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薬の副作用で腎機能が低下!夏風邪の悪化による抗生物質・解熱鎮痛剤に要注意

糖尿病・腎臓内科

ウチカラクリニック代表医師 森 勇磨

薬の成分は腎臓でろ過されるものが多く頻度は少ないものの造影剤でも腎機能低下

[もり・ゆうま]——愛知県生まれ。神戸大学医学部医学科卒業。研修後、藤田医科大学病院の救急総合内科にて救命救急・病棟で勤務。2020年2月より「すべての人に正しい予防医学を」という理念のもと、「予防医学ch/ 医師監修」をスタート。株式会社リコーの専属産業医として、社員・会社全体へのアプローチから予防医学の実践を経験後に独立し、Preventive Room株式会社を立ち上げる。2022年、オンライン診療に完全対応した新時代のクリニック「ウチカラクリニック」を開設。著書に『40歳からの予防医学』(ダイヤモンド社)などがある。

夏は、室内と屋外の寒暖差が激しく、体調を崩してしまう人が少なくありません。中には夏カゼを引いてしまい、病院にかかったり、市販の風邪薬を使用したりする人もいることでしょう。ごく一般的な対応といえますが、慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)(CKD)の患者さんは薬の使い方に注意が必要です。

薬は使い方によっては、重大な副作用を引き起こすおそれがあります。残念ながら、どのような薬であっても、副作用の問題と無縁ではないのです。薬の副作用と最も密接な関係にある臓器こそ腎臓です。医師が処方する薬だけではなく、薬局で売られている身近な薬でも使い方を誤ると腎臓に非常に大きな負担を与え、最悪の場合は人工透析(じんこうとうせき)を余儀なくされる場合もあるのです。

そもそも、なぜ腎臓に薬の悪影響が及びやすいのでしょうか。腎臓は、血液をろ過して不要物を尿として体外に排泄(はいせつ)する働きを担う臓器です。食べ物や飲み物と同様、ほとんどの薬が腎臓でろ過されます。

腎機能が低下した状態の人が健康な人と同じ量の薬を飲むと、薬の成分が十分にろ過されずに体に残ってしまい、過剰な薬効が発揮されてしまうことがあります。そのため、私たち医療従事者は慢性腎臓病の患者さんに薬を出す時に、低下している腎機能に合わせて薬の量を計算して処方することもあります。

薬がろ過される過程で腎臓を傷つけて起こる「薬剤性腎障害」にも注意が必要です。薬剤性腎障害では、血管が収縮して腎臓に酸素や栄養が届かなくなったり、膀胱(ぼうこう)への尿の通り道である尿細管が詰まったり、薬に対するアレルギー反応が起こって腎臓の組織で炎症が起こったりして腎臓の機能が低下します。

では、腎臓に悪影響を及ぼすおそれのある薬にはどのようなものがあるでしょうか。2007~2009年の間に行われた厚生労働省の調査によると、薬剤性腎障害の原因となる薬は「NSAIDs(エヌセイズ)(25.1%)」「抗腫瘍(しゅよう)薬(18.0%)」「抗菌薬(抗生物質)(17.5%)」「造影剤(5.7%)」と報告されています。

「シスプラチン」などの抗腫瘍薬に腎障害の副作用のおそれがあることは知られていますが、そのしくみはさまざまです。この記事では、抗腫瘍薬以外の薬について解説しましょう。

『薬剤性腎障害の原因の薬剤』
出典:『厚生労働省の研究班による「高齢者における薬物性腎障害に関する研究」の実態調査(2007~2009年)』をもとに作成

まずは造影剤についてです。造影剤とは、おなかや胸のCT(コンピューター断層撮影法)検査の際に使われる薬です。造影剤は血管を巡ってさまざまな臓器を通過し、CT撮影の際に病気のある部分をくっきりと浮き上がらせます。肺の血管に血栓(けっせん)が詰まった病気や、人間の体で最も太い血管である「大動脈」が裂けてしまう大動脈解離といった、普通のCT検査で撮影しても分かりにくい病気が見つかることがあります。

しかし、造影剤を使用すると、頻度としては非常に少ないものの、腎機能を低下させる「造影剤腎症」を引き起こすおそれがあります。特に高齢者や慢性腎臓病の患者さんに対しては、医療現場ではとても注意しながら造影剤を使用しています。さまざまな対策が講じられるため、慢性腎臓病でも「造影剤が絶対に使えない」というわけではありません。

解熱鎮痛剤は腎機能への負担大で胃薬との併用でさらにリスクが上昇

薬剤性腎障害を引き起こす薬の代表が「非ステロイド性抗炎症薬(通称、NSAIDs)」です。耳慣れないという人もいるかもしれませんが、「解熱鎮痛剤」と呼ばれる薬の総称です。ステロイドではない抗炎症薬のすべてを含み、処方される薬はもちろん、市販されている有名な解熱鎮痛剤もNSAIDsです。

NSAIDsは、痛みや熱の原因となる炎症で発生する「プロスタグランジン」という成分の生産を止める薬です。プロスタグランジンには血管を広げるという非常に重要な働きがありますが、解熱鎮痛剤を飲みすぎると血管が収縮して腎臓に十分な血液が流れなくなることがあります。用法用量は必ず守って飲むようにしましょう。

NSAIDsには、胃を荒らすという副作用もあります。この副作用を打ち消すために胃薬を一緒に使用することが多いのですが、胃薬も腎臓に悪影響を及ぼすことが分かっています。京都大学で21万人のデータを対象に行われた研究では、胃薬単独でも腎不全になるリスクを上昇させ、胃薬とNSAIDsを併用するとさらなるリスクの上昇が予想されるという結果が出ています。

この胃薬は「プロトンポンプ阻害薬(通称、PPI)」と呼ばれるもので、慢性腎臓病の患者さんでNSAIDsとPPIの併用を検討している人は、必ず主治医と相談するようにしてください。

次に紹介する抗生物質は、アレルギー反応を引き起こすことで腎臓に障害を加えることがあります。腎臓の尿の通り道の隙間(すきま)の部分(間質(かんしつ))で炎症が引き起こされ、最終的に腎不全の状態に陥ってしまうことがあるのです。

患者さんから「風邪のようなので抗生物質を出してください」といわれることが非常に多いのですが、風邪は基本的に抗生物質が効く細菌ではなく抗生物質が効かないウイルスが原因のことがほとんどです。さらに、抗生物質は腸内細菌を殺してしまうため、下痢(げり)の副作用が起こることもあります。抗生物質に頼れば、なんでも解決するわけではないのです。

病院で処方された薬も市販薬も、注意書きや医師の指示を無視してやみくもに服用してしまうと、腎臓に大きな負担をかけてしまうおそれがあります。慢性腎臓病は日々の積み重ねが大事な疾患といえます。体調を崩しやすい夏こそ、薬の使い方に注意するようにしましょう。いつも使用する市販薬を再確認し、主治医と相談する機会を作るのもおすすめです。