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高齢者の自動車免許返納後に最適な電動カート

365セレクト

株式会社ノア 西原 基成さん

急速な高齢化に伴って深刻になっている高齢者の交通事故。自動車の運転免許証を返納した後の移動手段として高齢者向けの電動カートが注目を集めています。大手自動車メーカーの参入が相次ぐ中、「お客様目線で勝負」と語る西原さんが開発した「ノアモバイルX(エックス)」が話題になっています。

外出を渋る母のためにオンリーワンの電動カートの開発に着手

[にしはら・もとなり]——自転車メーカーの営業職を経て、27歳のときに独立。自動車の収納用品の分野でヒット商品を手がける。電動スクーターの開発後、足腰が衰えた母親のために電動カートの開発を決意。持ち運びができる小型・軽量の電動カートを完成させる。

高齢社会の道を進む日本では、社会の高齢化を象徴する問題が多く起こるようになりました。中でも、高齢者による交通事故の多発は、ときに痛ましい事態を招くことから、国を挙げた対策が求められています。そのような背景の中、高齢者の自動車運転の問題を「電動カート」の普及によって解決しようと奮闘している、株式会社ノア営業部長の西(にし)(はら)(もと)(なり)さんにお話を伺いました。

「私が開発した『ノアモバイルX』は、自転車の運転免許証がなくても乗れる高齢者向けの電動カートです。運転免許証を返納した後の移動手段として活用していただきたいと思っています」

2019年に日本国内で販売された高齢者向けの電動カートの数は約2万5000台。大手自動車メーカーも参入するほど大きな市場となった背景について、西原さんはこう分析します。

「若者の自動車離れもあり、自動車産業は先細りの状況です。そこで、各自動車メーカーは、自社の車を長年乗ってくれたお客様と、免許証を返納した後も関係を続けたいと考えています。その接点が電動カートなんです」

加齢に伴って低下する認知機能と運動機能は、自動車を運転するうえで欠かせないものです。運転時にとっさの判断や反応ができなくなっても、多くの高齢者が免許証の返納をためらう理由について、西原さんはこう話します。

「長年にわたって生活の一部となっている自動車を手放すことは、簡単に受け入れられるものではありません。移動手段を失った高齢者の中には、家に閉じこもってしまう人も少なくありません。近所にコンビニやスーパーマーケットがない地方では、車はまさに足代わり。車を失うと、毎日の買い物にも困ってしまうんです」

西原さんは、運転免許証を返納した後の移動手段として考えられる電動アシスト付き自転車の問題点についても指摘します。

「電動アシスト付き自転車は誰でもらくに乗れると思いがちですが、いざ乗ってみると、アシストを得るための踏み込みにかなりの力が必要なことが分かります。高齢者の中には、踏み込みができずに乗ることを諦めてしまう人も多いんです」

西原さんは、高齢者にとっての電動カートの存在を、「車を手放した後も生活に必要な移動手段を維持し、肉体的・精神的な衰えを防ぐもの」と位置づけています。〝ミスター電動カート〟とも呼ぶべき西原さんが電動カートの開発に取り組んだのは、いまから18年も前のことだったといいます。

「電動カートの研究を始めたのは2003年のことです。当時私は、コンソールボックスなど、車の収納用品の製造をしていました。親子3代で仲良く暮らしていたある日、娘を連れて動物園に行こうと母を誘ったら『おまえたちだけで行っておいで』といわれたんです」

お孫さんと出かけることが大好きだった母親の意外な返事を聞いた西原さんは、すぐに理由を聞いてみたといいます。

西原さんが開発した電動カート(写真は旧モデル)は母親(写真は本人)にも大好評!

「母が外出を渋ったのは、足の衰えが理由でした。母は私たちといっしょに長時間歩くのがつらくなっていたんです。外出を嫌がる母を見た娘は、『おばあちゃんが行かないとつまらない。私も行かないよ』と残念がるようになりました。母の足が衰えたことがきっかけで家庭の中が暗くなり、家族の(きずな)が失われそうになったんです」

そこで西原さんは、母親の移動手段として電動カートの購入を検討。ところが、当時の電動カートはとても大きく、重さは100㌔以上あったそうです。

「これでは車に載せて移動できません。実用的でないことは明らかでした。母の落ち込む姿を見ながら、同じようなことが全国の家庭で起こっているのではないかと思いました。そこで、世界に唯一の“親孝行できる電動カート”を造ろうと思ったんです」

徹底した利用者目線で大手企業にはできない最小・最軽量化を実現

西原さんは「親孝行したい!」と願う家族の目線を意識して新しい電動カートの開発を開始。開発にあたって特に重視したのは、以下の点でした。

小型で折りたためられ、小さな車にも載せられること

エレベーターに乗ることができ、スーパーマーケットやコンビニの中にも入れること

バッテリーが着脱式で、室内でも充電できること

軽量で宅配便でも送れること

多くの家庭で利用できるように価格をできるだけ抑えること

「私どものような中小企業は、大手企業ができないことに挑戦しつづけるしかありません。幸いにも私は当時、車用品の製造をしていたので中国や台湾にツテがあったんです。当時の中国ではすでに小型の電動カートが販売されていたので、実際に中国を訪れて実物を見ながら勉強を重ねました。すばらしいと判断したら、すぐに交渉して技術を導入できるのが中小企業の強みなんです」

苦難の末に試作品の完成にこぎつけたものの、その評判は芳しくなかったといいます。

「試乗会でお客様からいただいた声は『こんなにカッコ悪い電動カートには乗りたくない』『デザインがジジ臭さすぎる』と散々なものでした。その一方で、ほとんどの人が、近いうちに確実にやってくる歩行困難の自分を補助してくれる電動カートに興味を持っていることも分かりました」

電動カートで立ち寄る地域交流スポット「足の駅」計画も構想

試作品を酷評されつつも大きな手ごたえを感じた西原さんは、徹底した利用者目線で改良を継続。西原さんが心血を注いで開発したノアモバイルは、新しい電動カートとして着実に進化を遂げていきました。 

「改良を重ねて進化を遂げたノアモバイルは、新幹線や飛行機の中に持ち込めるようになりました。その後も研究を進めることで、国土交通省との話の中で課題となっていた路線バスへの持ち込みもできる、世界最小・最軽量の電動カート・ノアモバイルXを完成させることができたんです」

ノアモバイルXは路線バスの中にも持ち込める
車載もできるノアモバイルX

世界最小・最軽量の電動カート・ノアモバイルXは、軽量ゆえに心配される走行時の不安定さはありません。すでに愛用している利用者さんからは、「ノアモバイルXに乗るようになって元気になった」「出かけるのが楽しくなった」という喜びの声が寄せられているそうです。

キャリーケースに収まるほどコンパクト!

現在、西原さんは、ノアモバイルXに乗った高齢者が気軽に立ち寄れるスポットをネットワーク化した「足の駅構想」を実現するための活動も始めています。休憩所と電動カートの充電を兼ねた「足の駅」が、高齢者を中心とした地域のコミュニケーションスポットとなり、地域住民の交流に役立つことを目指しているそうです。

「利用者目線でいえば、電動カートを利用する範囲は、スーパーやご近所さんの家、バス停、タクシー乗り場までなど、せいぜい1㌔㍍の圏内です。このわずか1㌔㍍が、人とのコミュニケーションや社会との接点を維持する大切な距離なんです。電動カートを生活に取り入れると、『独りじゃない』ことを毎日実感できると思います」

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