365調査隊
きれいな血液を全身に届け、汚れた血液を回収して肺に戻す心臓。心臓の病気として心不全や狭心症、心筋梗塞、不整脈などがありますが、がんはあるのでしょうか……。心臓に関するウソ・ホントについて、調査隊が真相に迫ります。
心臓がんがまれな理由は主に3つ!
2人に1人が罹患するといわれるがん。医療の発達した昨今、適切な治療を受ければ治る病気になりつつあるものの、それでも大事に至らせないため、早期発見に努めたいものです。
ところで、胃がんや肺がんなどがん細胞は体のあらゆる部位に発生するイメージがありますが、意外と聞かないのが心臓がんです。心臓にがんは発生しないのでしょうか? 山形県立保健医療大学理事長の上月正博先生に聞いてみました。
「よく聞かれることではありますが、結論からいえば、心臓のがんは存在します。ただ、ほとんどはほかの臓器からの転移によるもので、心臓から発生するがんは極めてまれであるといっていいでしょう」
心臓もがんとは無縁ではないものの、なぜほかの臓器と比べてがん細胞の発生が少ないのか? 上月先生によれば、その理由は主に3つあるそうです。
「1つ目は、心臓の温度が高いこと。心臓は40℃ほどの温度があるので、高熱に弱いがん細胞が生まれにくいのです。2つ目は、がんを抑制するホルモンが心臓で作られていること。心臓では心房性ナトリウム利尿ホルモンが分泌されており、このホルモンががん細胞を抑える作用を持っています。そして3つ目は、心臓の細胞があまり増えないこと。がんは細胞分裂の異常によって増殖するものです。心筋という筋肉でできている心臓は細胞分裂をあまり行わないため、結果的にがん細胞が発生しにくいわけです」
成人の心臓は〝細胞分裂を終えた臓器〟ともいわれ、ほかの臓器とは異なる特性を持ち、がん細胞とは相性が悪いのだと上月先生は語ります。これは、心臓がそれだけ人間の体において重要な臓器であるためで、「腎臓も肝臓も膵臓も、どれも大切ですが、重要度において心臓に勝るものはありません」と上月先生は話します。
しかし、心臓は命に直結するにもかかわらず、普段はあまり意識されません。お酒を飲む人が肝臓を気にしたり、たばこを吸う人が肺がんを心配したりすることはあっても、日頃から心臓をケアしている人はほとんど見かけません。
「心臓の老化は、実は20歳くらいから始まっています。その老化のスピードは生活習慣に左右され、飲酒や喫煙のほか、食生活の乱れや運動不足、睡眠不足など、知らず知らずのうちに心臓に負担をかけている例は枚挙にいとまがありません」
逆にいえば、規則正しい生活や栄養バランス、適度な運動を心がけることが、心臓のケアにつながります。ぜひ、今日からでも意識してみてください。