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諦めない心を広げたいと考えています

患者さんインタビュー

パンキャンジャパン宮城支部長 中嶋 智さん

がん告知は青天の霹靂でしたが先生方のすばらしい連携のおかげで〝運よく〟膵臓がんを克服しつつあります

[なかじま・さとし]——1956年7月生まれ。建設関係の会社に勤務し、2016年に定年退職。引き続き、再雇用契約を結ぶ。同年8月に血液検査で血糖値の異常を指摘され、精密検査の結果、ステージⅡの膵臓がんと判明。治療は順調に進み、2018年5月に職場復帰。2019年6月にパンキャンジャパン宮城支部長に就任。

「ほんとうに運のいい闘病生活だな」

いま、(すい)(ぞう)がん治療を振り返って、つくづくそう思っています。

私のがんが発見されたのは、60歳だった2016年の夏のこと、まさに青天の(へき)(れき)という感じでした。

それまでの私は、50代から血糖値がやや高めだったものの、ほかには健診などで注意を受ける項目はありませんでした。

ただ、30代後半と40代後半に2度、大腸ポリープの切除手術を受け、それ以降、2年に1回の割合で内視鏡検査を受けており、その年にも、内視鏡検査を受ける予定でした。

ところが、その前にかかりつけのクリニックで行った血液検査で、異常が見つかったのです。ヘモグロビンA1c(HbA1c。過去1~2ヵ月間の血糖値の状態を示す指標。基準値は4.6~6.2で6.5以上は糖尿病)が10近くあると告げられました。

私は当初、糖尿病が急激に悪化したのだと思いました。(きゅう)(きょ)、紹介された総合病院では、糖尿病と膵臓の診察を受け、CT(コンピューター断層撮影)検査も受けました。その時点になってもまだ膵臓に異変が起こっているとは思っていませんでした。

ところが翌週、CT検査の結果、膵頭部に3㌢大の(しゅ)(よう)があると判明し、膵臓がんと診断されたのです。ステージはⅡ期、手術でないと完治が難しい病気だと知りました。このときの私には、自覚症状はないし、自分が膵臓がんになるなど、夢にも思ってはいなかったのです。

膵臓がんの告知後、このがんは進行が速いからということで、手術例の多い東北大学病院へと転院することになりました。

しかし、大学病院では、すぐに手術とはいかず、さらなる検査で発見された重度の(へい)(そく)(せい)(すい)(みん)()()()(きゅう)(しょう)(こう)(ぐん)の治療を先行させることになり、膵臓がんの手術が行われたのは、11月末でした。

先生方のおかげで、10時間の手術は成功して1ヵ月間の入院となりました。幸いほかの臓器やリンパ節などへの転移はなく、術後に抗がん剤治療を6クール、約半年間続けました。

現在、膵臓がんの手術を受けて4年が経過し、年に何回か胆管炎による発熱が起こっているものの、それ以外は特に問題なく生活しています。膵臓を半分切除しているので、朝・昼・晩と寝る前の血糖値測定とインスリン注射は欠かせませんが、そのほかに不自由は感じていません。

私が膵臓がんの治療をひとまず乗り切って、家族との日々や小旅行などを楽しむことができるようになったのは、かかりつけ医や大学病院の最新知見に基づく治療のおかげです。それに加えて、さまざまな面でとても運がよかったと感じています。

何より、私の運がよかったと思える点は、膵臓がんを早期に発見できたことです。

膵臓がんは発見が非常に難しく、自覚症状があるときにはすでにかなり進行しており、手遅れになることが多い病気です。

パンキャンジャパンの宮城支部長としてさまざまな活動に取り組んでいる中嶋さん(右から2番目)

しかし、私の場合は、たまたま2年に1回の大腸ポリープ検査を受けていたから発見できたのです。もし医師の忠告を甘く見て検査を1年延ばしていたら、膵臓がんの発見が遅れて、手術ができなくなっていたかもしれません。

きちんと大腸ポリープの検査を受けていたことが、幸運を大きく引き寄せたと思えるのです。

次に、診察を担当してくれたすべての先生が、私の容体に適した病院を次から次へと紹介してくれたのも、運がよかったと思っています。もし先生方の指示に素直に従っていなかったら、私は幸運を生かすことができなかったでしょう。

さらに、検査の結果、重度の睡眠時無呼吸症候群が見つかったことも、運がよかったと思っています。

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まったり(無呼吸)、のどの空気の流れが弱くなったり(低呼吸)する状態が頻繁に起こる病気です。睡眠時無呼吸症候群があると、健康な人に比べて高血圧や脳卒中は約3倍、糖尿病は約2倍発症しやすいという報告もあるそうです。実は、以前からいびきがひどく「夜中に何度も呼吸が止まるよ」と妻からいわれていましたが、なんとなくそのままにしていました。

私の場合は基準値を大きく超え、かなりの重症でした。呼吸器科の先生は「この状態では術後の回復に影響するため、手術はリスクが大きい」と判断し、先に睡眠時無呼吸症候群の治療が始まりました。つまり、この病気が見つかったのも、膵臓がんにかかったおかげだったわけで、もし膵臓がんになっておらず、睡眠時無呼吸症候群に気づかないままだったら、突然の脳卒中で命を落としていたかもしれません。

私には、いくつもの病気が早いうちに見つかるという運のよさがありました。そして、その幸運を生かすことができたのは、落ち込まずに病気にきちんと向き合い、前向きに対処してきたからかなと思います。

