プレゼント

意外な新事実が判明!健康を左右する腸の状態は口腔環境が決めていた⁉

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会代表 小林 平大央

日本人は世界でいちばん口が臭い?あなたの不調の原因は口の中かもしれません

[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主催して活動中。一般社団法人日本先進医療臨床研究会代表理事(臨床研究事業)、一般社団法人ガン難病ゼロ協会代表理事(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

腸内環境は、私たちの健康を左右するとても大切なものです。いま、多くの人が想像もしていない場所に、腸内環境のよしあしに関わる大きな原因があることが分かってきました。その場所とは口の中です。医学用語では「(こう)(くう)環境」といいます。

人は1日に約1リットル近くもの()(えき)を飲んでいます。そして、飲み込んだ唾液が胃から腸にまで達し、腸内環境に大きな影響を与えることが分かってきたのです。腸や全身に大きな影響を与える口腔環境の代表的な指標といえば、「虫歯(う(しょく))」と「歯周病」です。

虫歯は、一般的には食べかすなどに細菌がついて酸を出し、歯の表面を溶かしながら奥に進んでいくことで起こると考えられています。ところが、虫歯には一般的にはほとんど知られていないもう1つの原因があったのです。

『名医は虫歯を削らない』の著者で歯科医師の()(みね)(かず)()先生は、虫歯ができるもう1つの原因として「(ぞう)()(しつ)の液体移送システム」が大きく関係していると指摘しています。歯を作る材料である象牙質は血流に乗って体内から補給されます。ところが、象牙質の補給システムは体調によっては逆流することが分かってきたのです。この発見はカナダ出身のラルフ・スタインマンという研究者によって発表されました。

スタインマン博士の発見によって、体内の物質が歯を通って口の中に流れるだけでなく、口の中の無数にいる虫歯の原因となる細菌が歯の表面を溶かすことなく内側に流れ込み、場合によっては体内に流れ込むこともあるという事実が分かってきたのです。例えば、歯の表面から見ると黒ずんだり穴が開いていたりする様子がないものの、レントゲン画像で見ると歯の内側が溶けて神経まで達しているような虫歯です。

ちなみに、スタインマン博士は、象牙質の液体移送システムが逆流・停滞する原因として「①砂糖」「②ストレス」「③運動不足」「④ビタミン・ミネラル不足」「⑤薬物」の5つを挙げています。

実は、虫歯菌は誰でも持っていますが、どんなに一生懸命歯磨きをしても虫歯になる人とならない人がいます。歯磨きなどの口腔ケアは非常に大切ですが、実はそれだけでは虫歯の可能性をゼロにすることはできません。歯磨きをするとともに、スタインマン博士が発見した象牙質の逆流を起こさない生活習慣を心がけることが非常に重要なのです。

口腔環境の二大問題のもう1つは歯周病です。『口臭列島』の著者で歯科医師の(もり)(もと)(てつ)(ろう)先生によれば、日本人は世界でいちばん口が臭いそうです。「そんなばかな!」と思われるかもしれませんが、これは事実なのです。

2015年と2016年にオーラルプロテクトコンソーシアムという団体が日本在住の外国人に対して口臭に関して調査を行った結果、8割が「日本人にオーラルケアを徹底してほしい」と回答したことが分かりました。つまり、日本人のオーラルケアは世界標準から遅れており、歯科先進国で育った外国人からは「日本人は口が臭い」と思われているのです。

一方、日本人は「世界でいちばん歯を磨く民族」でもあります。2016年の厚生労働省が行った「歯科疾患実態調査」によれば、毎日歯を磨く人は95%超、1日に2回歯を磨く人は77%に上ると報告されています。この歯磨きの頻度は、歯科先進国と比べても高い数字です。それなのになぜ日本人は口が臭いのでしょうか?

小峰一雄先生の著書『名医は虫歯を削らない』(竹書房)と、森本哲郎先生の著書『口臭列島』(幻冬舎)

実は、日本人の口臭の大きな原因は歯周病にあります。日本人の歯周病()(かん)率は非常に高く、20代で約7割、30~50代で約8割、60代以降で約9割と推定されています。ところが、厚生労働省の患者調査(2014年)によれば、治療を受けている人は約331万人で、推定患者数の1割にも満たないのです。

つまり、歯周病を治療せずに放置している人が9割近くも存在する計算になります。これが「日本人の口が臭い原因」となっているのです。そして、日本人は臭いに慣れてしまう「順化」という現象で口臭が気にならなくなっているのです。これが森本哲郎先生のいう「口臭列島」の実態です。

また、日本人が臭いに鈍感な理由は順化のほかにもあります。それは「口腔ケア意識の低さ」です。口腔ケアとは歯磨きのことではなく、定期的に歯科医に通って()(こう)、バイオフィルム(細菌が集まってできた強力な膜)、歯石などを取ってもらう処置のことです。欧米などの歯科先進国では、歯磨きだけでは清潔にできない歯垢やバイオフィルム、歯石などを定期的に高い確率で歯科に通って予防措置でケアしています。

歯周病は、その罹患率の多さから日本人の「国民病」といわれています。そして、歯周病は、口臭だけでなく、ガンや心臓病、脳卒中や関節リウマチ、最近では認知症の進行や()(えん)(せい)(はい)(えん)など、さまざまな病気の原因になる非常に恐ろしい病気であることが分かってきました。歯科先進国である欧米のように定期的に予防措置を受ければ、歯周病や虫歯は大きく減らすことができます。解決法が分かっているのにもかかわらず、その方法が周知されずに多くの方が実践できずにいるのは非常に残念なことです。

なお、歯周病は多種類の歯周病菌によって発生・進行することが判明しています。そのため、これらの菌を抑えて口腔内フローラ((こう)(くう)(ない)(さい)(きん)(そう))のバランスを取ってくれる菌類(ブルガリス菌、プランタラム菌、ラムノーサス菌、ガセリ菌など)を塗布または飲食すると、歯周病の進行がかなり抑えられるといわれています。