節の激痛が治まり人工関節手術を防ぐ〝ジグリング〟を徹底紹介

整形外科
川崎医科大学骨・関節整形外科教授 三谷 茂

自動ジグリング器で股関節症が改善し「家族の介護ができた」「仕事を継続できた」と話題

[みたに・しげる]——1963年、京都府生まれ。1987年、岡山大学医学部卒業。同大学医学部附属病院整形外科助手、同大学院医歯薬総合研究科機能再生再建学講師・准教授などを経て、2010年から現職。日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会専門医。

自動ジグリング器による変形性股関節症へんけいせいこかんせつしょうの改善例は枚挙にいとまがありません。次に、特に印象的だった改善例をご紹介しましょう。

Bさん(初診時49歳・女性)は、右股関節の痛みを覚え、49歳のときに私の整形外科を受診しました。Bさんの右股関節は隙間すきまがほとんど消失した末期の変形性股関節症の状態で、夜間痛にも悩まされていました。人工関節に置き換える手術を検討するほどでしたが、お義母かあ様の介護をしているため、どうしても入院することができないと困り果てていました。そこで、私はBさんにジグリングをすすめました。

Bさんはお義母様の介護の合間に、1日1時間程度ジグリングを行ったそうです。すると3ヵ月後の再診時には痛みが軽快。その後も順調に回復し、2年後には、夜間時はもちろん、運動時にも右股関節の痛みをまったく感じなくなるまでに改善したのです。

その後、自動ジグリング器を使用するようになり、レントゲン写真でも右股関節の隙間が開いている様子がはっきりと確認できたBさん。右股関節の痛みから解放されたおかげで、お義母様の介護を無事にやり遂げられたと語っていました。

しばらくは平穏無事に過ごしていたBさんですが、9年後から右股関節の状態が悪化。右股関節の痛みが再発したものの、そのさいはご主人の介護をしていたため、人工関節手術を受けることができませんでした。

Bさんは、12年後の61歳のときにご主人を無事に見送ってから、ようやく人工関節手術を受ける決意を固めました。手術は無事に終了。人工関節手術後は、旅行を楽しむなど、自由な毎日を謳歌おうかしているととても喜ばれています。

Cさん(初診時40代後半・男性)は、40歳の頃に他の病院で左股関節が変形性股関節症と診断されました。40代後半で私の整形外科を受診したときには末期の状態にまで悪化していました。鉄道会社に勤務し、電車の車掌として活躍していたCさんですが、左股関節の激痛のために立ち仕事を続けるのが困難だったといいます。

Cさんの左股関節は人工関節に置き換える手術をしても不思議ではない状態でした。しかし、Cさんの会社では、人工関節にすると車掌から内勤の仕事に異動しなければならないという規定があるそうです。電車の車掌になることが長年の夢だったCさんは、60歳で定年退職するまでは自分の股関節をどうにか維持したいと切実に訴えていました。そこで、私はCさんに自動ジグリング器を使用するようにすすめました。

Cさんは1日に1時間ほど自動ジグリング器を使用したそうです。すると、3ヵ月後には左股関節の痛みが軽減しはじめたのです。レントゲン写真では股関節の隙間に変化が見られないものの、痛みの症状は大幅に改善したそうです。Cさんは50代前半になった現在でも、車掌の仕事を元気に続けています。

Dさん(初診時36歳・女性)は、20代後半から歩き出すさいに左右の足のつけ根に痛みを覚えるようになり、他の病院で両股関節が変形性股関節症と診断されました。股関節を動かすことができる範囲に制限があり、靴下を履いたり立ったり座ったりする動作が困難だったといいます。

その後、Dさんの左右の股関節の痛みは徐々に悪化。私の診察を受けたときには、左股関節が末期、右股関節が進行期の状態でした。安静時にも激痛が走るようになり、夜も眠れないと訴えていたDさん。不眠と慢性的な疲労のせいで軽いうつ症状を呈していました。そこで、私はDさんに自動ジグリング器の使用をすすめました。

自動ジグリング器で人工関節手術までの間、股関節の激痛から解放されて過ごせた

Dさんは、左足で1日計1時間ほど自動ジグリング器を使用したそうです。すると試した直後から痛みが軽減し、以前は痛み止めの薬を飲まなければ寝られなかったのが、痛み止めの薬なしで眠れるようになったのです。

ふだんはつえを使って股関節にかかる負担を軽減していたというDさん。しかし、残念ながら半年後、末期の左股関節を人工関節に置き換える手術を受けました。

Dさんの場合、ジグリングを行ったおかげで左股関節の痛みは大幅に改善していたそうです。ただし、お住まいがエレベーターのないマンションの高層階で移動能力(階段昇降)に問題があったため、人工関節手術を選択されました。Dさんは「人工関節手術を受けるまでの期間だけでも、左股関節の激痛から解放されてほんとうによかった」と喜んでいました。

その後も右足で1日計1時間ほど自動ジグリング器を使用したところ、3週間ほどで痛みが軽減したというDさん。レントゲン写真で右股関節の状態に変化は認められませんでしたが、夜間痛や安静時痛が治まったと喜ばれていました。

現在、41歳になったDさんの右股関節は、良好な状態のまま維持されています。Dさんの右股関節の症状改善は、左側の股関節を人工関節に置き換えたことで右足にかかる負担が減ったことと、ジグリングによる保存療法の相乗効果の賜物たまものといえるでしょう。

