プレゼント

人気管理栄養士が伝授 家族みんなで食べられるおいしい腎臓病食

糖尿病・腎臓内科
管理栄養士/家庭料理研究家 池上 保子

減塩食でも豊かないろどり。目と舌で春を先取り!

[いけがみ・やすこ]——病院の管理栄養士として治療献立の作成、調理・栄養指導、看護学校講師などの業務に24年間たずさわった後、独立。現在は家庭料理研究家として雑誌やテレビ、新聞などでも活躍中。企業の商品開発に伴うコンサルティングや、レストランのメニュー開発にもたずさわっている。

まだまだ寒い日が続いていますが、ウメの花が咲きはじめ、太陽の光が少しずつ暖かくなってきました。春はすぐ近くまでやって来ています。2月後半から3月にかけての季節は、たくさんの食材が旬を迎える時期でもあります。

3月は変化の季節です。冬から春に変わり、外出しやすくなります。何か新しいことを始めるにはうってつけでしょう。1年前に始まった腎臓病食レシピの連載は、今月号で最終回を迎えます。1年間無事に続けることができたのも、読者の皆さまのおかげです。

最後にご紹介するのは、ひな祭りなどハレの日のごちそうとしてもピッタリなちらし寿司と、旬の味を満喫できるアスパラガスのゴマあえ、手軽にデザートを楽しめるおぼろ豆腐のシロップがけの3品です。

慢性腎臓病の患者さんは、制限しなければならない食材が多くあるため、毎日メニューを考えるのは大変です。今回紹介するメニューも、塩分やたんぱく質、カリウムなどを控えつつも、おいしく食べられるように工夫を加えてあります。

豊かないろどりを楽しみながら、栄養をたっぷり含んでいる春が旬の食材をおいしくいただきましょう。

海産物の塩味で十分 春のちらし寿司

春のちらし寿司

《材料(2人分)》
米…2カップ
🅐 酢…大さじ5
砂糖…大さじ2
コマツナ…100㌘
ニンジン…50㌘
ゆでタケノコ(市販品)…50㌘
アジ(さしみ用)…40㌘
イクラ…10㌘

《作り方》
❶洗った米を同量の水で炊く。
❷Ⓐを小なべに入れて弱火にかけ、砂糖を溶かす。
❸炊き上がった米飯に②をかけ、粘りが出ないように気をつけながら切るように手早く混ぜる。
❹③をウチワなどであおぎ、余分な水けをとばして冷ます。
❺コマツナとニンジンはゆでて、コマツナは粗みじん切りに、ニンジンとタケノコは薄いイチョウ切りにする。
❻アジに酢(分量外)少々をかけて軽くしめる。
❼④に⑤を混ぜて⑥とイクラを載せる。

春のちらし寿司成分表ポイント!
イクラに少量の塩けがあり、すし酢の味と香りもあるため、しょうゆを使わなくてもおいしくいただけます。アジは酢でしめると生ぐささがとれて食べやすくなります。

旬の味覚を堪能 アスパラガスのゴマあえ

アスパラガスのゴマあえ

《材料(1人分)》
アスパラガス…2本(40㌘)
白ゴマ…少々
マヨネーズ…5㌘

《作り方》
❶アスパラガスは根もとの硬い部分の皮をピーラーでむき、斜め薄切りにしてサッとゆでてザルに上げる。
❷白ゴマをすり鉢でする。
❸①の水けをきってマヨネーズであえ、②を振る。

アスパラガスのゴマあえ成分表ポイント!
旬の野菜であるアスパラガスは、塩味を加えなくてもおいしくいただけます。薄切りにしてゆでることで、カリウムが流出しやすくなります。

お手軽食材で簡単デザート おぼろ豆腐のシロップがけ

おぼろ豆腐のシロップがけ

《材料(1人分)》
おぼろ豆腐…80㌘
※ シロップ
砂糖…大さじ3
水…大さじ2
レモン汁…小さじ1
イチゴ…2粒
ミント…少々

《作り方》
❶小なべに砂糖と水を入れて弱火にかけて砂糖を溶かし、とろりとしたシロップを作る。
❷①が冷めたらレモン汁を加えて混ぜる。
❸イチゴは縦半分に切る。
❹おぼろ豆腐を器に入れてシロップをかけ、イチゴをのせ、ミントをあしらう。

おぼろ豆腐のシロップがけ成分表ポイント!
豆腐を使ったおいしいデザートです。おぼろ豆腐がない場合は、絹ごし豆腐で代用できます。シロップの砂糖でカロリーを摂取することができ、レモン汁を加えると、さわやかな風味で味がしまります。

最後に

塩分やたんぱく質、カリウムなど、腎臓病食に制限はつきものです。私は病院に勤務していたので、慢性腎臓病の患者さんのために別のメニューを考えることが、料理を作るご家族にとって大きな負担となっていることに心を痛めていました。

この連載では、手軽においしく作れる腎臓病食をテーマにレシピをご紹介してきました。最後にポイントを、もう1度おさらいしましょう。

基本的に、「野菜は切ってゆでてから調理する」「だしをきかせて調味料を少なめにする」ことを意識しましょう。野菜はゆでることで多くのカリウムがお湯の中に流出します。

おいしいだしで味つけをすれば、塩分を大幅に減らすことができます。加工食品には塩分が多く含まれているので、できるだけ手作りを心がけましょう。だしを取ることがめんどうな場合は、密閉できる容器を用意して、水といっしょに煮干しやコンブを入れて半日ほど置けば、おいしいだし汁ができます。

味つけのタイミングも大切です。料理が仕上がる直前に調味料を加えたほうが、味や風味を強く感じることができます。さらに、うまみが凝縮した旬の食材を使うと、調味料を少なくしてもおいしくいただくことができます。

市販品を上手に取り入れることも大きなポイントです。腎臓病食用の食材選びは時間と手間がかかりますが、1度覚えれば腎臓病食の強い味方になります。

工夫を重ねれば、腎臓病食とご家族の食事をいっしょに作ることもでき、うす味料理で家族全員が健康になります。ぜひ、この連載でご紹介したレシピを役立ててください。