メモリークリニックお茶の水理事長 朝田 隆
鏡像の文字から一つの語彙を探す問題に挑戦して脳全体を刺激
鏡像花探し
まずは上のイラストをご覧ください。今回は、並んでいるひらがなの中から文字を選んで花の名前を作るという問題です。正解は一つだけなので、ほかの間違いに惑わされないようにしてください。ただし、すべてのひらがなは鏡に映ったように左右が反転している「鏡像」になっています。
解き方のヒントとして、まずは鏡像になっている文字を解読しましょう。ひらがなの右にある四角い部分を鏡と想定し、一つひとつの文字を反転させて紙に書き込んでください。鏡像を書くことは脳を刺激するとてもよいトレーニングです。
次に、並んだ文字の中から、鏡の中で鏡像になっているものを見つけます。これらはひらがなとして成立しない文字なので、×などで印をつけましょう。今回の問題でいえば、「きく」と「さくら」は正解ではありません。
鏡の中に残った文字が絞られてくれば、いよいよ解答に近づきます。思いつく花の名前を挙げながら、残っている文字を頭の中で組み合わせてみましょう。無事に正解の「あじさい」にたどりつきましたか? この問題を解くコツは、とにかく諦めないことです。問題を解こうとしている間に、脳の中では複数の機能が同時に働いて正解にたどりつこうとしています。
今回の問題を解くにあたって働いた脳の領域を解説しましょう。言葉をつかさどっている左側頭葉には「言葉の引き出し」があり、これまでの人生で習得した数々の言葉(語彙)がしまわれています。次に脳の司令部といわれる前頭葉、特にその前方にある前頭前野が重要です。前頭前野から「さあ、ここから花の名前を探し出せ!」という指令が出ると、左側頭葉にある言葉の引き出しから思いついた言葉が出されます。前頭前野ではそれらの言葉が適切かどうかをチェックし、正解に至ると考えられます。脳内で行われるこのやり取りが一回で成功するとは限りません。脳内では試行錯誤が繰り返し行われるので、正解にたどりつくには諦めずに続けるしかないのです。
鏡像の文字に引っかかって、「きく」や「さくら」が正解と思った人はいませんか? 文字探しの作業に始まり、正解かどうかの適切さをチェックするのは注意力です。正解に至るまでに欠かせない注意力を担う脳の領域もやはり前頭葉。この問題を解いたあなたの前頭葉は大いに活性化されたことでしょう。