Eさん(初診時30代後半・男性)は、右股関節が変形性股関節症で15年前から通院されていました。運動や装具による保存療法を行って変形性股関節症の進行を抑制していましたが、末期の状態にまで悪化。ひどい痛みに悩まされ、人工関節に置き換える手術もやむをえない状況でした。しかし、仕事の関係で長期間休むことができず、手術以外の治療法を強く望んでいました。そこで私は、Eさんに自動ジグリング器の使用をすすめました。

Eさんは仕事から帰宅後、毎日2時間ほど自動ジグリング器を使用したといいます。すると、3ヵ月がたつ頃から右股関節の痛みが軽快しはじめ、痛み止めの薬を服用する回数が減っていったそうです。その後も順調に右股関節の痛みが改善していったEさんは、54歳になった現在でも問題なく仕事を継続することができています。

変形性股関節症は、一度発症すると進行を止めることが難しい慢性疾患です。Eさんのケースは、保存療法の手の限りを尽くしても進行を抑制できなかった末期の変形性股関節症が改善した、注目に値する症例といえるでしょう。

Fさん(初診時43歳・女性)は、30代後半で高齢出産したのをきっかけに左股関節が痛むようになり、変形性股関節症と診断されました。女性の場合、妊娠・出産後と更年期以降の2回、股関節が悪くなりやすい時期があります。

シングルマザーだったFさんは、左股関節の痛みに耐えながら子育てをしていました。何ヵ所もの整形外科を受診したものの、どの医師からも異口同音に人工関節手術をすすめられるだけだったといいます。

Fさんは、43歳のときに私の整形外科を受診しました。そのときには末期にまで病期が進んでおり、すぐに人工関節手術をしてもおかしくない状態でした。しかし、小さなお子さんを抱えていたため、手術を断念。お子さんが高校生になるまでは保存療法で様子を見ることになりました。そこで、私はFさんにジグリングを指導しました。

Fさんは1日1時間を目安にジグリングを行いました。すると、3ヵ月後の再診時には痛みが軽減していることを実感。それ以降も熱心にジグリングに取り組んだところ、安静時にも起こっていた左股関節の激痛が3年後には消失するまでに改善したのです。

その後、自動ジグリング器を購入し、1日1時間を目安に風呂ふろ上がりなどに使用したというFさん。変形のあるほうの脚が2㌢ほど短いため、跛行はこう(不自由な足取りで歩くこと)が見られたものの、痛みが気にならなくなったおかげでお子さんと寄り添いながら成長を見届けることができたそうです。

Fさんは「ジグリングのおかげで、かけがえのない年月を過ごすことができた」と非常に感謝されていました。現在、Fさんのお子さんは無事に高校入学を果たしましたが、Fさんは人工関節手術を受けずに元気に過ごしています。

ジグリングを行うと痛みが悪化することもあるが約3週間は諦めずに継続しよう

変形性股関節症の運動療法の中でも、私は患者さんにジグリングを推奨しています。足を小刻みに上下に動かすジグリングを行えば、関節液が絶えず循環し、関節軟骨に栄養が行き渡るようになります。その結果、股関節の痛みの軽減や軟骨の再生が期待できると考えられるのです。

ジグリングによって人工関節を回避できる可能性は、老若男女を問わず、病期が末期であっても十分にあります。人工関節手術を受ける前であれば、すべての患者さんがジグリングによる保存療法の対象となります。

副作用の心配がないジグリングで、リスクを伴う人工関節手術を回避もしくは延期できるかもしれません。変形性股関節症の患者さんにとって希望の星といえるジグリングは、長期的に症状を改善させる、保存療法のかなめとなる可能性を秘めた治療法なのです。

股関節にかかる力

関節軟骨の再生を目指すのであれば、杖や車イスを利用して股関節にかかる負荷を極力減らしながら、1日2時間以上ジグリングを行うのが望ましいと考えられます。痛みの軽減や症状の進行予防であれば、股関節に体重の3倍以上の負荷がかかる動作を避けながら、1日1時間程度ジグリングを行うことで十分によい結果が期待できるでしょう。

ジグリングをするさいは、くれぐれも無理をしないことです。リラックスして呼吸を整えながら、力まずにゆっくりと行ってください。1秒間に2~3回のペースが目安です。長く行えば行うほど効果が期待できますが、継続できなければ意味がありません。疲れがなく心地よいと感じられる範囲内にとどめ、患者さんそれぞれのペースで行うようにしてください。

ジグリングの効果が出るまでに約3週間かかります。初めのうちは痛みが悪化することもありますが、決して諦めずに約3週間は継続してください。もし3ヵ月間行っても効果が出ない場合は、関節温存や人工関節の手術など、他の治療法を検討するタイミングと考えていいでしょう。

ジグリングは、従来の治療法にプラスαアルファで追加できる、画期的な保存療法です。副作用の心配がなく、股関節の隙間を広げ、不可逆的に進行すると考えられていた変形性股関節症の症状を長期的に改善する期待が持てます。私は、ジグリングが多くの変形性股関節症患者さんの症状の改善に有効ではないかと考えています。

ジグリングをはじめ、適切な治療を受けることによって日常生活の質を低下させる痛みや運動制限などの症状が和らいだり、解消したりする改善例は多数の患者さんから報告されています。たとえ変形性股関節症であっても、日常生活に支障のない範囲内までに症状を緩和できるケースも珍しくありません。ぜひジグリングを生活に取り入れ、前向きに人生を歩んでいっていただきたいと考えています。