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帯状疱疹が急増中!3大要因「コロナ感染」「ワクチン接種」「心理的ストレス」による免疫力低下に要注意!

皮膚科

たかはし皮膚科クリニック院長 髙橋 謙

帯状疱疹は免疫力の低下が大きな原因で新型コロナウイルスによって相談者が急増

[たかはし・けん]——2007年、大阪医科薬科大学を卒業。東京女子医科大学循環器内科、京都大学医学部附属病院総合診療科、関西電力病院総合内科、髙橋皮膚科クリニック、大阪市立総合医療センターなどを経て、2015年12月に兵庫県尼崎市でたかはし皮膚科クリニックを開業し、現職。日本皮膚科学会、日本内科学会プライマリ・ケア連合医学会、日本循環器学会、糖尿病学会、日本超音波医学会に所属。

2023年5月、新型コロナウイルス感染症は感染症法上の位置づけが「2類相当(結核、SARSなど)」から「5類(季節性インフルエンザなど)」となりました。それに呼応するかのように海外からも多くの観光客が日本を訪れ、以前のような活気を取り戻しつつあります。

しかし、新型コロナウイルス感染症が収束したわけではありません。現在、新型コロナウイルス感染症が再び拡大しており、感染力が強いとされる新たな変異株(KP.3)が流行を広げているといわれているのです。

私が懸念しているのは、新型コロナウイルス感染症が流行した2021年に入ってから難治性なんじせい帯状疱疹たいじょうほうしんの相談が急増していることです。原因の1つとして、コロナでの自粛生活による戸外での活動低下や密閉空間での心理的ストレスの蓄積、新型コロナウイルス感染症の後遺症や度重なるワクチン接種後の副反応による免疫力低下などが考えられます。また、ここ10年前からの水痘すいとうワクチンの義務化により、以前に水ぼうそうにかかった人が水痘ウイルスに出合う機会が少なくなりました。その結果、水痘ウイルスに対する抗体が再生産されなくなったことも、難治性の帯状疱疹が増えた一因と考えられています。

帯状疱疹は、皮膚に赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状に出現する病気です。帯状疱疹は水ぼうそうウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)と切っても切れない関係にあります。水ぼうそうといえば、主に10歳以下の子どもがかかる病気です。ウイルスによる感染症で、2週間前後の潜伏期間を経て発症し、赤い発疹ほっしんや発熱などの症状が現れるのが特徴です。

幼少期に水ぼうそうに一度かかると、その後に再発することはまれです。しかし、水ぼうそうのウイルスが体から消えてしまうわけではなく、「神経節」と呼ばれる神経の細胞そのものに潜伏しています。

水ぼうそうのウイルスは、栄養不足や睡眠・運動不足、仕事・家庭のストレス、加齢による免疫力低下などによって再活性化し、神経線維を通じて顔・体の片側の皮膚に出てきて赤い斑点と水ぶくれを形成します。これが、帯状疱疹です。

一般的に皮膚が赤みを帯びて盛り上がり、続いてその上に水ぶくれが現れます。水ぶくれの大きさは粟粒あわつぶから小豆あずき大で扁平へんぺいに隆起し、中には真ん中がヘソのようにくぼんでいるものも見られます。初めの数日間は新しい水ぶくれが増えつづけ、その後はかさぶたになって乾燥し、通常は2週間~1ヵ月で自然に治ることが多いものの、養生ようじょうや治療が遅れると遷延化せんえんか(病状が長引くこと)しやすいので早めの対処が必要です。

水ぼうそうのウイルスは休眠状態で神経節にとどまるため、感染状態が一生涯続くとされています。帯状疱疹はいったんかかると生涯二度とかからない病気とされていました。しかし、帯状疱疹は水ぼうそうウイルスに対する抗体量の低下によって発症するため、近年の免疫力が低下しやすい環境により、今後は何年も経過して複数回再発するとも考えられます。

帯状疱疹の自覚症状として多くの患者さんが「痛み」と「かゆみ」を訴えられます。その中でも、特に問題になるのは「痛み」です。

痛みには、皮膚症状が出現する前に起こる「前駆痛ぜんくつう」、皮膚症状が出現している時に起こる「急性痛」、皮膚症状が治癒ちゆした後も続く「慢性痛」があります。

「前駆痛」は皮膚症状が出る前に現れる痛みで、水ぶくれが現れる前から神経細胞で増殖したウイルスが神経を損傷するために起こるといわれています。神経症状は皮膚症状が現れる数日前から起こることが多く、2週間以上前から起こるケースや、痛みを感じないケース、痛みだけで皮膚症状が現れないケースもまれにあります。

前駆痛は比較的軽い痛みであることが多い一方で、小さな水ぶくれが出てからの「急性痛」は耐えがたいほどの激痛になることが少なくありません。痛みのピークは幅があり、発疹が出現して数日から10日目辺りになることが多いです。

多くの場合、皮膚の水ぶくれが治るにしたがって、急性痛は消えていきます。しかし、皮膚症状が消えてからも痛みだけが残り、「慢性痛」となることがあります。

慢性痛は「帯状疱疹後神経痛(PHN)」といわれ、1~3ヵ月で消えることもありますが、痛みが数年以上持続して、患者さんの生活の質(QOL)を著しく低下させることもあります。

前駆痛や急性痛は、主に神経の炎症による痛み(侵害受容性疼痛)ですが、帯状疱疹後神経痛は神経が傷ついた神経が過剰な興奮を起こすことによる痛み(神経障害性疼痛)であり、この2つの痛みは発症のしくみが異なります。

帯状疱疹のなによりの対処法は、早期発見・早期治療です。帯状疱疹は、発症から72時間以内に治療を受けられるかどうかで、予後が大きく変化します。早期に治療を受けて抗ウイルス薬を服用することで、発疹や痛みの改善、帯状疱疹後神経痛を防ぐ確率を高めることができます。

抗ウイルス薬を服用する際に重要なのが、勝手に飲むのをやめないことです。皮膚症状や痛みなどが治まったとしても、体内のウイルスの活性が完全に抑えられているとは限りません。医師の指示を守り、最後までしっかり飲み切るようにしてください。

高橋謙先生が診察されているたかはし皮膚科クリニックの連絡先は、
〒661-0981 兵庫県尼崎市猪名寺3丁目5-15アルカドラッグストア2F ☎06-6424-4112です。