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ホットワインで血流アップ!

クマ先生の免疫学的なお酒と料理の楽しみ方
熊沢 義雄

[くまざわ・よしお]——元北里大学教授。山梨大学大学院発酵生産学修了後、北里研究所、北里大学薬学部・理学部に40年間在職。専門は生体防御学(免疫学)。日本細菌学会の理事・監事を12年間務める。現在は北里大学発のベンチャー企業代表として奮闘中。

体質的にお酒を飲めない人はいるものの、多くの人にとってお酒は「百薬の長」といえます。一方で、「アルコールは体によくない」という考えがあることも事実です。

今月から始まるこのコラムでは、「適量のお酒は心を豊かにしてくれる」という考えをもとに、お酒と健康について書いてみたいと思います。

皆さんは「地中海食」をご存じでしょうか? 健康にいいことをユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が認めている、地中海沿岸に住む人たちの食事です。地中海沿岸の人たちは、食事といっしょに赤ワインをたしなむのが一般的で、1日2杯前後飲んでいます。

白ワインはブドウの果汁だけを発酵させて造りますが、赤ワインは果汁といっしょに果皮や種子も混ぜて発酵させます。そのため、赤ワインには果皮や種子に含まれる抗酸化成分のポリフェノールが、白ワインより多く含まれているのです。

キリスト教と密接な関係がある赤ワインは、欧州を中心に古くから飲まれているお酒です。かつてドイツで研究生活を送っていたとき、クリスマス・マーケット(欧州各国で中世から続いている伝統的な祭り)に出かけたことがあります。クリスマス・マーケットは寒い時期に開かれるので「グリュー・ヴァイン」という飲み物で体を温めました。

グリュー・ヴァインといってもピンとこないかもしれませんが、和製英語のホットワインのこと。庶民的な赤ワインにシナモン、クローブ、スターアニス(八角)を入れて温めた飲み物です。グリュー・ヴァインを飲むと体が温まり、血行がよくなります。心も落ち着き、寒い季節にぴったりのお酒なので、今夜にでも試してみてはいかがでしょうか。

ドロドロした血液や漢方でいう瘀血があると血行が悪くなり、冷え症になります。冷え症の人は便秘になりやすく、血圧も上昇します。少量の飲酒は血管を拡張させ、血行をよくします。ホットワインはまさにその役割を果たす、健康的なお酒といえるでしょう。

ほかにも血行をよくする食材として、温州ミカンの皮を干した陳皮、蒸して干したショウガ、梅肉エキスのムメフラール、タマネギの皮に含まれるケルセチンなどがあります。ブドウの果皮や種子に含まれる成分も血行をよくし、血圧を下げる効果を持っています。ミカンやタマネギの皮は自分で加工して利用できますが、最近では乾燥粉末が市販されています。農薬が使われていないかどうかを確かめて、料理に活用するといいでしょう。

ドイツでグリュー・ヴァインと呼ばれるホットワイン。体を温めるだけでなく、血流の改善や動脈硬化の予防にも効果的!

動脈硬化が原因となって起こる代表的な病気に、狭心症・心筋梗塞や脳梗塞などがあります。動脈硬化は血管内で起こる炎症が引き金になっています。ミカンの皮、タマネギの皮、そしてブドウの果皮や種子に含まれている成分を日常的にとると、血管の炎症が抑えられて、動脈硬化が起こりにくくなるのです。

過度の飲酒が健康によくないことはいうまでもありませんが、1杯のワインが心を豊かにし、健康の維持に役立つこともあります。健康的な生活は、人生の豊かさを感じる基本といえるでしょう。