プレゼント

第30回日本消化器関連学会週間(JDDW)に参加してきました

朝倉優

こんにちは、朝倉優です。

2023年2月号の取材で「第30回日本消化器関連学会週間(JDDW)」に参加してきました。この学会週間は、日本消化器病学会大会、日本消化器内視鏡学会総会、日本肝臓病学会大会、日本消化器外科学会大会、日本消化器がん検診学会大会が合同で行われます。

学会の会場の1つであるマリンメッセ福岡A館

今年は2022年10月27日~10月30日まで行われ、場所は福岡国際センター・福岡サンパレス・福岡国際会議場、マリンメッセ福岡でした。

今回、私が注目した演題は「亜鉛とセレン」によって非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が改善したという研究結果です。

NASHとは

NASHとは、肝臓に脂肪が蓄積することで発症します。脂肪肝や糖尿病、肥満が原因で起こり、日本における推定患者数は370万人以上といわれています。また、脂肪肝の患者は2270万人と推定されるため、国民の約六分の一がNASHの高リスク予備群と報告されています。脂肪肝はアルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝(NAFL)の2つに大別され、炎症を伴う肝炎まで進行すると肝臓病と診断されます。

〝治らない″肝臓病といわれているNASHですが、香川県立保健医療大学保健医療学部臨床検査学科教授の樋本尚志先生の研究結果では、対象群と比較して亜鉛とセレンの配合剤を与えた群では、肝臓の線維化や脂肪の沈着が有意に抑制されていたことを発表されています。

NASHは世界中の製薬会社や研究者が有効性のある治療薬の開発を進めているものの、現在まで認可された薬はまだないのが実情です。そのため、今回の亜鉛とセレンによる配合剤は、NASHの治療薬になる可能性を秘めた研究ということができます。

亜鉛・セレンとは

亜鉛とセレンは必須ミネラルと知られています。

亜鉛とセレンの働きは以下です。

亜鉛
亜鉛は微量ミネラルに分類されますが、全身のあらゆる器官や組織に必要不可欠な必須ミネラルです。体内に含まれる量こそ少ない微量栄養素ですが、千数百種あるといわれる酵素のうち、300種以上もの酵素の構造形成や維持に必要な成分です。厚生労働省が2014年に発表した日本人の食事摂取基準によると、現在の日本人がとっている亜鉛の1日の摂取量は、男性が8.9㍉㌘(推奨量は10㍉㌘)、女性が7.2㌘(推奨量は8㍉㌘)。多くの人が推奨量に満たない状態です。亜鉛の慢性的な欠乏によって体内で活性酸素が過剰に産生されると、自覚症状のないまま肝臓で炎症が起こり、肝機能が低下するおそれがあります。

セレン
セレンについては未解明な部分が多かったものの、近年になって優れた抗酸化作用があることが分かり、必須ミネラルの一つと認識されるようになりました。セレンは、活性酸素の一種である過酸化水素を水と酸素に分解する際に必要な「グルタチオン・ペルオキシダーゼ」という酵素の活性化に欠かせないミネラルです。

亜鉛とセレンを積極的にとることは、治らない肝臓病のNASH対策だけでなく、健康にとって必要なミネラルといえます。

最後に

亜鉛とセレンは欠かすことができないミネラルであり、近年の研究によってさまざまな働きが分かりつつあります。今回の亜鉛とセレンによってNASHが改善したことは、亜鉛とセレンの秘めた可能性を示しているといえます。

亜鉛とセレン、これからも目が離せそうにありません。