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大学が開発した機能性野菜〝サンフラワーポテト〟で健康問題の解決を目指す!

ご当地研究最前線
佐賀大学機能性農産物キクイモ研究所所長 松本 雄一

キクイモのイヌリンが血糖値の上昇を抑える

水溶性食物繊維のイヌリンを豊富に含むキクイモは、ヒマワリの親戚で鮮やかな黄色い花を咲かせる

佐賀県は高血圧が原因で起こる疾患の人口別死亡者数や、糖尿病による人工透析患者数の伸び率が上位の地域です。佐賀県全体が抱える健康問題を日常の食生活の中から解決しようと、地元の農産物を調べる中で出合ったのがキクイモです。

キクイモはアメリカが原産国で、日本には1859年に渡ってきたとされています。キクイモの名前はキクに似た花を咲かせ、イモのような根ができることからつけられています。イモという言葉からジャガイモやサツマイモの仲間と思われがちですが、ゴボウと同じキク科でヒマワリの親戚です。根の形はショウガに似ていてゴボウに近い風味を持ち、食感はレンコンのようにシャキシャキしています。近年、キクイモに含まれる水溶性食物繊維のイヌリンが、高血糖を改善する機能性成分として注目を集めています。

血糖値は血液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度のことです。ブドウ糖は私たちが活動するためのエネルギー源として重要な物質です。適切に利用されているときの血糖値は基準値の範囲内にあります。食事で米や小麦などの炭水化物をとると血糖値が上昇します。すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、筋肉や脂肪に糖が取り込まれて血糖値が正常値内に戻ります。

サンフラワーポテトは在来系統のキクイモに比べ、多くのイヌリンを含んでいる

しかしながら、糖尿病予備群の方やⅡ型糖尿病の患者さんなど、インスリンの働きが低下している人は、筋肉や脂肪などにおいて糖の取り込みが少なく、血液中に糖があふれ出して高血糖の状態になります。キクイモを食べると、イヌリンの働きによって体内でインスリンの分泌が促進されるほか、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性の状態が改善されます。さらに、水溶性食物繊維として糖の消化吸収が緩やかになる効果も報告されています。これらの効果によって、血糖値の上昇が抑制されていくのです。

では、どれだけのキクイモをどのように食べればよいのでしょうか。これまでの研究の結果から1日にキクイモを100㌘(イヌリン10㌘)、食前もしくは食事の前半にとると効果が期待できると考えられています。食べ方はサラダなど生の他、いため物や揚げ物などさまざまな方法で食べることができます。イヌリンは熱に強いので、通常の調理法ではほとんど分解されません。煮物のさいには、水溶性食物繊維という特徴のとおり煮汁の中に溶け出てしまいますが、汁ごと食べることで無駄なくとることができます。

佐賀県やその周辺の地域では、キクイモを使った健康作りを実証しようといった動きが見られはじめています。佐賀県の基山町では2017年に町民にキクイモを提供し、継続的に食べた後の健康状態について調査を行いました。その結果、腎機能の改善効果が確認でき、キクイモのさらなる可能性について実感できました。

2018年には福岡県の築上町で町民40名による実証を行い、腸内環境の改善などといった効果が確認されています。佐賀大学内でも糖尿病予備群の方を対象に、食後血糖値の低下に関する詳細なメカニズムについて調査を進めています。キクイモによる効果が続々と明らかになってきています。

サンフラワーポテトはイヌリンが約1.2倍多い

地域の直売所では販売されていることが多いキクイモ

佐賀大学では全国のさまざまなキクイモの系統を調査し、成分含量や加工適性などに優れる系統を選抜しました。ヒマワリに似た草姿から「サンフラワーポテト」と命名し、2017年に商標登録を行っています。

サンフラワーポテトの特長の一つにイヌリンの量が挙げられます。成分分析の結果、在来のキクイモよりもイヌリンが20%も多く含まれていることが分かりました。より多くのイヌリンをとることができるため、血糖値のさらなる抑制効果が期待できます。

その他、サンフラワーポテトは表面の凸凹が少なく、調理のさいに洗いやすいといった特長があります。また、優れた機能性から、キクイモは注目の食材として広く報道されるようになり、全国的にも認知度が少しずつ高まってきました。佐賀県外でも栽培する農家が増えてきており、最近では、サンフラワーポテトを使った加工品の開発も始まっています。

キクイモの研究を通じて、健康課題の解決に貢献するとともに、地域の活性化にもつなげていきたいと思っています。今後、サンフラワーポテトやその加工品が全国で見られる日を楽しみに、今後も研究を積み重ねていきます。
 

この記事は「健康365」2019年3月号に掲載されています。