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毒素と食塩を排出する“守尾式デトックス療法“

糖尿病・腎臓内科

糀谷じんクリニック院長 守尾 一昭

多くの日本人は塩分のとりすぎで減塩よりも正しい塩分量をとる「正塩」が大切

[もりお・かずあき]——医学博士。東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)腎臓内科部長、東京災害医療センター腎臓内科医長、国保君津中央病院腎臓内科部長、国立病院機構災害医療センター腎臓内科医長兼血液浄化部長、東京医療保健大学臨床教授、湘南東部総合病院副院長・腎臓内科部長・血液浄化部長などを経て、2020年3月から現職。日本内科学会認定内科専門医・指導医・総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医・指導医、日本透析医学会専門医・指導医。

高血圧や慢性腎臓(まんせいじんぞう)(びょう)人工透析(じんこうとうせき)の患者さんは、状態によってさまざまな薬を服用しますが、治療の根幹は食事療法で、特に重要なのが「食塩の管理」です。食塩を過剰に摂取すると高血圧が進行し、血管を傷つけて動脈硬化(血管の老化)を招きます。

一般的な診療では、患者さんに食事療法を指導する際、「減塩」という言葉を用いて食塩の管理が必要であることを説明します。しかし、私は減塩という言葉は患者さんの誤解を招く表現と考えているので、診察の際には使用しません。

高血圧や慢性腎臓病と診断されて主治医から「減塩しましょう」といわれた患者さんは、「病気になったから塩分を減らさなければいけない」と思いがちです。その結果、多くの患者さんのご家庭では患者さんだけのために減塩した料理を作り、ほかの家族の分は別に作ることが多くなります。毎日、そして毎食のように味つけを変えた食事を作るのは容易ではありません。結局、作るのがめんどうになって食事療法に挫折(ざせつ)する患者さんが多いのです。

「食事療法=減塩」という誤解を解くためには、ふだんの食塩摂取量と健康的に生活するための食塩摂取量について正しく理解する必要があります。

厚生労働省が発表した2019年度の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の食塩摂取量の平均値は1日10.1㌘で、男性は10.9㌘、女性は9.3㌘と報告されています。また、食塩摂取量の目標値は、国や学会でそれぞれ以下のように定められています。

厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準(2020年版)……男性1日7.5㌘未満、女性1日6.5㌘未満
慢性腎臓病に対する食事療法基準(2014年版)……1日3~6㌘未満
日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン……1日6㌘未満

以上の目標値から考えると、日本人はふだんの食事から1日約3㌘も多く食塩を摂取していることが分かります。つまり、ほとんどの日本人は、高血圧や慢性腎臓病といった病気の有無にかかわらず、食塩摂取量を正しい量まで減らす必要があるのです。そのような理由から、私の診療では減塩という言葉ではなく「正塩(せいえん)」と表現しています。

正塩は、「正しい量の食塩摂取量にする」という意味の造語です。正塩という言葉を正しく理解している私の患者さんたちは、食塩の量を変えて料理を作り直すことはありません。病気の有無にかかわらず、家族全員が正しい食塩量の食事(正塩食)をとっているため、食事療法の食塩量に合わせる必要がないのです。正塩食は患者さん本人のみならず、ご家族にとっても有効で、高血圧や慢性腎臓病の予防につながります。

特に、腎機能は加齢とともに低下し、悪化して低下する速度が一度大きくなると元には戻らないため、早い時期からの正塩食療法は慢性腎臓病を防ぐために適した方法です。ただし、食塩摂取量が1日10㌘以上の人が急に正塩食にすると、塩味の感覚が鈍くなっているために味気なく感じることがあります。そのため、食塩を控える工夫として、旨味(ダシ)を効かせた味つけにしたり、香辛料やハーブを活用したりすることを患者さんにすすめています。

これらの工夫を実践すると、早ければ1週間ほどで味覚が薄味に慣れはじめます。その結果、日常的に食塩摂取量を減らすことが可能になり、最終的には慢性腎臓病の食事療法の基準である1日6㌘未満に収めることができるようになります。

純炭粉末とデソルトファイバーを併用する守尾式デトックス療法は慢性腎臓病に有効

慢性腎臓病や人工透析の患者さんは、正塩食を含めた食事療法を励行しながら薬を服用し、尿毒素を排出しながらミネラルバランスを整える必要があります。腎機能が低下すると、窒素化合物などの尿毒素が排出できなくなったり、血液のミネラル成分であるカリウムやリン、カルシウムが調整できなくなったりします。そのため、「(きゅう)(けい)(きゅう)(ちゃく)(たん)」「陽イオン交換樹脂」「高リン血症治療剤」などの経口吸着剤が処方されます。

