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私がリハビリをがんばれたのは目標があったからです

有名人が告白

演歌歌手 島津 悦子さん

変形性股関節症と診断を受けてから30年後に人工関節置換術を受ける決断をした演歌歌手の島津悦子さん。発症した当時から手術に挑むまでの経緯、現在のご状況について伺いました。

診断されてから30年経過し痛みが急激に悪化しました

[しまづ・えつこ]——1961年、鹿児島県生まれ。1988年『しのび宿』でキングレコードよりデビュー。1993年に『紙の舟』で初の日本有線大賞有線音楽賞受賞後、日本作詞大賞・ゴールデンヒット賞など、数々の賞を受賞。NHKをはじめ全国の民放各局の番組に出演。2012年に、英国ロンドンで開催されたジャパンフェスティバル2012イン・ロンドンのイベントにおいて大会演歌親善特別大使として、現地で歌唱するなど、国内外で活躍し、2017年にデビュー30周年を迎える。2018年10月10日発売『長崎しぐれ』が、2019年3月歌唱カラオケランキング1位になる。2020年9月に『俺と生きような』をリリース。

2019年8月14日、私は(へん)(けい)(せい)()(かん)(せつ)(しょう)の痛みを取るために、人工関節置換術の手術を受けました。50代後半で手術を受けた私ですが、最初に変形性股関節症と診断を受けたのは29歳のときでした。

デビューしたばかりで多忙を極めていたある日、左のお(しり)の横辺りに〝ズシーン〟というこれまでに経験したことのない痛みが走ったんです。「なんだろう?」と不安に思い、近くの病院に足を運んだところ、(かん)(こつ)(きゅう)(けい)(せい)()(ぜん)に伴う変形性股関節症と診断を受けました。

長年にわたって股関節を酷使してきたことが原因とのことでした。実際、私は高校生の頃はバスケットボールに夢中になり、社会人第一歩はバスガイド、それ以降は演歌歌手とずっと立ち仕事でした。長期間にわたって股関節に大きな負担がかかっていたのだと思います。

先生が病名を告げた後に「放置すると将来的に車イス生活になる。手術したほうがいい」とおっしゃったのでとてもショックを受けました。当時、先生が提案したのは自分の骨を生かした「骨切り術」という関節を温存する手術だったため、体内に人工関節を入れることはありません。

もしかしたら、あのときに手術をしていれば、人工関節の手術も行わなくてよかったかもしれませんね。でも、そのとき手術を受けなかったのは、当時6年間の下積み生活を経てようやくメジャー歌手としてデビューすることができ「さあ、これから」というときだったからです。手術を受けると仕事に復帰できるのは半年後と説明を受けました。自分のキャリアはもちろんですが、半年間も仕事を休んでしまっては、これまでお世話になった事務所にも迷惑がかかると考えたんです。私が手術を受けない道を選んだのは、そうした責任感からでした。

あらためて別の病院で()てもらったところ、手術するほどの状態ではなく、日々の生活に気をつければ大丈夫との説明を受けました。先生からは、痛みの原因になる股関節への負担を軽減するようにといわれました。

具体的には、体重の増加や、長い間の立ち仕事・移動、過度な運動は控えるようにと指導を受けました。ただ実際は、あまり守れていませんでした。仕事は着物姿でずっと立ちっぱなしですし、新人の私は基本的に電車と徒歩での移動です。ゴルフやスポーツジムなどで体を動かすことが好きでしたし、控えるようにといわれていたお酒も、若い頃はかなりの量を飲んでいましたね(笑)。

リハビリに励んだ島津さんは手術後わずか1週間で舞台に立ち、ファンに歌を届けた

股関節に痛みが出たときだけ休んだり、ストレッチしてお尻のわきの凝り固まった筋肉をほぐしたり、あまりにひどい場合は湿布を貼ったりするなど、いわゆる対処療法しかしていませんでした。着物姿で長時間ステージに立ったり、お店回りで長く歩いたりしていると、痛みが出ることが多かったように思います。着物が腰の部分を締めつけることで血流が悪くなったからかもしれません。内股やひざを重ねるような姿勢も同じく痛みが出ることが多かったです。逆に、ゆったりとした服装であぐらをかくような足を開いた姿勢のときは痛みがほとんど出ませんでした。

いってみればだましだまし痛みとつきあってきましたが、50歳を過ぎたあたりから痛みの頻度が増すようになりました。湿布を貼る回数も増えていき、2018年の暮れに重い鈍痛を感じたんです。しかも、それまではお尻の横だけに痛みが出ていましたが、()(けい)()の近くにまで痛みが走り、数日続くようになったんです。

痛みは徐々に強くなっていき、痛む範囲も、お尻、鼠径部から、もも、ひざ、ふくらはぎ、そして足先にまで広がり、ついには左足全体が痛むようになったんです。横になった状態でも痛みが続き、痛みのあまり眠ることもままならなくなったんです。

痛みだけでなく、力も入らなくなっていきました。数㌢のちょっとした段差を上がることが不安になり、階段などは手すりにつかまらないと昇ることができなくなりました。当然、仕事にも支障をきたすようになり、いよいよ人工関節の手術をするしかないと思うようになっていきました。

