プレゼント

イラストを回転させて「顔認識システム」を刺激

Dr.朝田のブレインエクササイズ!

メモリークリニックお茶の水理事長 朝田 隆

高齢者の約3割が予備群といわれている認知症。「物忘れが増えた」「大切なことが思い出せない」といった不安を感じたら、できるだけ早く対策を取りたいものです。認知症研究の第一人者として知られる朝田隆先生が考案したトレーニングで、脳の老化を防ぎましょう。

人間の脳には顔の認証システムがあり目や鼻、口の位置関係から顔全体を把握する

[あさだ・たかし]——筑波大学名誉教授。1982年、東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科、山梨医科大学精神神経科講師、筑波大学精神神経科学教授などを経て現職。数々の認知症の実態調査に関わった経験をもとに、認知症の前段階からの予防・治療を提案している。著書に『その症状って、本当に認知症?』(法研)など多数。

人間は「顔」を区別するために、脳で特別なシステムを発達させています。今回は、顔認識システムを利用したクイズをご紹介しましょう。

2人のミュージシャン

下のミュージシャンを描いたイラストをご覧ください。正面から見ると、顔が左半分はていねいに、右はさらっと描かれているように感じます。実はこのミュージシャンですが、別の顔を持っています。お気づきになるでしょうか。

人間が誰かの顔を判断するうえで、脳の顔認識システムは、目や鼻など、顔にある個々のパーツの全体的な位置関係を無意識のうちに捉えています。さらに、人の顔を記憶するうえで、目、鼻、口が大きな手がかりになっているといわれます。顔が上下逆さに提示された写真を見ると、顔を見分ける能力が低下することは有名な事実です。

さて、あらためてミュージシャンの顔を見てみましょう。このイラストをぐるっと180度回転させてみてください。あごひげ・ちょびひげの(はな)眼鏡(めがね)をかけた男性の左横顔に見えてきませんか? ここでは最初のミュージシャンの唇が、ひげの男性の目になっているように見え、耳が鼻に、さらに目が口に対応していると思います。私たちの顔認識システムは、目、鼻、口だと捉えたら、そこから顔を全体として把握するようになっているようです。

ワインを飲む2人

次に、2人の男性の絵をご覧ください。①の顔ですが、目、口はすぐに捉えられるはずです。鼻の線が少し不自然ながらも「これは鼻だな」と頭の中で修正して捉えられるはずです。顔認識システムは3つのパーツを捉えると、「ワインを前にした少し怒った表情の男性」だと納得して見ることができるでしょう。それに対して、②は一目で「ワインを前にした笑顔の男性」に見えます。

先ほど「写真の顔が上下逆さに提示されると、その顔を見分ける能力が低下する」と述べました。そう、この2人の男性の顔は、ひっくり返せば同じなんです。上下反転しているだけで、同じ顔とは想像もつかないほど違って見えるものになっていますね。この絵を描くうえで、②がいわば本絵になっていて、逆転しても男性の顔だと納得できるように努めました。

今回ご紹介したイラストを何度も見て、顔認識システムを刺激しましょう。脳にとって、いい影響を与えてくれるはずです。

朝田隆先生が診療されているメモリークリニックお茶の水の連絡先は、
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