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めまい患者は脳卒中の危険あり!

耳鼻咽喉科

国立循環器病研究センター脳血管内科部長 古賀 政利

血管の詰まりの改善が不可欠な脳卒中はめまいとの関係が深く早期発見が大切

[こが・まさとし]——1994年、広島大学医学部卒業。九州大学病院などでの内科研修を経て、国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)で脳卒中診療の研修を行う。豪州National Stroke Research Instituteに留学。2007年、同センター脳血管内科医師・脳卒中集中治療科医長を経て、2018年より現職。日本神経学会専門医・指導医・代議員、日本脳卒中学会専門医・評議員・代議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医。

めまいを起こす耳鼻科の病気はいろいろありますが、大きく2つに分けられます。1つは、めまいと同時に耳鳴りが起こるタイプで、代表的なものに突発性難聴やメニエール病などがあります。もう1つは、めまいだけが起こって聴力には異常をきたさないタイプで、良性発作性頭位性めまい症や(ぜん)(てい)(しん)(けい)(えん)などがあります。

いずれのタイプでも、耳の異常によって生じる耳性めまいは、自分自身がグルグル回っているように感じる「回転性めまい」を突然引き起こすのが特徴です。患者さんにとっては深刻でうっとうしいめまいですが、耳鼻科を受診しても「異常なし」と診断される場合が多く、病院を転々とする患者さんが後を絶たないのが実情です。

めまいを引き起こす原因にはさまざまなものがあるため、耳鼻科だけでは解決できないケースが少なくありません。実際、めまいは循環器病とも密接に関係しています。耳鳴りや難聴、吐き気、(おう)()を伴う突発的なめまいを訴えた患者さん約100人のうち、12%で(のう)(こう)(そく)が見つかったというデータもあります。脳梗塞が見つかったどの患者さんもマヒなどの脳の症状は訴えておらず、入院中もめまい以外の症状はほとんど現れなかったと報告されています。

患者さん本人は「ただめまいがするだけ」と思っていても、実は脳梗塞が起こっている可能性があります。一般的に、めまいの症状だけしか伴わない脳梗塞は軽症で、見逃されても大事に至らない場合がほとんどです。

とはいえ、めまいが起こった後で意識障害や手足のマヒを伴う重症の脳卒中が現れる場合もあるため、注意が必要です。めまいが突然起こったときは、一度脳卒中の専門医に()てもらうほうが安全です。

脳卒中は、脳の血管が詰まるか破れるかすることによって、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血に分けられます。脳の血管が詰まるのが脳梗塞で、血管が詰まることによって脳の一部が死んでしまう病気です。脳出血やクモ膜下出血は、脳の血管が破れて血液が漏れ出し、脳の組織を破壊してしまう病気です。中でも多いのが脳梗塞で、脳卒中全体の4分の3以上を占めています。

脳梗塞が起こると、右半身か左半身のいずれかに運動マヒが起こったり、言葉がうまく話せなくなったり、意識がはっきりしなくなったりします。後遺症が残ることが多く、日常生活で介助や介護が必要になることも少なくありません。

脳梗塞になったとしても直ちに適切な治療を受ければ、経過や予後が良好になる可能性が高くなります。脳梗塞の早期治療のためには、脳梗塞が起こったのではないかと疑うこと、つまり早期発見がとても重要です。

突然のめまいとともに「ロレツが回らない」「半身の手足に力が入りにくい」「半身の感覚がおかしい」「物が二重に見える」などの症状があれば、脳梗塞や脳出血が起こっている可能性が高いため、すぐに救急車で専門病院を受診するようにしてください。

また、「いままでなかったフラフラ感が突然起こった」「めまいだけでなく突然の頭痛が起こった」という場合にも、脳卒中の専門医に診てもらうと、早期発見につながります。専門病院では、(けっ)(せん)(血液の(かたまり))を溶かす血栓溶解療法や血栓を取り除く血管内治療を行って血管の詰まりを改善させる治療や、血液をサラサラにする薬で血栓をできにくくして再発を防ぐ治療などが行われます。

めまいは脳卒中のほか、高血圧症や糖尿病、心房細動も併発すると判明

緊急外来を受診するめまいの患者さんのうち44%が高血圧症、17%が糖尿病、7%が心房細動を併発

さらに、めまいと脳卒中が密接な関係にあることを示すデータもあります。めまいの症状で緊急受診する患者さんの3~5%は脳卒中と診断されています。また、緊急外来を受診するめまいの患者さんでは、44%が高血圧症、17%が糖尿病、7%が心房細動を併発しており、その後の脳卒中の発症がやや多かったことが分かっています。実際、めまいの患者さんは、過去に脳梗塞や脳出血を起こしたことがある人が少なくありません。

耳性めまいを引き起こす代表的な疾患である突発性難聴やメニエール病、良性発作性頭位性めまい症は、一般的に循環器病ではないと考えられています。ただし、いずれの疾患も現代の医学では原因が明らかになっておらず、血液の循環障害が関係している可能性は否定できません。

耳性めまい自体は恐ろしい病気ではありませんが、めまいが起こった際に「脳卒中のサインかもしれない」と受け止めて専門医を受診すると、重篤な病気の進行を防ぐことにつながります。さまざまな原因によって起こるめまいは放置せず、高血圧症や糖尿病、心臓病、脳卒中との関係を調べてもらうことをおすすめします。