ただ、手術に対しての恐怖や不安はありませんでした。29歳で痛みが出たときから「いつか手術しないといけない」という思いが、頭の片隅にずっとあったからです。笑いが絶えない家族で生まれ育ったことで自然と培った「明るくニコニコ笑っていればどうにかなる」という前向きな性格も、不安を抱えないですむ要因になったと思います。長年、変形性股関節症とつきあってきましたが、特に落ち込むことはありませんでした。

2019年8月に、島津さんは人工関節の手術を受けた

手術後に主人と会ったときは安心して泣いてしまいました

手術後、動かなくてもものを取るために用意した、島津さんの愛用品

近くの整形外科の先生に相談したところ、大きな総合病院を紹介してくださいました。執刀医の先生は「患者さんといっしょに治す」という理念をお持ちの方で、お人柄もとても気さくでした。気軽に相談でき、看護師などスタッフさんからの信頼も厚かったので、安心して手術に臨めました。先生は、手術の腕前にも自信をお持ちのようでしたよ(笑)。実際に、股関節の手術は一般的にはかなりの出血を伴うそうですが、私の場合は少量ですんだようです。

私の人工関節はチタン製です。かつての人工関節は20年ほどしかもたないといわれていたらしいのですが、いまでは質がよくなってほぼ再手術は必要ないとのことでした。手術の切開痕も以前はカギ型で20㌢近くもあったそうですが、私は九㌢ほどですみました。こんな小さい傷で股関節全体を手術するのですから、お医者さんの腕には驚きを隠せません。

信頼できる先生に出会えたことは、私にとって幸運でした。とはいえ、手術後に主人と再会したときは、安心したからか、お互い泣いてしまいましたけど(笑)。

手術後しばらくの間は、術前よりもひどい重度の筋肉痛のような痛みがありました。でも、当然ですよね、皮膚や筋肉をメスで切っているわけですから。ただ、このような状態になることも事前に知らされていたので、動かなくてもものを取れるようにする道具や靴下が履きやすくなるような専用器具を持ち込むなどの工夫をしていました。

杖なしで舞台に立てたときの感動はいまでもハッキリと覚えています

手術から1年がたったいま、痛みに苦しむことはなくなったと島津さんは話す

人工関節の手術に限ったことではないと思いますが、リハビリはとても重要だと思います。私も術後、ストレッチから始まり、平行棒や歩行器、(つえ)を使っての歩行訓練、自転車こぎなどに一生懸命取り組みました。

リハビリにおいて大事なことは、目標を持つことだと私は思います。周りの人がいくら「がんばれ」といっても、本人はすでに十分がんばっています。それよりも、リハビリが終わった後に「孫と買い物に行きたい」とか「旅行に行きたい」とか、目標を持たせてあげるほうが大切だと思います。

私がリハビリをがんばれたのは〝手術から1週間後のステージに立って歌う〟という目標があったからでした。もちろん事前に先生に伝えていて、了承をいただいています。

手術した翌日から、病院が休みの日も自主的に懸命にリハビリに取り組みました。痛みは強いですし、ほんとうに動くのかと不安もありましたが、日に日に動かせる範囲は増えていきました。おかげさまで、当日は車イスを支えにしながらですが、ステージに立って歌うことができたんです。ファンの方から「お願いだから座って」という温かいお言葉をいただいたときには、思わず涙があふれてきました。

2週間の入院生活でしたが、退院するまでほぼ毎日病院でリハビリに励みました。退院後、1週間に1度のリハビリ通院を続けたところ、痛みはみるみる軽減。術後1ヵ月たった頃には杖なしで歩けるまでに回復し、痛みもほとんどなくなりました。杖や車イスを使わずに舞台に立てたときの感動はいまでもハッキリと覚えています。

通院する頻度は10日に1度、月に1度と徐々に少なくなっていき、リハビリはひとまず終了しました。手術から1年以上たちますが、違和感も痛みもまったくありません。趣味のゴルフも再開でき、歩いてコースを回れるようにもなったんです。

仕事や生活など、人それぞれ環境や事情は異なりますから、一概に全員が人工関節の手術を受けられる状況ではないと理解しています。また、手術にはリスクがないわけではないですし、簡単に決められるものではありません。でも、私は人工関節の手術を受けたことで世界が一変しました。

手術で人工関節を入れることに対する不安から、痛みを我慢している人もいると聞きます。むやみに怖がるのではなく、1度先生ときちんと相談してみてはいかがでしょうか。もし、私の経験が1人でも多くの方々の不安を軽減するお役に立てるのなら、こんなにうれしいことはありません。

告知 島津悦子さんからのお知らせ

艶歌華舞台―農業と演歌は日本の宝―

島津悦子・若山かずさ・北野まち子、3人の演歌歌手が繰り広げるお芝居と歌の世界。笑いあり涙ありのお芝居とスペシャル歌謡ショー!

日時:2021年4月14日(水)
場所:江東区文化センター 大ホール
東京都江東区東陽4-11-3
開場:15:00~ 全席指定6,500円

問い合わせ先:株式会社千代田プロダクション
☎:03-3442-1715
E-mail:shimazu@fine.ocn.ne.jp