杁山 恭弘さん
青パパイヤの粉末茶をはじめ、スムージー、ソムタムセットなど、青パパイヤを用いた食品の製造と販売を展開する杁山恭弘さん。もともとはラジオ局の文化放送に長年勤務し、敏腕プロデューサーとして人気番組を生み出しつづけていました。青パパイヤの商品を作ることになったのは、お世話になっていた女性が子宮頸がんを患ったことがきっかけでした。病気一つしたことがなかった元気な女性が末期がんと分かり、医師から見放された姿を目にし、何とか助けたいという思いで書籍などから情報を収集。たどり着いたのが青パパイヤだったといいます。
「私たちの体を作っているのは食です。健康はもちろん、がんに打ち克つ体を作るのには食に大きなヒントがあると思ったんです。健康を維持するうえで大切なのは、腸内環境を整えることと多くの本から学びましたが、中でも完熟前の青パパイヤには腸内環境を整えるパパイン酵素をはじめ、30種類以上の酵素類が含まれている世界一酵素の豊富な食品なんです。青パパイヤの食物繊維は腸内の掃除をして正常な状態に保ってくれるほか、糖質・脂質・たんぱく質を分解する唯一の野菜といわれています。そのほかにも、青パパイヤには抗酸化作用のあるポリフェノールやビタミンCやEなども豊富に含まれています。血行をよくして免疫力が高まるだけでなく、身体全体の循環もよくなるので、病気の改善、美肌・ダイエットにつながるとされています。青パパイヤこそ、私が求めていたスーパーフードでした」
しかも、その女性は青パパイヤを使うタイ料理のサラダ「ソムタム」が好きだったことから、杁山さんは青パパイヤへの関心がいっそう強くなったといいます。
「日本で青パパイヤを入手する手段や流通経路を調べているうちに、その女性は亡くなってしまいました。落胆していた時に、我が家の食卓でソムタムが出たんです。妻に『どこで買ったの?』と尋ねると、スーパーマーケットで売っていたとのことでした。それなら自分も青パパイヤを使って何かやってみようと思ったんです」
青パパイヤへの思いが強くなると同時に、健康な人を病気から遠ざけ、病気を患っている人を元気にしたいという思いが募った杁山さん。現代社会の食の乱れに危惧していたこともあり、長年勤めた文化放送を退社。青パパイヤを専門にした飲食店がなかったことから、2019年にソムタム料理(青パパイヤサラダ)専門店「SOM TUM CAFFE」を開店。店舗で使う青パパイヤは、有機無農薬栽培の国産品にこだわりました。
当初、杁山さんは「SOM TUM CAFFE」のチェーン展開を目標にしていましたが、3年目にカフェを閉めることにしたといいます。
「コロナ禍で大変な時もありましたが、3年間で多くの収穫を得ました。青パパイヤはリピート率が高く、健康を意識する人の多さを知りました。それに青パパイヤの専門店がなかったので、テレビ取材なども多く、自然な形で普及していきました。その一方で、日本産の青パパイヤへのこだわりから質のいい青パパイヤの入手が困難になり、チェーン展開が難しくなってしまいました」
「SOM TUM CAFFE」を営む傍ら、青パパイヤを広めるためにソムタムセットなどの通信販売を手がけていた杁山さん2022年には、青パパイヤ農園の拡大および工場の設置に踏み切ります。そして、自然環境のよい場所で子育てをしたいという思いから東京から長野県の軽井沢への移住を決意。農園と工場は鹿児島県を選んだそうです。
「これまで取り引きをしていた農家さんの中で、高品質の有機無農薬栽培の青パパイヤを栽培してくれたのが鹿児島県の農家さんでした。信用性やビジネスにかける思い、情熱、律儀さなどを考慮し、パートナーとして提携しました。自分で青パパイヤを栽培することも考えましたが、農業は非常に手間がかかり、根気だけではなく忍耐も要求されます。自然環境が相手だけにプロの農家さんに任せることにしました」
手間をかけた青パパイヤの粉末茶やスムージーが大評判
青パパイヤの粉末茶、スムージーなどを作ることにしたのは、1次産業の難しさにあったといいます。
「一般的に流通していない食材は大量生産が難しいんです。食品の加工は大量でないと機械化できないので、すべて人の手で行うことになります。量が多ければコスト対策はできますが、青パパイヤのように市場のない食品はコストがとても高くなります。そのうえ、農産物が収穫される時期はかなり似通っているので、現状、外部工場に委託するのが非常に困難です」
例えば、青パパイヤの粉末茶を作るには葉を収穫し、低温殺菌乾燥を複数回繰り返して粉砕化します。青パパイヤの葉は酸化しやすいため、収穫して数時間以内に乾燥させる必要があるとのこと。収穫後はすぐに工場に持ち込まなければならないものの、一般的なお茶の時期と重なってしまうのが実情だそうです。そのため、多くの商品は収穫後に自然乾燥させた後、お茶として加工工場に持っていくそうです。
「自然乾燥とは葉の酸化で、その葉で作られたお茶は茶色になります。青パパイヤは食品の中で生の酵素がいちばん多く含まれているのが利点ですから、少しでも生の酵素を破壊しないために外部工場に委託しませんでした。そこで私は酵素が破壊されない低温乾燥機を購入し、加工することにしました。私が作る青パパイヤの粉末茶が鮮やかなグリーン色をしているのは、酸化していない生の状態だからです」
一般的に青パパイヤの粉末茶は収穫後の葉を使いますが、「SOM TUM CAFFE」では酵素が最も強い新鮮で柔らかい若葉を使用しています。ところが若葉はとても小さく量が取れないほか、若葉を摘むと青パパイヤの実が成長しなくなってしまうのが欠点でした。そこで杁山さんは2024年に、粉末茶専用の3000坪の青パパイヤ畑を作りました。通常の5倍以上の手間とコストがかかったといいます。
「こだわるとコストがとてもかかりますが、酵素が豊富な青パパイヤ製品で皆さんに健康になっていただきたいです。今後もこの姿勢を貫いて、高品質の青パパイヤ商品作りを続けます」
ラジオ局の敏腕プロデューサーとして知られた前職の経験を生かして、青パパイヤで健康になることを〝パパ活〟と呼んで普及に努めている杁山さん。現在、「SOM TUM CAFFE」の通信販売では、青パパイヤの粉末茶(袋タイプ・スティックタイプ)をはじめ、90種の栄養素を含むスーパーフード・モリンガ入りの青パパイヤの粉末茶、ソムタムセットを発売しています。青パパイヤのサラダ(ソムタム)が苦手な人に向けに考案したフルーツとセットになったスムージーも好評とのこと。ミキサーにかけるだけの手軽さから大人気となっています。