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「排尿障害」のツボ 太渓・腎兪

よっしー先生の特効ツボはここでヨシ!

帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授 大山 良樹

[おおやま・よしき]——大阪産業大学経営学部、明治鍼灸短期大学鍼灸学科卒業。明治鍼灸大学助手・講師を経て、2008年から現職。日本東洋医学会、日本健康科学学会所属。

寒さが徐々に気になる季節となりました。寒くなるとトイレに行く回数が増えてきます。「排尿障害」とは、膀胱(ぼうこう)に尿をためて体外に排出するまでの過程に異常が起こる症状です。具体的には、尿を適切にためることができない、あるいは、尿をうまく出すことができない状況を指します。

排尿障害の代表的な症状として、(ひん)尿(にょう)、尿失禁、残尿感が挙げられます。中でも最も多く見られるのが頻尿です。頻尿の中でも特に多いのが、日本人(40歳以上)のうち、約4500万人が該当するといわれる夜間頻尿です。尿失禁は特に女性に多く見られる症状で、40歳以上の女性の4割以上が経験するといわれています。

排尿障害が起こる原因として、さまざまな病気との関係が疑われますが、そのほとんどは命に関わるものではありません。しかしながら、排尿に関する症状は日常生活で大きな負担となり、QOL(生活の質)の著しい低下を招いてしまいます。

【排尿障害の主な症状】

①朝起きてから就寝するまで8回以上の排尿がある(昼間頻尿)
②就寝中、排尿のために1回以上起きる(夜間頻尿)
③抑えきれない強い尿意を感じる(尿意切迫感)
④尿意が強いため、我慢できずに尿が漏れてしまう(切迫性尿失禁)
⑤重い物などを持ち上げたときや、セキやくしゃみをしたときに尿が漏れる(腹圧性尿失禁)
⑥尿に勢いがない、尿がとぎれる
⑦排尿しても尿が残っている感じがする(残尿感)
⑧自分の意思とは関係なく、排尿直後に尿が漏れる(排尿後尿滴下)

【排尿障害に対する運動療法】

排尿障害を治す方法として、体操によって骨盤底筋(こつばんていきん)を鍛える「骨盤底筋体操」があります。簡単に流れをご紹介しましょう。

①あおむけになり、両足を肩幅程度に開いて、両ひざを軽く立てる
②尿道・肛門(こう もん)(ちつ)をキュッと締めたり緩めたりすることを2~3回繰り返す
③次にゆっくりとキュッと締めて3秒間静止。その後、ゆっくりと緩めていく。以上を2~3回繰り返し、その後は締める時間を少しずつ延ばす

このように、骨盤底筋に刺激を与えることで、排尿障害を克服できることがあります。

そこで今月は、排尿障害に効果のあるツボを二つご紹介します。「太渓(たいけい)」は、内果(ないか)(うちくるぶし)とアキレス(けん)の間の「くぼみ」にあり、動脈拍動部を目安に取るツボです。「太渓」のツボに親指を押し当て、円を描くように5秒間刺激します。以上を5回、計3セット行ってください。 

押す力は、親指でツボ刺激をした際に、(つめ)の色が白っぽくなる程度が適度な刺激です。また、市販されている円筒灸(えんとうきゅう)(筒状のお灸)を使ってツボの周囲が軽く発赤(ほっせき)(ピンク色)する程度まで刺激するのも効果的です。

次に「腎兪(じんゆ)」のツボをご紹介します。慢性的な腰痛に悩まされている患者さんは、必ずといっていいほど腎兪を押したときに圧痛を覚えます。その圧痛部分を親指全体(指腹)で押し当て、円を描くように5秒間刺激します。これを5回、計3セット行ってください。「太渓」と同じように、親指で爪の色が白っぽくなる程度に押すのが適度な刺激です。

また、シャワーを使って「腎兪」のツボに温水をかける方法もあります。温泉にある打たせ湯と同じ要領で、やや前屈姿勢を保ちながら、ツボを刺激して皮膚温を上げましょう。

そのほかの方法として、入浴後にドライヤーでツボを温めたり、カイロをツボに貼ったりするのも効果的です。刺激の目安は、皮膚が軽く発赤する程度です。カイロを使用する際は、低温やけどを防ぐために下着の上から貼りましょう。

由来
【太渓】五臓(ごぞう)六腑(ろっぷ)の「腎」と関係のあるツボの中で、最も重要なツボ(原穴)とされます。「腎」のエネルギー(気)は、「太渓」で太く集まり、その先へ流れるということから、その名が付けられました。太渓の「渓」は、深い谷を意味しています

【腎兪】「腎」の気が巡り、体表に注ぐところという意味から名づけられました

効能
【太渓】頻尿、歯痛、耳鳴り、めまい、不眠、月経不順、冷え症、腰背部痛など

【腎兪】頻尿、冷え症、耳鳴り、月経不順、腰痛など