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ワインは抗酸化力だけじゃない。優れた抗炎症作用にも注目しよう!

クマ先生の免疫学的なお酒と料理の楽しみ方
熊沢 義雄

[くまざわ・よしお]——医学博士(京都大学)。元北里大学教授。山梨大学大学院発酵生産学修了後、北里研究所、北里大学薬学部・理学部に40年間在職。順天堂大学医学部非常勤講師。専門は生体防御学(免疫学)。日本細菌学会名誉会員。現在は北里大学発のベンチャー企業の代表として奮闘中。

ワインが日本酒や焼酎と異なるのは、ポリフェノールが含まれている点です。ポリフェノールの働きというと、抗酸化作用を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、実は抗炎症作用が大事なのです。

最近の研究によって、私たちの体には抗酸化作用よりも抗炎症作用のほうが重要と認識されるようになりました。

活性酸素(酸化作用の強い酸素)を抑えるためには抗酸化作用が重要だといわれます。運動でエネルギーを消費すると、筋肉の細胞内で活性酸素が作られますが、私たちの体は活性酸素を除去する酵素を細胞内に備えています。摂取したポリフェノールが吸収されて、細胞内の活性酸素が働く場所に効率よく到達することはありません。

ポリフェノールの一種として、タマネギに多く含まれているケルセチンがあります。ケルセチンはワインにも含まれています。ケルセチンを摂取すると血中のケルセチン量は増えるものの、抗酸化作用は向上しません。専門的な話になりますが、ケルセチンは血中に入るとグルクロン酸と結合し、不活性型になってしまうからです。そのほか、赤ワインには緑茶の成分のカテキンやエピカテキンも含まれています。さらに、アントシアニン系の成分も多く含まれます。長寿遺伝子を活性化すると話題になったレスベラトロールの含有量は少ないので、効果を期待するには大量のワインを飲む必要があり、あまり実践的な話ではありません。

野菜を最初に食べると血糖値の急上昇が抑えられるのは、食物繊維の働きによるものといわれています。野菜や果物に含まれるポリフェノールが酵素たんぱく質に結合すると、酵素の働きが阻害されます。糖質を分解するには酵素が必要です。酵素にポリフェノールが結合すると消化が抑制されるので、赤ワインを飲めばポリフェノールの働きによって血糖値の急激な上昇が抑えられるのです。

「抗炎症作用を発揮するには、どんな赤ワインを飲んだらいいの?」という質問をしたくなると思います。抗炎症作用を期待するには、ポリフェノールが多く含まれているフルボディタイプの赤ワインがおすすめです。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローといったボルドー系の品種だけでなく、イタリア、スペイン、ポルトガルの品種でもいいでしょう。赤ワインの産地もフランスに限る必要はありません。手ごろな価格で自分の口に合うワインを選んでください。

個人的にはブルゴーニュ・ワインが好きですが、イタリア・プーリア州のプリミティーボ種(ジンファンデル種)のワインも手ごろな価格で好きですね。