木俣肇クリニック院長 木俣 肇

私は大阪府内にある医療機関「木俣肇クリニック」の院長をしています。私の専門はアレルギー科で、アレルギーやアトピー性皮膚炎(以下、アトピーと省略)の診療を30年以上にわたって続けています。
長年の診療経験から、アトピーには時折、単純ヘルペス感染症(以下、単純ヘルペスと省略)が合併することを確認していますが、適切な診断と抗ヘルペス薬による治療で改善します。
新型コロナウイルス感染症の流行が始まってすぐ、単純ヘルペスの患者さんの受診が増えました。その時はまだ世界で論文報告もなく、単純ヘルペスと新型コロナウイルスとの因果関係が不明でした。その後、新型コロナウイルス感染症が拡大し、日本国内でもワクチンの接種が始まったことはご承知のとおりです。
ワクチンの接種が進む一方で、単純ヘルペスの患者さんは増加を続けていました。そのような時に、「新型コロナウイルスの感染またはワクチン接種によって、ヘルペス科ウイルスの感染が増加する」という画期的な学術論文が複数の国から発表されたのです。
これらの学術論文において挙げられていたのは帯状疱疹で、単純ヘルペスについてはまだありませんでした。しかし、学術論文では他のヘルペス科ウイルスも含めた論調だったことから、新型コロナウイルスと単純ヘルペスの関連についても理解しました。その後、複数の国から「新型コロナウイルスの感染またはワクチン接種、もしくは感染した無症候性の方でもシェディングによって単純ヘルペスに罹患する」という学術論文の発表が行われています(参考文献1)。
現在、新型コロナウイルスに関する報道は激減し、日本国内ではコロナ禍ではなくなったような報道姿勢と感じられますが、世界に目を向けると必ずしもそうではありません。新型コロナウイルスの感染による重症者は多いのです。例えば、人工呼吸器を装着している患者さんは、肺のヘルペス科ウイルス感染症を合併しやすく、抗ヘルペス薬の治療を必要としている場合もあります。ヘルペス科ウイルス感染症の診断はPCRで簡単にでき、さまざまな治療で改善しない重症な肺炎が、抗ヘルペス薬で治癒しています。逆にいうと、世界はそこまで進歩しているのです。
コロナ禍後といえる現在の大きな問題の1つは、新型コロナウイルスの感染後にアレルギーやアトピーが発症しやすいという事実です。海外から複数の学術論文が発表されていますが、今までアレルギーもアトピーも発症しなかった方が、新型コロナウイルスの感染後に突然発症する事例が増えています(参考文献2)。具体的な症状としては、じんましん、食物アレルギー、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピーなど多岐に渡ります。
さらに問題なのは、それらの症状に皮膚の単純ヘルペスが合併することです。私は新型コロナウイルス感染症が流行した時期から、それまでアトピーを発症しなかった方がかゆみや痛みを訴えて受診し、診察でアトピーと単純ヘルペスの合併と診断した例が多数あります。これらの患者さんは私の治療によって全員改善しましたが、現在の日本ではこの理解が不足していると感じています。印象的な患者さんの例をご紹介しまししょう。
【実例1:Aさん】
関東地方に住むAさんは、じんましんが2年間改善しないことに悩み、私のクリニックに来られました。今までアレルギーやアトピーとは無縁だったというAさんは、2年前からさまざまな部位に膨疹が現れるようになったそうです。じんましんが出る少し前に新型コロナウイルス感染症に罹患したそうですが、軽症で改善したとのことでした。
ほかの医療機関でじんましんと診断されたAさんは、外用剤を使った治療を受けたものの改善が見られませんでした。そのうちにじんましんの範囲が全身に及び、不眠や仕事にも支障が出るようになったことで私のクリニックを受診されたのです。
私がAさんの診察を行ったところ、アトピーに加えて全身に単純ヘルペスを患っていました。Aさんの症状は抗アレルギー薬や抗ヘルペス薬で改善し、その後のアレルギー検査で、ダニ、ジャガイモ、トマト、ピーナッツ、カモガヤ花粉、スギ花粉が陽性であることも分かったのです。
Aさんに聞いてみると、「今まで食物アレルギーはなく、アレルギー性鼻炎もなかった」とのことでした。それが今では、食事によってはかゆみを感じて、鼻汁も出るようになったのです。つまり、Aさんは新型コロナウイルスの感染によって、アトピーや食物アレルギー、アレルギー性鼻炎を発症するようになったといえるでしょう。その後、Aさんは一年間の抗アレルギー薬の内服によってアレルギー症状はすべて治癒しました。現在は受診もしていません。
