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その7:年のせい

大野秀隆先生の「長寿の哲学」

理学博士 大野 秀隆

[おおの・ひでたか]——1930年、東京都生まれ。1953年、東京薬科大学卒業。東京大学医学部薬学科薬品分析化学教室で研究を重ねる。薬剤師。理学博士。画期的な発想から開発した悪臭対策エキス(OS液)が国内外のメディアで「消臭革命」として報道される。以後も研究を重ね、あらゆる世代を対象とした悪臭問題の解決に取り組んでいる。

長生きというのは、ただ単に年を余計に取るということではありません。肉体的にも精神的にも健康で、社会的にも生活力がある状態を続けて、初めて真の長寿といえます。

老人の体は臓器の萎縮とそれに伴う働き方の変化、すなわち予備力が減り、適応力が少なくなっています。老人が送るべき生活は、それらを前提に考えなくてはいけません。

老人は肉体的・精神的に個人差が大きいため、個人に適した生活を送るべきです。老人が病気、こと慢性病になると、回復に希望を失いがちになる場合が少なくありません。そのような場合、家族や周囲の人々の温かい言葉と態度は、孤独になりがちな老人にとって薬以上に気持ちを和らげるものになります。

「年のせい」という言葉をよく聞きます。疲れやすいのも「年のせい」と、私たちは日常的にこの言葉を用います。この言葉の中には、老年に伴って起こる生理的な変化を意味する場合もありますし、あるいは、老年性の病気を含む場合もあります。そして、症状が軽い場合でも「年のせい」として片づけてしまい、重い病気を見逃してしまうことがよくあります。少しでも体に異常を感じたときは、簡単に「年のせい」と考えず、よく調べてもらうことが大切です。

老年期の生理から見ても、老人は生活の中で無理をするべきではありません。慣れた生活を静かに送ることで体の全体のバランスが比較的よく保たれた状態になり、その人なりの健全な生活となります。老人の生活は、余計な負担がかかると元に戻りにくいのです。尿検査を見ても、老人は疲労からの回復が若い人に比べて遅く、長い時間を必要とします。一般的に老人は、青春時代から健康であった者であればあるほど、自分の健康に自信を持っています。そして、その状態がいつまでも変わらずに続くような錯覚にとらわれている人も多いのです。

無理をしない生活というのは、何もしない生活ということではありません。ほかの臓器や器官は、その働きに耐えうる程度の仕事をしないと衰えが早くなります。使わない機能は、衰えが早いものです。1週間も安静に寝ていると、足の筋肉が弱くなり、急に歩くことが難しくなることからも分かります。そのため、適当な刺激を与えて訓練することが必要です。老人でもできる範囲のことは自分でやるようにして、周りに頼りすぎないようにしたいものです。

長寿をまっとうすることは、生きとし生けるものの絶えざる願望です。しかし、老化という現象は、西に傾く太陽のように抵抗しえない必然のものでもあります。「夜があるからこそ昼がますます明るくなり、冬があるからこそ春が楽しい」と考えるべきでしょう。