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第23回 ADHDと終活の話。誰にも見せたくない押し入れ、ありますか?

ADHD女子・雨野千晴のうっかりさんでもちゃっかり生きる

雨野 千晴

ADHDと終活の話。誰にも見せたくない押し入れ、ありますか?

[あめの・ちはる]——北海道生まれ。北海道教育大学札幌校卒業。公立小学校教員として10年間勤務。2017年にADHD(不注意優勢型)と診断。現在はADHD専門ライフコーチ、NPO法人代表理事、福祉事業所スタッフなど"多動な"複業活動を展開中。

「この押し入れだけは誰にも見せられない!」。そんな空間が、どこの家にもあるのでは……と思います。

最近、同世代の友人たちから、実家の片づけを手伝っている話をよく聞きます。また、自分自身の「終活」として片づけに取り組みたいけれど、なかなか手がつけられないというご相談も。特に、見たくない・開けたくない「伏魔殿ふくまでん」のような空間があると、ますますハードルが上がってしまいますよね。私は今の家に引っ越して一年がたちますが、押し入れの奥には未開封の段ボール箱がいくつも! 中身はというと……。

①写真類(デジタル化前の写真やアルバム)

②子どもの作品や思い出グッズ(ベビー服や図工の作品)

③書類(ノート、記録、昔描いたイラストなど)

などなど。共通するのは、どれも見返す機会はほとんどないけれど「思い出が詰まっている」ことです。

ADHD傾向のある方は、感情にまつわる記憶が強く残りやすいといわれています。懐かしいモノを見ると当時の感情ごとよみがえってきて、1日があっという間に過ぎて片づけるどころじゃなくなる!みたいなことも多いんです。では、私たちはどこからどうやって手をつければいいのでしょう(泣)。

【伏魔殿の片づけ5ステップ】

ステップ1:目的を「終活」「全部捨てる」から「ちょっと軽くなる」に設定し直す

押し入れの中にあるモノの多くは、使っていないけれど捨てられない理由があるからそこにあるんですよね。ですので、まずは「開けるのが怖くなくなる」「何があるのかを確認する」くらいの気持ちで一緒にチャレンジしてみましょう!

ステップ2:タイマーをかけて15分だけやる

終わりの見えない作業は疲れるだけ。タイマーをセットして、BGMを流しながら15分だけやってみましょう♪ やりすぎると過集中が発動し、燃え尽きて「もうやりたくない!」となってしまうので、必ず15分たったらやめるのがコツ。

ステップ3:思い出グッズに「ありがとう」を伝える

もう使っていないのに捨てられないのは、モノより思い出を手放せないからなんですよね。そんな時は、まずはそのモノに残る「思い出」を味わって。「ありがとう、楽しかったよ」「見返すことはないけれど、心にずっと残っているよ」って、声をかけてあげます。そうすることで、それを手放す罪悪感やさみしさが和らぎ、心の整理・モノの整理がしやすくなります。

ステップ4:3つのボックスに仕分けする

「残す」「保留」「手放す」の3つに分けてみましょう。子どもの作品は写真に残してデータ化する方法もおすすめです。「手放す」時も「ありがとう」と言葉を添えると気持ちがらくになります。保留ボックスで大切なのは、期限を入れること。例えば「3ヵ月後に箱を開けて再確認。いらないと思えたら手放す」と決めておきます。これをまた押し入れに戻してしまうと存在を忘れてしまうので、期限が来るまでは目の届く場所に置いておくのがおすすめです。

ステップ5:できたことを声に出して締めくくる

「段ボール箱を開けられた!」「思い出にありがとうといえた!」。そんな小さな一歩を声に出して自分をほめましょう。次もやってみようという前向きな気持ちにつながります。

押し入れの奥に眠っているモノは、過去の自分と今の自分をつなぐかけらたち。向き合うこと自体が、心と暮らしを軽くする大きな一歩です。

というわけで、私もこの記事を書きながら、1年ぶりに押し入れの段ボール箱のふたを開けてみました。まずはそこから、一緒に始めてみませんか?

イラスト/雨野千晴