早くて余命半年といわれた腎臓がんの発症から20年目を迎えた私は、全国での講演活動やライブなど、忙しい毎日を送っています。
先日、私のもとに、以前相談に乗らせていただいたAさんからメールが届きました。数年前にいただいたメールには、「乳がんを現代医療以外の方法で治したい」という思いがつづられていました。
相談を受けるといっても、私は1人のがん体験者にすぎません。ですので、この治療がいい、あの治療はよくないなどとはいえません。知らないことのほうが多いのに、人生を左右するような具体的なアドバイスなんてできないのです。
ただ、相談してくださった方々には、私はこう問いかけています。
「どうして、そうしたいのでしょうか?」「それは自分主体での答えですか?」「消去法ではないですか?」「偏った情報をうのみにして選択していないですか?」
Aさんは、私が発行する『メッセンジャー』も読んでくれていました。先日いただいたメールには、このように書かれていました。
「腫瘍が大きくなってからは代替療法では無理だと判断し、標準治療を受けることに踏み切りました。あのままだったら命はありませんでした。世の中の情報に踊らされた愚かさに気づいたいまは、命のありがたさに感謝して楽しく生きています」
今後のためにも、Aさんはさまざまな養生法を否定せず、併用されていかれるのがいいと思います。
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3月初めに福岡で開催したトーク&ライブツアーで、ある方からこんなことを教えていただきました。
「侍の極意は『いかにともに負けないようにするか』ということ。決して『勝つ』ことではない。そして、究極の侍の姿は『斬りに来た相手と仲良くなること』だと」
深く納得です。私自身も、「がんと闘う」から、「病気に負けない」、そして「病気は敵ではなく、メッセージ。がんのいい分を聞こう。がんと和解しよう」という考えに変わっていきました。
翌日のトーク&ライブには、抗がん剤の治療中というBさんが来てくれました。乳がんと診断されたBさんは、治療効果がなくがんが転移し、1月の終わりには余命数ヵ月といわれたそうです。主治医からは、治療中に副作用で体調が急変することもありうるとまでいわれていました。
そこで、Bさんは治療に対する心の向き合い方を変えました。
「薬は自分を殺すために存在するのではない。決して怖いものではない。素直に受け入れよう」と。
主治医はBさんにこういったそうです。
「薬を作っている人は、人の命を救おうと思っているんです。その思いに感謝しましょう」と。
彼女は素直に感謝しました。抗がん剤に、主治医に、周囲の人々に、すべてに感謝しました。恐れを手放して、開き直ったのです。
すると、どうなったか。それまでと同じ治療を受けているのに、主治医が驚くほど抗がん剤がみるみる効いて、腫瘍が消えていったそうです。私はBさんから、「どんな思いで治療を受けるか」が、どんなに大切なことかを教えてもらいました。Bさんのエピソードは、がんに対するさまざまな養生法や健康食品に対する向き合い方にもいえると思います。
がんの治療法では、決して一つの情報をうのみにすることなく、あらゆる選択肢をテーブルに乗せ、消去法ではなく、自分の人生観に照らし合わせて、自分の責任で選んでいくことが大切だと思います。どちらかの方法が劣っているのではなく、負けているのでもなく、ともに負けていないのです。それぞれ役割が違うのですから。
福岡のトーク&ライブでは、主催者の方からこんな感想をいただきました。
「杖を使ってやっとの思いで歩いていた人が『イェ~イ!』と立ち上がってノリノリで手拍子したり、座っているのがやっとだった末期がんの方が『元気になっちゃった~』とコンサートの後の懇親会に笑顔で参加したりしてくれました!」
勝ち負けではありません。楽しんでいきましょう!