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夏は腎機能低下に要注意!脱水で腎臓への血流が低下する〝急性腎障害〟の危険大

糖尿病・腎臓内科

ウチカラクリニック代表医師 森 勇磨

夏に生じやすい脱水は腎臓の血流を低下させ急性腎障害を招いて慢性腎臓病も悪化

[もり・ゆうま]——愛知県生まれ。神戸大学医学部医学科卒業。研修後、藤田医科大学病院の救急総合内科にて救命救急・病棟で勤務。2020年2月より「すべての人に正しい予防医学を」という理念のもと、「予防医学ch/ 医師監修」をスタート。株式会社リコーの専属産業医として、社員・会社全体へのアプローチから予防医学の実践を経験後に独立し、Preventive Room株式会社を立ち上げる。2022年、オンライン診療に完全対応した新時代のクリニック「ウチカラクリニック」を開設。著書に『40歳からの予防医学』(ダイヤモンド社)などがある。

腎臓(じんぞう)はとても小さな臓器ですが、私たち人間にとって重要な臓器の一つで、機能の低下は命に関わります。腎臓の主な働きとして、血液をろ過して老廃物や余分な水分を体外に排泄(はいせつ)する機能が挙げられます。そのほか、体内のミネラルのバランスや血圧の調整、血液を作るホルモンの分泌(ぶんぴつ)、骨の形成に関わるビタミンDの活性化などの働きもあります。

夏は腎臓に負担をかける要因が数多くあり、腎臓の機能が低下している慢性腎臓病(CKD)の患者さんにとって注意が必要な季節です。夏に起こりやすい脱水は腎臓への血流を低下させ、急性腎障害を引き起こすことが知られています。急性腎障害とは、数時間~数日の間に急激に腎機能が低下する状態です。すでに腎機能が低下している慢性腎臓病の患者さんにとっても、腎臓に負荷をかける脱水には注意が必要です。

腎臓病は自覚症状なく機能低下が進行し早期発見・治療には年に一度の健診が重要

脱水による急性腎障害が一瞬だけであっても、腎臓が傷つけられていたという論文もあります。脱水による急性腎障害自体は一過性であっても、それを繰り返していると腎臓への負担が少しずつ蓄積しているおそれがあるのです。慢性腎臓病の進行度によっては水分の制限が必要な場合もありますが、制限の範囲内で水分の摂取を欠かさないようにしましょう。

慢性腎臓病は、なによりも早期発見が大切です。しかし、自覚症状に乏しいため、体調不良を感じた時にはすでに病期が進み、深刻な状態に悪化していることが少なくありません。腎臓の異変を早期発見するためにも、年に一度は健康診断を受けるようにしましょう。

慢性腎臓病と診断されるのは、次の①②のいずれか、または両方が3ヵ月以上続いた場合です。

①尿検査でたんぱく1+以上、血尿、血液検査、画像などでの異常所見

糸球体(しきゆうたい)ろ過量(GFR)が60未満

たんぱく尿の検査は、腎臓のろ過機能をつかさどる糸球体の機能が正常かを調べるために行われます。糸球体の毛細血管に異常があると、本来ならば体内にとどまるべきたんぱく質が尿中に漏れ出てしまうのです。

たんぱく尿は、濃度によって「-」「+-」「1+」「2+」「3+」「4+」の六段階があります。水分の摂取量によって多少の誤差が生まれるものの、正常範囲は「-」「+-」です。「+」の数字が大きくなるほど、尿に含まれるたんぱく質の濃度が高く、糸球体の毛細血管の働きが損なわれていることを示しています。

糸球体ろ過量とは、1分間にすべての糸球体によってろ過される血清(けっせい)量のことです。血清とは、血液中の血球成分である赤血球や白血球、血小板、たんぱく質を除いた液体成分を指します。糸球体ろ過量の数値を調べるには、血清クレアチニン値をもとに推測する計算法を用いての、推算糸球体ろ過量(eGFR)が簡便でよく使われます。

腎機能の程度を示す指標の一つであるクレアチニン値は、筋肉中の成分が代謝されてできる代謝産物の一つであるクレアチニンの量を測ることで分かります。体にとって不要な物質であるクレアチニンは分子量が小さいので、より分子量の大きいたんぱく質とは異なり、常に一定の量が尿に排泄されています。クレアチニンを指標として用い、どの程度血清がろ過されているかを示す値が糸球体ろ過量です。

慢性腎臓病の病期は、推算糸球体ろ過量によって、G1~G5までの6段階に分けられます(Gはaとbに区分け)。正確な糸球体ろ過量を調べるためにはとても時間のかかる検査が必要ですが、日本腎臓学会が作成した「糸球体ろ過量早見表」を用いて性別・年齢・クレアチニン値を当てはめれば、現在の腎機能の状態を知ることができるので、ぜひ試してみてください。