【実例2:Bちゃん】
四国地方に住むBちゃん(小児)は1年間、とびひ状態を繰り返していました。ご両親によると、それまでは皮膚症状はなく、急に悪化したそうです。自宅に近い医療機関でとびひと診断されて治療を受けたものの、改善が見られなかったとのことでした。私のクリニックを受診した時は、アトピーに加えて全身の単純ヘルペスが確認でき、傷もかなり多かったのです。
Bちゃんには抗アレルギー薬と抗ヘルペス薬、細菌の二次感染を防ぐための抗生剤を併用したところ、著明に改善しました。Bちゃんのアレルギー検査では、ダニ、ソバ、ピーナッツ、犬毛、猫毛が陽性であることが分かりました。Bちゃんは私のもとで通院を続け、すべてのアレルギーが治癒しています。
先に述べたように、最近では新型コロナウイルス関連の報道が激減しています。しかし、単純ヘルペスに罹患する患者さんはとても多い現実があります。この背景には、もしかすると無症候性の新型コロナウイルスの感染が深く潜行しているのかもしれません。新型コロナウイルスに感染すれば、無症候性でも単純ヘルペスを発症するリスクが増えるからです。

その意味で興味深いのが、「新型コロナウイルスが、アレルギー疾患に関わるヒスタミンの受容体を感染のための受容体として使う」という重要な報告です(参考文献3)。つまり、これまでいわれていた受容体以外にも、新型コロナウイルスはヒスタミン受容体を使って感染に至るという報告です。ヒスタミン受容体は、アレルギー疾患の方には多く発現されているため、新型コロナウイルスにより感染しやすいといえます。しかし逆にいうと、抗ヒスタミン薬でその受容体をブロックすれば、感染の予防にもなるのです。
また、ワクチンに関しても重要な報告があります。アルゼンチンから発表された学術論文では、世界6社の新型コロナウイルス感染症のワクチンの成分を分析しています。すると、55個の未申告の化学元素が検出され、重金属のクロムは100%、ヒ素82%、さらに細胞毒性のある元素のセリウムは76%の検出率と報告しています。このような物質がワクチンに混入してよいはずがなく、世界的な問題となっています(参考文献4)。
しかしながら、日本ではそれらに関する報道がありません。食品業界で異物の混入があれば大々的に報道され、すぐ販売禁止になるのと対照的といえます。国民の健康に対する影響を考えれば議論すべきと考えますが、そもそも情報がありません。以前は新型コロナウイルスに関する報道が多すぎると感じるほどだったのに、今は流行が廃れたように報道がされないことを懸念しています。
健康問題とは流行ではありません。新型コロナウイルスの真実の情報は、国民の健康が確保されるまで永続的に報道してほしいと願っています。
(参考文献)
1.Fabrizio Marota et al. The impact of COVID-19 vaccination on inflammatory ski disorders and other cutaneous disease : A review of the published literature. Viruses. 2023, 15, 1423.
2.Schmitt Jochen, et al. Large cohort study shows increased risk of developing atopic dermatitis after COVID19. Allergy. 2024, 79, 232.
3.Fei Yu et al. The histamine receptor H1 acts as an alternative receptor for SARS-CoV-2. mBio. 2024, 15, 1.
4.Lorena Diblasi et al. At least 55 undetected chemical elements found in COVID-19 vaccines from AstraZeneca, CanSino, Moderna, Pfizer, Sinopharm and Sputnik V, with precise ICP-MS. International Journal of Vaccine Theory, Practice, and Research. 2024, 3, 1367.