プレゼント

「ドライマウス」のツボ 翳風・頬車

よっしー先生の特効ツボはここでヨシ!

帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授 大山 良樹

[おおやま・よしき]——大阪産業大学経営学部、明治鍼灸短期大学鍼灸学科卒業。明治鍼灸大学助手・講師を経て、2008年から現職。日本東洋医学会、日本健康科学学会所属。

ドライマウスとは、さまざまな原因によって唾液(だえき)分泌(ぶんぴつ)量が減少し、口の中が乾く状態になることです。唾液は主に、サラサラとした唾液が分泌される「耳下腺(じかせん)」、ネバネバした唾液が分泌される「舌下(ぜっか)腺」、サラサラとネバネバの混合唾液が分泌される「顎下(がっか)腺」の三大唾液腺から分泌されます。成人の場合、1日に約1.5㍑の唾液が分泌され、内訳は顎下腺(70%)、耳下腺(20%)、舌下腺(10%)といわれています。

唾液の主成分は、水とムチン(粘性の液体)です。唾液腺の役割として、洗浄作用や潤滑作用、抗菌作用、口の中を中性に保つ緩衝作用などが挙げられます。口内の唾液分泌量が50%程度まで低下すると、ドライマウスと呼ばれる口の中の乾きを自覚するようになります。

ドライマウスの判定方法には、安静時唾液と刺激唾液で判定する二通りの方法があります。安静時唾液は、リラックスした状態を15分間保った後、口の中にたまった唾液を容器に移して計測する判定法です。健常人では1.5㍉㍑以上が正常とされています。 刺激唾液にはガムテストとサクソンテストがあります。ガムテストは10分間ガムを()んだ後、分泌された唾液を容器に移して測定します。健常人では、10㍉㍑(10cc)以上が正常と判定されます。もう一つのサクソンテストは、一定のリズムで2分間噛んだガーゼに染み込んだ唾液の重さを計測します。健常人の場合、2㌘以上を正常と判定します。これらの数値を下回るとドライマウスが疑われます。安静時唾液は、刺激唾液に比べるとかなり少量で判定します。

次に、ドライマウスの自覚症状を見てみましょう。

口の中が乾く
口の中がねばつく
口の中がねばつく
水をよく飲む
舌が痛い
口臭が気になる
寝ていると口がカラカラに乾く
入れ歯が合わなくなる
入れ歯で口の中が傷つきやすくなる
虫歯や歯周病になりやすくなり、症状が増悪する

ドライマウスは、50歳以上から徐々に増えてくる症状です。原因が口の中だけでなく、全身的な内科疾患に起因するケースも多いことから、適切な診断が必要となります。

ドライマウスが起こる原因を挙げてみましょう。

①薬剤の副作用
②糖尿病や腎臓(じんぞう)疾患
膠原(こうげん)(びょう)(シェーグレン症候群)
④放射線治療後の副作用
⑤中枢および末梢神経障害
⑥精神的ストレス
⑦筋力の低下
⑧口呼吸
⑨加齢

以上の原因が考えられたら、専門医の診察を受けるようにしてください。

ドライマウスのセルフケアとして、自分でできる唾液腺マッサージをご紹介します。加齢などで唾液の分泌が悪くなった際に、マッサージによって唾液の分泌を促します。

耳下腺の刺激
4本の指(人さし指から小指)をほおに当て、上の奥歯の辺りを後ろから前に向かって計10回押します。滑らかに、ソフトに押すようにしてください。

顎下腺の刺激
親指をあごの骨の内側にあて、耳の下からあごの下までゆっくりと5ヵ所ほどを目安に順番に計5回押します。

舌下線の刺激
両手の親指をそろえて、あごの真下から手を突き上げるようにゆっくりと計10回押します。

ドライマウスは、ツボ刺激によっても改善が期待できます。唾液腺マッサージとあわせて実践できる、「翳風(えいふう)」と「(きょう)(しや)」という二つのツボをご紹介しましょう。

「翳風」のツボは、両手の親指で内側に向かって5秒ほど押し上げてください。「頬車」のツボは、人さし指と中指でツボ部分を垂直に、ゆっくりと5秒ほど押し上げます。「翳風」「頬車」ともに3~5回繰り返し、押す力は指の爪の色が白くなる程度が目安です。

由来
翳風】古代中国において「翳」は羽毛の扇子のこと。人間の耳の形に似ています。「風」は、声や音の意味と、耳鳴りを治すツボであることから「翳風」と名づけられました

頬車】「頬」は顔の両側のこと。「車」は古い東洋医学の言葉で、下あごの関節を示す「牙車(きばしゃ)」を指します。下あごを開閉させる(ちょう)(つがい)の中にこのツボがあることから名づけられました

効能
翳風】ドライマウス、頭痛、肩こり、歯痛、耳鳴り、中耳炎、顔面神経マヒなど

頬車】ドライマウス、頭痛、肩こり、耳下腺炎、顎関節(がくかんせつ)(しょう)、下歯痛、三叉(さんさ)神経痛、顔面神経マヒなど