球形吸着炭
球形吸着炭は、尿毒症毒素(インドキシル硫酸やインドール)を消化管内で吸着し、大便といっしょに排出することで慢性腎臓病(腎不全)による尿毒症を改善する治療薬です。尿毒症症状の改善や透析導入を遅延させる効果があります。

陽イオン交換樹脂
陽イオン交換樹脂は、腸管内で薬剤が持つ陽イオン(カルシウムイオンやナトリウムイオン)をカリウムイオンと交換し、大便として排出して血液中のカリウム値を下げる治療薬です。腎機能が低下するとカリウムを尿中に排出できなくなるため、高カリウム血症を引き起こします。高カリウム血症になると、筋力の低下や吐き気、しびれなどが起こり、不整脈を招くこともあります。

高リン血症治療剤
高リン血症治療剤は、消化管内でリンを吸着して血液中のリンの濃度上昇を抑える治療薬です。腎臓の機能が低下すると、食事から吸収された過剰なリンの排出が滞り、体内にリンが蓄積します。

血清中のリンの上昇とカルシウム量の低下は、副甲(ふくこう)(じょう)(せん)ホルモンの分泌(ぶんぴつ)を促進させます。副甲状腺ホルモンは骨からカルシウムを流出させる働きがあるため、骨がもろくなって骨粗(こつそ)鬆症(しょうしょう)の原因となります。ホルモンが過剰に分泌した状態が続くとリンとカルシウムの過度な結合が起こり、骨以外の組織でも石灰化を招きます。特に血管の石灰化は動脈硬化の原因となり、血栓(けっせん)(しょう)が起こりやすくなります。

吸着・排出する物質は異なるものの、治療薬と純炭粉末、デソルトファイバーはどれも同じしくみ。消化管内でそれぞれ吸着し、大便中に排出する

慢性腎臓病や人工透析の治療薬である球形吸着炭や陽イオン交換樹脂、高リン血症治療剤は、「消化管内で吸着し、大便中に排出する」という共通のしくみがあります。実は、健康食品の中にも、これらの治療薬と同様のしくみを持つものがあります。私が高く評価する「(じゅん)炭粉末(たんふんまつ)」と「デソルトファイバー」です。

医科大学で開発された純炭粉末は、高純度のセルロース(植物の細胞壁および食物繊維の主成分)から作られた健康食品です。純炭粉末は、慢性腎臓病の治療薬である球形吸着炭と同等以上の毒素吸着力を有することが実証されています。さらに、純炭粉末は球形吸着炭では排出できない糖毒物質(AGE)も吸着し、排出することが分かっています。

もう一つのデソルトファイバーは、食塩吸着力に優れるアルギン酸類を中心とした健康食品で、口から入った食塩を消化管内で吸着し、大便中に排出することができます。デソルトファイバーの食塩吸着作用は熊本大学で解明され、世界初の〝食塩吸着食品〟として特許を取得しています。食塩を大便中に排出する治療薬はまだありません。デソルトファイバーは、腎臓に流入するナトリウムを減らす減塩療法として有効で、私が患者さんに提案している「正塩食療法」を強力に手助けします。

私は慢性腎臓病の患者さんを対象に純炭粉末とデソルトファイバーを用いた試験を行い、腎機能に関する数値の変化を目の当たりにしています。純炭粉末の試験では患者さんたちのクレアチニン値が改善し、腎機能の悪化速度が緩やかになりました。デソルトファイバーの試験では、たんぱく尿が改善し、末期の慢性腎臓病に対しても有効といえる結果が出ています。

私は腎臓専門医として、純炭粉末とデソルトファイバーを併用する「守尾(もりお)式デトックス療法」が、慢性腎臓病や人工透析の治療効果を大いに高めると確信しています。

腎機能が低下してから治療を受けても、回復する見込みが薄いのが現状です。そのため、腎機能の低下が進む前から純炭粉末とデソルトファイバーを併用することで、慢性腎臓病の悪化や人工透析を回避することが期待できます。純炭粉末とデソルトファイバーのいずれかの利用でも腎臓への負担を減らすことはできますが、最大限のデトックス効果を得たいときは、両方飲んで様子を見るといいでしょう。