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意外な食材も楽しめるアツアツおでんで体を芯から温めよう!

クマ先生の免疫学的なお酒と料理の楽しみ方
熊沢 義雄

[くまざわ・よしお]

医学博士(京都大学)。元北里大学教授。山梨大学大学院発酵生産学修了後、北里研究所、北里大学薬学部・理学部に40年間在職。順天堂大学医学部非常勤講師。専門は生体防御学(免疫学)。日本細菌学会名誉会員。現在は北里大学発のベンチャー企業の代表として奮闘中。

寒くなると食べたくなるのが、アツアツのおでんです。体を芯から温めてくれる居酒屋の定番料理として、好きな人も多いと思います。

おでんという名前は田楽に由来しています。豆腐を串に刺し、味噌をつけて焼く「味噌田楽」は、室町時代に生まれた料理です。私の故郷・愛知県犬山市にある松野屋さんでは、いまでも菜飯といっしょに味噌田楽を味わうことができます。子どもの頃は、串に刺したコンニャクなどを温めて、味噌をつけた「煮込み田楽」も食べました。いまのおでんは「関東炊き」や「関東煮」と呼んでいたものです。

ある地方都市の料理屋を訪れたとき、とてもまずいおでんに出合いました。思わず女将に「どんなダシを使っているのですか?」と聞いたら、コンブだけでダシをとっているとのこと。カツオブシも使わず、醤油や塩味も薄い。よくこんなおでんを料理として出せるなあと、あきれたことがあります。

この料理屋はともかく、おでんの種やダシは地方によって異なります。口に合う、合わないは人それぞれなのかもしれません。

熱々おでん

大手コンビニエンスストアが関西風の味付けのおでんを販売してから40年がたちました。いまでは多くのコンビニエンスストアでさまざまなおでん種を味わえます。関西風のおでんの味も、すっかり関東地方に定着しました。

昔のおでんは居酒屋だけでなく、屋台で手軽に買える庶民の味でした。ダイコン、ゆで卵、コンニャク、竹輪、ちくわぶ、厚揚げ、がんもどき、巾着といった定番のおでん種をはじめ、その地方で獲れる魚を活かした練り物を使ったおでん種も豊富です。ジャガイモやサトイモ、ロールキャベツなど、個性的なおでん種も人気があります。

魚のすり身を使ったおでん種は、練り物・揚げ物・揚げかまぼこ、さつま揚げ、つみれ、と呼び名は異なりますが、おでんには欠かせない食材です。逆に、同じ呼び名でも異なる食材もあります。関東でスジといえば、魚の白身に軟骨を入れて蒸したおでん種ですが、関西では串刺しにした牛スジを指します。

静岡県のおでんは独自性が強く、カツオブシと青ノリを混ぜたダシ粉をかけて食べます。京都ではおでんといっしょに細かく刻んだ九条ネギを合わせて出す店もあります。以前、京都大学の近くにあるおでん屋に行ったとき、ハンペンと思って口に入れたら、クジラのコロ(脂肪もいっしょに切り取った皮の部分)でした。驚きの味に出合えるのも、おでん屋巡りの楽しみの1つです。魚肉を使った食材が多いおでんは、たんぱく質を手軽にとれる冬の定番料理といえるでしょう。

私が教授を務めていた北里大学の白金キャンパス周辺は居酒屋が多く、学生たちとの思い出がたくさんあります。学生たちが作ったおでんを肴にして飲む研究室の宴会は楽しい時間でした。おでん作りを仕切っていた大学院生は米国に渡り、研究者として頑張っています。

学生たちと行ったおでん屋では、他の研究室の学生たちといっしょになり、その縁から後日、ワイン仲間となる先生との出会いもありました。おでんと相性がいいお酒は日本酒ですが、実はワインも負けてはいません。昔は「おでんにワイン?」と不思議な顔をされたものですが、いまでは多くの人が、おでんをアテにワインを楽しんでいます。
 

この記事は「健康365」2019年3月号に掲載されています。