満たされた性によって得られる幸福感は、人生を豊かなものにしてくれます。この連載では、いつまでもゲンキで毎日を過ごせるよう、編集部が見つけた性に関するとっておきの情報をお届けします。
善政で中国の唐を絶頂期に導いた第6代皇帝の玄宗。しかし、後半は〝世界3大美女〟の1人として知られる楊貴妃を寵愛したことで反乱の原因を作ってしまいました。玄宗皇帝は55歳のとき、当時21歳だった楊貴妃を妃に迎えたといいます。2人は、34歳の年齢差がありながら結ばれたのです。
晴れて〝年の差婚〟を果たした玄宗皇帝のゲンキの秘訣に注目した編集部は、国際中医師の土井雅雄先生にお話を伺いました。国際中医師とは、中国政府から中国の伝統医学である中医学を世界に普及させる専門家として認定された資格者です。中医学の理論に基づいた健康指導で注目を集めている土井先生は、動画配信や全国各地での講演活動を行っています。
「古来、中国では歴代の皇帝たちが不老不死の妙薬を切望してきました。皇帝たちの命を受けた多くの賢者たちは、さまざまな動植物や鉱物の薬効を研究して膨大な情報を集めてきたのです。こうした情報が蓄積された結果、2千5百年ほど前に高度な医学体系が形成され、中医学の基礎が築かれることになりました」
中医学では患者の〝体〟に注目して総合的な診察・治療を行います。中医学の考え方によると、私たちの精力(生命エネルギー)は〝腎〟で作られて蓄えられるそうです。
「中医学の腎は、西洋医学の腎臓とは違って、1つの臓器を意味するだけにとどまりません。生命エネルギーを体内で十分に発揮させて成長や発育、生殖をつかさどることを意味し、老化に深く関係しています。腎の強さは先天的な体質に支配されるため、生まれつき腎が弱い人や加齢に伴って腎が衰えてきた人は、食事や漢方素材などで腎の力を補う〝補腎〟に努める必要があります」
中国最古の医学書『黄帝内経』によると、男性は56歳、女性は49歳で生殖能力が衰えるそうです。いまからおよそ千五百年前の50代というと、現代以上に体の衰えが生じていたであろうことは想像にかたくありません。
「玄宗皇帝が若い楊貴妃と褥をともにするには、十分な精力をつけなければならなかったはずです。『若い嫁を満足させられるくらいゲンキになれるもの』を所望し、補腎に努めていたのでしょう。そこで献上されたのが、ヒガンバナ科の仙茅といわれています」
仙茅には下半身の血流を改善して冷えを解消する働きがあり、ED(勃起障害)や尿失禁、下肢のだるさを中心にさまざまな疾患の改善効果が期待されています。漢方素材として用いられるのは仙茅の地下茎(植物の地中にある茎)を乾燥させたもので、一般的には煎じて飲まれます。
「仙茅を飲んだ玄宗皇帝は、まずひざや腰の痛みが和らぎ、続いて精力も回復したと伝えられています。喜んだ皇帝が仙茅の煎じ薬をますますたくさん飲むようになると、精力がみなぎって昼夜を問わず楊貴妃を離さなくなってしまったといいます」
中国では「国が傾いたのは楊貴妃のせいではなく、仙茅が効きすぎたからだ」という笑い話があるという土井先生。ほかにも、マメ科のオランダビユの成熟した種子である補骨脂やナス科のクコの熟した果実を乾燥させた枸杞子も、腎の働きを高めて男性機能の回復効果や冷えの解消が期待される漢方素材だそうです。
漢方素材で腎の力を高められると、年齢とともに衰えていた精力を増強する効果も期待できます。玄宗皇帝にあやかって、パートナーと濃密な夜を過ごしてみてはいかがでしょうか。