専門家との出会いも家族との良好な関係も「運のよさ」のうちです

私のがん闘病には、ほかにも運のよかった点が多々あります。

膵臓がんは超難治性がんだといわれていますから、「膵臓がんだという告知を受けたとき、どのような心境をお持ちでしたか」と、人に聞かれることもあります。

「さぞショックだっただろう」と思われがちですが、私の当時の心境は、「この時期でよかった」というのが率直なところでした。

膵臓がんと診断された当時はちょうど定年退職をした後で、家族の今後の生活設計を考え直したり、妻に伝えておかなければならないもろもろの整理をしたりと、やらねばならないことが多くて、落ち込む暇もなかったということは幸いでした。

さらに、膵臓がんが超難治性がんとは私自身が知らずに、数あるがんの一種としか思っていなかったことも幸いでした。余計な心配をせずに、かえって医師のいうことを素直に聞くことができました。

家族が落ち着いて受け止めてくれたことも、治療に立ち向かう力となりました。

がんの治療が順調に進んでいる中嶋さんは、家族との時間を大切にしている

実は、膵臓がんだと告知されたとき、家族がショックを受けるのではと、病気の話をするのに少しは(ちゅう)(ちょしたのですが、自分の病状をいつもどおり包み隠さず話しました。幸いなことに、妻はもちろん、娘も息子も取り乱すことなく冷静に聞いてくれました。いたわりの言葉をかけこそすれ、妻も子どもたちも私に対する接し方を変えずにいてくれたので、私は安心して治療に専念できました。

定年を迎えたのちも引きつづきシニアとして働く予定でした。しかし、治療もあるし、いままでどおりの仕事は難しいだろうから、完全に辞めたほうがいいのかと迷っていました。そんなときに、東北大学病院のとある先生に出会い、アドバイスをいただきました。「会社はいつでも辞められるのだから、すぐに辞めないほうがいい」「無理して早期復職せず、体力回復を優先」といった言葉はたいへんありがたかったです。退院した後に、患者は1人で物事を決めがちですが、こうした助言が後悔のない道を決めるきっかけとなりました。

がんという岐路に立った私が誤った道に迷い込まずにすんだのも、人の運に恵まれたおかげだと感謝しています。

同じ病気の患者さんからの助言も重要だと思い、パンキャンジャパンに参加しました

難治である膵臓がんと闘うには専門家からのアドバイスはもちろん重要ですが、同じ病気の患者さんからの助言も大切です。

私は、入院中や治療中に同病の方々の経験談を多く聞くことができ、参考になったり励まされたりしてきたので、身にしみてそう感じていました。そこへ、NPO法人パンキャンジャパンという団体から、「宮城支部長として参加しませんか」という要請があったのです。

健康に気を遣いながら旅行を満喫している中嶋さん

パンキャンジャパンとは、米国で結成された膵臓がん患者の支援団体であり、いまでは世界各地に設立されています。「研究者・医療者の支援」「患者・家族のサポート」「希望を与えること」を使命として、「膵臓がんを治るがんにする」ために、協力して活動している仲間の集まりです。日本では2006年に日本支部ができ、各地域で支部を設立しており、私がこの組織のことを知ったのは、ちょうど宮城支部が設立されようとするタイミングでした。

「膵臓がんを治るがんにする」という理念に共感し、私が要請を受けて宮城支部長に就いたのは、2019年6月のことです。早速、東北大学病院において、同時期に始まった「膵がん教室」や「膵がんサロン」に参加しました。患者さんやそのご家族からは、「経験談が何よりの勇気と希望になります」「ぜひ継続してください」などの意見や要望が多数寄せられており、これからも続けていきたいと思います。

残念ながら、2020年3月からは新型コロナウイルス感染症の(まん)(えん)で集まりを休止せざるをえなくなり、やむなく、インターネットでの開催を考えているところです。しかし、参加予定者にはインターネットになじみのあまりないお年寄りの患者さんが多いだけに、そのほかにもさまざまな方法を取らなければと思っています。

現在、パンキャンジャパンは、膵臓がんセミナー開催、新薬承認の遅延(ドラッグ・ラグ)解消のための署名活動、研究開発補助金増額の請願、家族性膵臓がんの遺伝子診断、早期発見のための自治体検診への要望などの活動を行っています。この記事をお読みになった読者の皆さんにも、ご協力いただければ幸いです。

がんと闘う患者さんに、ご家族や周囲の皆様の応援に感謝しながら諦めない心と希望を持っていただけたらと切に願って、これからも活動を続けていきます。

告知:「パープルリボンセミナー 静岡がんセンター 2021」開催のお知らせと参加方法

NPO法人パンキャンジャパンからのお知らせ

「パープルリボンセミナー 静岡がんセンター 2021 ~進化するハイボリュームセンターからの最前線」

膵臓すいぞうがんの研究と治療法について、その最前線をお送りいたします。
ご自宅のPCや携帯からご参加可能。
定員300名で、先着の100名はZoomでのご参加を、それ以降はYoutube Liveからのご参加となります。

日時:2021年3月28日(日)13:00~15:30
定員:300名 参加無料
形式:お申込み順
 ①先着 100名はZoom ウェビナーによるご参加
 ②それ以降は Youtube Liveによるご参加となります。

申し込み方法

①インターネットからの申し込み
https://ws.formzu.net/fgen/S84727741/

②携帯電話からのお申込み
QRコードからアクセスして下さい

お問合せ先

✉:info@pancan.jp
☎:03-3221-1421