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ひざ関節症・脊柱管狭窄症を撃退![太田式セルフ整復]

整形外科

太田接骨院院長、柔道整復師 太田 慶造

自宅でできる[太田式セルフ整復]

[おおた・けいぞう]——1956年、京都府生まれ。明治東洋医学院専門学校を卒業後、1977年に柔道整復師の資格を取得。ほかの接骨院や救急病院などでの勤務を経て、1982年に太田接骨院を開院。地域の総合病院と連携しながら患者さんの施術にあたる一方で、江戸時代に刊行された『正骨範』や『整骨新書』をはじめ、整骨・接骨の実技に関する膨大な史料をひもときながら伝統医療の研究に取り組んでいる。太田式熨法研究会代表を兼務。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、日本各地で外出の自粛が呼びかけられています。運動不足や生活の乱れで体の筋力や柔軟性が衰えると、変形性ひざ関節症や(よう)()(せき)(ちゅう)(かん)(きょう)(さく)(しょう)(以下、脊柱管狭窄症と略す)の症状悪化が懸念されます。今回は、そんな方々のために自宅で簡単にできる[太田式セルフ整復]をご紹介しましょう。

まずは、変形性ひざ関節症の症状の改善を目的とする「ひざの寝ながら体操」です。就寝時や起床時、午後3時など、1日に2~3セット程度行うようにしましょう。

① ウォーキング
あおむけに寝ながら散歩をするようにひざの曲げ伸ばしを始めます。ひざを伸ばす際にひざ裏((ひかがみ))がベッド(または床など)につくように意識して伸ばします。少しずつゆっくりと三十秒程度行いましょう。

② ひざ裏伸ばし
ひざを伸ばして(つま)(さき)をしっかりと返し、ふくらはぎと太ももに力をこめながら、かかとから足を交互に伸ばします。その際、ひざ裏がしっかりと伸びるように意識して行いましょう。左右5~10回ずつ行いましょう。

③ 気をつけ
寝ながら気をつけの姿勢を取ります。お(しり)の筋肉にしっかりと力を入れて、脚を閉じながら約五秒間力を保ちます。その際、かかとが開かないように注意します。3~5回行いましょう。

④ 開脚
ひざのトラブルには()(かん)(せつ)の柔軟性の欠如が影響を及ぼすこともあります。ひざを曲げながら両足の裏を合わせて開脚し、数秒力を抜きます。その際、股関節には力を入れず、足の裏が自然に天井に向くように脱力すると、股関節が緩みやすくなります。もし左右の股関節が同じように開かず柔軟性に差がある場合は、股関節がひざ関節の痛みに影響している場合があります。5~10回行いましょう。

⑤ ひざタッチ
両ひざを曲げた位置から片方のひざを伸ばし、爪先を返しながら脚を伸ばしたまま上げます。次に手を伸ばしてひざのお皿にタッチできる高さを目安にして、ひざ裏から太ももの後面の筋肉に緊張感を感じる程度に行いましょう(柔軟性のある方は股関節が90度になるまで脚を上げてもかまいません)。左右5回程度ずつ行いましょう。

⑥ お尻ダンス
O脚を改善するにはお尻の筋肉の働きが大切です。お尻ダンスでは、お尻の左右の筋肉を交互に収縮させます。初めはうまくできない方もいますが、しだいに慣れて骨盤の動きも伴うようになります。左右で20~30回ずつ行いましょう。

⑦ 爪先返し
うつ伏せに寝ながら、爪先を返してベッド(または床など)につけます。次に太ももの前の筋肉((だい)(たい)()(とう)(きん))に力を入れて、ひざを伸ばしたまま3~5秒間維持します。5回程度行いましょう。

続いて、脊柱管狭窄症の症状の改善を目的とする「(きょう)(かく)ほぐし体操」です。(きょう)(つい)(ろっ)(こつ)・胸骨からなる胸郭の可動域の低下は(よう)(つい)への負担を増大し、脊柱管狭窄症をはじめとする腰痛の悪化につながります。今回は、胸郭の運動がよく分かるようにイスに座りながら行う、ボール(100円ショップなどで入手可能な20~25㌢のバランスボール)を使った簡単な「胸郭ほぐし体操」をご紹介します。胸郭ほぐし体操の回数は各5~10回で、体調に合わせて無理のない程度に行いましょう(食間に行うのがおすすめです)。

(ぜん)(きよ)(きん)伸ばし
前鋸筋(わきの下にある小さい筋肉)は、(けん)(こう)(こつ)を前方に引き出す働きをする筋肉ですが、意識して運動しないと凝り固まってしまいます。日常動作では頻繁に使われることはありませんが、スポーツや胸郭の柔軟性を保つには非常に重要な筋肉であることがよく知られています。

肩甲骨は多くの筋肉で胸郭とつながって、胸郭の柔軟性に大きく関与しています。体幹(胴体)を動かさずに肩甲骨をボールとともに押し出すように意識して、ひじを曲げずに大きく前後運動するように行いましょう。

② 胸郭伸ばし
ひざに乗せたボールを太もも→腹部→胸部と転がすように移動させ、あごの下からまっすぐ上にボールを持ち上げます。胸郭が伸びて肋骨がボールといっしょに上方に引き上げられるようなイメージで行いましょう。視線はボールを追うようにしますが、ボールを持ち上げる際は背骨が反りすぎないように注意してゆっくりと行います。

③ 胸郭とわき腹伸ばし
ボールを頭の上に持ち上げてひじを伸ばして構えます。なるべくボールの位置を変えずに腕のつけ根からわき腹を左右交互に伸ばし、左右の肋骨の1本1本の間が広がるようなイメージで伸ばします。

わき腹の筋肉の()(しゅく)は、多くの中高年の方に認められます。ボールを正しく頭上に上げられない方は、すでに肩関節や胸郭の柔軟性が失われている可能性が高いため、無理をせずに上げられる範囲で行ってください。

④ 胸郭の水平ひねり
ボールを胸につけ、ひじが肩の高さくらいに来るように構えます。次にひじが床と水平を維持するように胸郭を左右にひねります。顔は正面に残したままボールが胸から離れないようにしながら、胸郭の動く範囲(約60度以下)で行いましょう。

⑤ 胸郭の横8の字(かい)(せん)
④と同じように構えますが、胸の前のボールが〝8の字〟を描くように胸郭を大きく動かします。胸郭は知らないうちに左右非対称になっていることがほとんどです。背すじを伸ばしてボールが胸から離れないようにしながら、胸郭以外の部位は動かさないように意識して行います。

⑥ 胸郭の前屈・背屈
おなかにつくようにボールを両太ももの間に置き、左右の腕で弧を描くように回しながら前屈します。その際、左右の腕を交差させて肩甲骨を広げて胸郭を丸めるようにします。次に、上体を起こして手を頭の後ろにそろえて置き、背すじを引き締めるようにして顔を上げます。無理をして上体を反らしすぎないように注意しましょう。