塩を使わないすんき漬に抗アレルギー作用
日本の47都道府県で、海に面していないのは8県あります。そのうちの1つが長野県です。長野県は海から遠い場所にあるため、交通が発達する前までは「塩」が貴重品の1つでした。そのため、長野県には塩を使わない食べ物が数多くあります。
長野県で代表的な塩を使わない食べ物が「すんき漬」です。すんき漬は漬物でありながら塩を使いません。独特な酸味があり、長野県の木曽地方の伝統的な発酵食品です。
近年、すんき漬が持つ健康効果が明らかになりつつあります。すんき漬を研究している木曽町地域資源研究所所長の保井久子さん(農学博士)に、機能性について伺いました。
「すんき漬は、食塩を使わず、山に自生するさまざまな果樹の実を発酵種に使い作られます。家庭ごとに前年に漬けたすんき漬を凍結・凍結乾燥させたものを発酵種に使い、ゆでた赤カブの茎や葉に入れて作っています」
保井さんがすんき漬の研究を進めていくと抗アレルギー作用のあることがわかったそうです。
「すんき漬にアレルギー疾患の原因になるIgE抗体の産生を減少させる乳酸菌が含有されていることがわかりました。さらに、すんき漬から抽出したある種の乳酸菌をマウスに与えたところ、アレルギーを抑える働きが確認されたのです」
また、マウスにアレルギー性の下痢を引き起こす実験では、すんき漬の乳酸菌を与えなかったマウスの80%は下痢を発症。一方、すんき漬の乳酸菌を与えたマウスは約40%に抑えられ、アレルギー性下痢症の発症率は半減したのです(すんき漬の乳酸菌を与えたマウスはアレルギー性下痢症の発症を抑えられた参照)。
「動物実験でIgE抗体の産生が抑制されることが確認されました。人間に換算すると、1日約100㍉㌘のすんき漬の乳酸菌の摂取でアレルギー抑制作用が見込めます。骨粗鬆症やがん予防効果が期待されている豆乳に含まれるイソフラボンを、すんき漬の乳酸菌は吸収のよいイソフラボンに変換することもわかりました。現在、すんき漬乳酸菌を使った発酵豆乳の開発をすすめています」