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おいしい発酵食品で〝腸活〟を始めよう!

クマ先生の免疫学的なお酒と料理の楽しみ方

熊沢 義雄

[くまざわ・よしお]——医学博士(京都大学)。元北里大学教授。山梨大学大学院発酵生産学修了後、北里研究所、北里大学薬学部・理学部に40年間在職。順天堂大学医学部非常勤講師。専門は生体防御学(免疫学)。日本細菌学会名誉会員。現在は北里大学発のベンチャー企業の代表として奮闘中。

日本は発酵食品の宝庫です。発酵には(こうじ)菌や(こう)()菌、乳酸菌、(さく)(さん)菌といった微生物が関わっています。お酒もアルコール発酵で作られ、日本酒やワイン、ビールなどの醸造酒と、さらに蒸留させて作るウイスキーやブランデー、焼酎などの蒸留酒があります。アルコールは酵母が作る酵素によってブドウ糖から解糖系という経路で作られます。

ブドウなどの果汁には単糖のブドウ糖や果糖が含まれているためそのまま発酵します。米はデンプンなのでブドウ糖にする必要があります。国菌といわれる麹菌はカビの仲間で、デンプンをブドウ糖に変える酵素を持ち、有機酸を作ることもできます。ワインにはもともと有機酸が含まれているため、酸性の条件で作られます。ワイン作りでは有機酸の味を和らげるために乳酸菌を使うこともあります。

料理をする方なら発酵バターの存在をご存知でしょう。風味がいいといわれる発酵バターも乳酸菌の働きによって作られます。そのほか、みそやしょうゆは、私たち日本人の食卓に欠かせない調味料です。〝みそドクター〟と呼ばれる内科医の(せき)()()さんは、病気にかかりにくい食生活をすすめています。関さんは米国の大学院やNHKの海外放送でみその話をしたり、仲間とみそ蔵を訪ねてみそ作りをしたりするなど、みその魅力を世界的に広めるための活動をされています。数年前に、塩麹が大ブームとなりました。私と講演をする機会が多い料理研究家の(かわ)(かみ)(ふみ)()さんが考案した塩麹を使ったレシピも人気となりました。素材を塩麹で処理すると、麹菌が作る酵素によってたんぱく質やデンプンが分解されるので、一段と味がよくなります。

意外に思われるかもしれませんが、カツオ節も乾燥過程でカビを増殖させて作るので発酵食品といえます。漬物は麹菌を使って作るものや、乳酸菌を利用して作るものなどさまざまです。通常の漬物は塩を使って発酵させますが、「すんき漬け」のように塩を使わずに発酵させる漬物もあります。

乳酸菌やビフィズス菌が入ったヨーグルトは、私たちの食生活になじんでいますが、これらは通過菌ともいわれます。腸内では菌がグループを作り、外から入ってきた菌は定着できないからです。そのため、水溶性の植物繊維とフラボノイドを摂取することで自分の腸の細菌群を育てる「腸活」が大切になるのです。

お酢やビネガーも発酵食品の一つです。お酢は調味料として使われますが、実は私たちの腸内でも(たん)()脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・(らく)(さん))を作っています。酢酸とはお酢のことです。酪酸は免疫の調節に役立ち、老化防止にも役立ちます。酪酸菌を増やすには、水溶性の食物繊維が必要です。

発酵食品をとり、腸活によって腸内を善玉菌が多い環境にするには、昔から日本の食卓に出ていた料理が役立ちます。カツオ節や煮干しで取ったダシを使った野菜たっぷりの汁に複数のみそを入れて作ったみそ汁は、薄味でもうま味があります。目覚ましにもなる、おいしい朝の一杯です。