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腎機能悪化の最大原因は高血糖で糖毒物質が腎機能を低下させて透析や失明も心配

糖尿病・腎臓内科
国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授 太田 博明

腎臓病の最大原因は高血糖でたんぱく質を変質させAGEとなり細い血管を傷つける

太田博明[おおた・ひろあき]

1970年、慶應義塾大学医学部卒業。1980年、米国ラ・ホーヤ癌研究所留学。1991年、同大学医学部産婦人科講師、1995年、同助教授。2000年、東京女子医科大学産婦人科主任教授。2010年から国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王メディカルセンター女性医療センター長。日本骨粗鬆症学会前理事長、日本抗加齢医学会理事。2015年、日本骨粗鬆症学会学会賞受賞。テレビ出演に『ガッテン!』『NHK BS プレミアム』など多数。

腎臓は血液中の老廃物や毒素を体外へ排泄する役割を持つ非常に重要な臓器です。腎機能が慢性的に低下した状態を慢性腎臓病(CKD)といいます。腎機能が著しく低下すると、腎臓の働きを補うために、透析治療(人工透析)を受けなければならなくなります。近年の研究では、慢性腎臓病を引き起こす最大の原因は高血糖であると考えられています。

血液中の糖が過剰となる高血糖の状態が続くと、血液中の糖がコラーゲンやエラスチンなどのたんぱく質と結びつきます。一部はアマドリ化合物(変質した糖)に変わり、さらに変化して最終的に「AGE(終末糖化産物)」という物質が作り出されます。AGEは〝糖毒物質〟とも呼ぶべき存在で、血液中に増えたAGEは、全身のたんぱく質を糖まみれにして、機能を低下させたり炎症を起こしたりします。

例えば、体を構成する全たんぱく質の約30%を占めるコラーゲンは線維状のたんぱく質で、皮膚や血管、骨、腱など、ほとんどの組織に存在しています。コラーゲン線維は生理的架橋という規則的な網目状に結びつき、エラスチンがその網目の隙間を埋めて組織に弾力性を与えています。しかし、糖がコラーゲンやエラスチンなどにくっついてAGEに変質すると、架橋構造が壊れ、もともとの弾力性が失われて硬くなってしまいます。

左上の図は正常なコラーゲン線維。血液中の過剰な糖がたんぱく質と結びつくとAGEが発生し、左下の図のように影響を受けたコラーゲン線維が硬くなって弾力性が失われる

中でもAGEの影響を特に受けやすいのが細い血管で、内側(血管内皮細胞)はボロボロに傷つき、外側(平滑筋細胞)は古いゴムホースのように硬くなってしまいます。AGEが蓄積した血管は焦げついたような状態になり、動脈硬化(血管の老化)が進んでしまうのです。

毛細血管から構成されている腎臓は、AGEの影響を最も受けやすい臓器といえるでしょう。腎臓には毛細血管が網目状になった糸球体という器官があり、血液をろ過して血液中にたまった老廃物や毒素を尿として排出しています。高血糖の状態が続いて糸球体の毛細血管がAGEによって傷つくと、血液を十分にろ過できなくなるのです。

AGEが悪影響を与えるのは、腎臓だけではありません。目の毛細血管を傷つけ、白内障や糖尿病網膜症を引き起こします。その他、肌のシワ、脂肪肝、骨粗鬆症、脳卒中、心臓病、認知症、がんなどの原因になることも判明しています。

いったん体内で作られたAGEは、ほとんどが分解されずに蓄積されていきます。体外にも排泄されにくいため、AGEを極力ためない生活を送ることが重要です。

AGEを増やす清涼飲料水は厳禁で食事は先に野菜からとるだけでも効果大

 

AGEを体に蓄積させないためには、高血糖に注意しながら、AGEを多く含む食事をできるだけとらないようにすることが重要です。

食事は特に要注意で、飲食物に含まれているAGEをとると、約10%が腸管から吸収され、そのうち3分の2が体内に蓄積するといわれています。特に夏に要注意なのが、清涼飲料水です。清涼飲料水によく使用されるフルクトースなどの糖は、ブドウ糖の10倍以上もAGEを作ります。依存性の高さも確かめられているので、糖分を多く含む清涼飲料水はできるだけ控えたほうがいいでしょう。

AGEは、短時間のうちに高温で揚げたり焼いたりして焦げ目のついた食品に多く含まれています。特に電子レンジを使った調理は厳禁で、ゆでたり蒸したりする調理法を積極的に取り入れるようにしましょう。AGEは高血糖の状態が長く続いたときはもちろん、食後に血糖値が急上昇したときにも多く作られる特徴があります。ただ、糖は体に必要なエネルギー源でもあるので、過剰な制限は禁物です。

私がおすすめしているのは、食べる順番を変えることで、食後血糖値の急上昇を抑える方法です。炭水化物や肉より先に、野菜やキノコ類、海藻などを食べることで、食後血糖値の上昇が緩やかになり、AGEが作られにくくなります。

血糖値の急上昇を抑えるには、食事にかける時間も大切です。かき込むような早食いは血糖値を急上昇させるので、よくかんで、じっくりと時間をかけて食べるといいでしょう。

食品以外では、喫煙が体内のAGEを増やすことが分かっています。タバコには多くのAGEが含まれ、喫煙すると約10%が体内に取り込まれます。喫煙が長期になるほど体内にAGEが蓄積されていくので、禁煙を心がけましょう。

慢性腎臓病以外にも健康に悪影響を及ぼすAGEを増やさない生活を意識してください。まずは、調理法や食べ方などを見直すとともに、禁煙に取り組んでみてはいかがでしょうか。
 

この記事は「健康365」2018年10月号に掲載されています。