SAY株式会社 代表取締役、ハピバス認定講師 藤井 治子さん
30歳のときに始めたバレエで体調が劇的に回復し健康効果を確信
SAY株式会社は、関西を中心に「ハピバス(ハッピーバレエ・ストレッチ)」という中高年女性向けの新しい健康づくり運動プログラムを実施しています。
SAY株式会社を設立して、今年で5年目を迎えます。設立当初はわずかな生徒さんだけでレッスンを始めましたが、健康効果が口コミで広がり、いまでは全国で300人弱の生徒さんと16人の講師がいます。
ハピバス(ハッピーバレエ・ストレッチ)はその名の通り、バレエの動きを活用した体幹トレーニングとストレッチ運動です。バレエというと、軽やかなステップを踏んでステージ上で華やかな演技を見せるバレリーナの姿を思い浮かべると思いますが、健康作りに応用できる動きがたくさんあります。
私がバレエを始めたのは30歳のときでした。大学卒業後、大手損害保険会社に就職した私の仕事は、内勤の電話対応や事務処理でした。会社では体をほとんど動かさなかったことから、冷え症や肩こり、腰痛、坐骨神経痛といった体調不良に悩まされるようになりました。
運動不足を解消するために選んだのが「バレエ」でした。音楽に合わせて踊ることが好きな私は、大学時代に社交ダンスサークルに入っていました。もう一度、レッスンを受けようと思いましたが、社交ダンスはパートナーがいないと踊れません。スポーツジムやヨガ、ヒップホップやジャズダンスの教室なども試しましたが、楽しさを感じられず、長続きしませんでした。
そんなときに思い出したのが、「社交ダンスが上手だったサークルの友人たちは、みんな子どものときにバレエを習っていた」ことでした。
いざ、バレエ教室に通ってレッスンを受けてみると、難しさよりも楽しさを感じることが多く、すぐに夢中になりました。しかも、楽しくレッスンを受けているうちに全身に筋力がついて引き締まるようになり、ウエストやヒップがみるみるサイズダウンしていったのです。
変わったのはスタイルだけではありませんでした。カゼも引かなくなり、長年の悩みだった冷え症まで解消したのです。「バレエのおかげで自分の体が変わった!」と毎日感じていた私は、心身ともに健康を取り戻していきました。
周囲から「明るく元気になった」「立ち姿がきれい」と褒められるようになった私は、「バレエは特別な人だけのものじゃない。バレエをすれば誰でも元気になってきれいになれる」という思いが強くなりました。
バレエの健康効果を広めたいと思うようになった背景には、母の存在もありました。当時、私の母は更年期の真っただ中で、いつも体調が不安定でつらそうにしていたんです。母の様子から、女性は中高年になると体調を崩しやすくなることを知り、中高年女性に向けてバレエの健康効果を広めたくなりました。これが、バレエの基本動作を活用した健康維持向上プログラム「ハピバス」の始まりでした。
背筋や手足をまっすくに伸ばしてしなやかな筋肉を作る
ハピバスのコンセプトは、「バレエの基本動作を活かした運動プログラム」です。主な対象は40代以降の中高年層で、「人生最後の日まで自分の足で歩く」ことを最終的な目標にしています。
バレエを健康維持のメインに活用した中高年層の運動プログラムは、世界を見渡しても、まだほとんどありません。その一方で、2016年にアメリカの整形外科学会では、バレエの動きが健康維持に役立つことが発表されるなど、華やかさだけでない健康効果が確かめられています。
舞台で踊るバレリーナを思い浮かべると分かるように、バレエの動作は「背筋と手足をまっすぐに伸ばした姿勢」が基本です。背筋や手足をまっすぐに伸ばすと、必然的に腹筋や背筋、下腹、太もも、お尻の筋肉を同時に鍛えることができます。すなわち、美しい姿勢を保ちながら、しなやかで強い体幹筋肉を手に入れられる好循環が生まれるのです。
バレエの健康効果については、私自身の経験から確信を持っていましたが、普及を図るためには大勢の人に対する効果を確かめる必要がありました。そこで私は、2013年から、大阪府堺市にある特別養護老人ホームの中に場所を借りて、ボランティアとして試験的にレッスンを始めることにしました。
バレエのレッスンを始めるといっても、当時は肩書も知名度もまったくなかったので、生徒さんを集めるだけでも大変でした。仲間と一緒に200枚のチラシを刷って老人ホームの方々に配ってもらうと、レッスン初日には5人の生徒さんが来てくださいました。
中高年の方を対象にボランティアで始めたバレエレッスンは、私にとって有意義なものでした。会社で事務をしていたとき、お客様と対面する機会はほとんどありませんでしたが、バレエレッスンのボランティアは、生徒さんと楽しく触れ合えるだけでなく、元気になっていく様子を直接見ることができたからです。私は、ボランティアのレッスンを重ねるごとに、「バレエで健康づくりを一生の仕事にしたい!」と強く思うようになりました。
その後、レッスンの専門性を高めるために、医師をはじめ、プロのバレエ講師や音楽家、整骨院の治療家といった専門家の先生方のご協力をいただきながら、効果の検証を重ねていきました。その結果、私たちが考案したハピバスには、専門家の目から見ても優れた健康効果が期待できることが確かめられたのです。実際に、レッスンを半年継続すると、74%の方の身長が伸びるという結果も出ました。
かつての私と同じように、バレエを通じて健康を取り戻した生徒さんが続々と現れるようになると、事業としての可能性も感じるようになりました。自分の心に気持ちを問いかけて、「人生をかけて挑みたい」と思っていることに気づいた私は、現在の共同経営者と起業し、いまに至っています。
生徒さん向けの動画をYoutubeで配信し運動不足解消を提案
ハピバスの基本的なプログラムは、1レッスン60分、以下の3部のメニューから構成されています。
① ストレッチ(25分。ゆっくりとした動きで限界まで体を伸ばすレッスン)
② 姿勢&体幹トレーニング(20分。正しい姿勢を取り、ゆっくりと負荷をかけていくレッスン)
③ バレエステップ(15分。バランス感覚向上を目指した動きをゆっくりと行うレッスン)
ハピバスの特長は、いずれのメニューも「ゆっくり」行うことです。姿勢&体幹トレーニングにおいては少しきつく感じるときもありますが、生徒さんによると、バレエの持つ美しい音楽性や芸術性が、つらさを楽しさに変えてくれるそうです。
そのほか、私たちの教室では、オリジナルのクラシック音楽を流したり、生徒さん同士のコミュニケーションを深めたりすることで、リラックス効果も高まると評判です。
現在、40代から80代まで、280名を超える生徒さんがレッスンに参加されていますが、新型コロナウイルスの感染を防ぐため、約3ヵ月間、教室でのレッスンを自粛しました。そのような状況の中、講師陣たちから「せっかくみんなの体調がよくなったのに……」という声が上がったことを受けて、2020年4月から、自宅でレッスンができるように、レッスン動画をYoutubeで配信しています。
私たちの生徒さんのみならず、世の中の多くの方たちが、長期の自粛生活によって筋力や体力が低下していくおそれがあります。現在、ハピバスのレッスン動画は、Youtubeで見ることができます。ぜひ皆さんも、今日からご自宅で実践して、運動不足の解消にお役立てください。
新型コロナウイルスの心配が去り、再び私たちの教室でレッスンが始まったときは、ぜひ皆さんも一緒に参加していただきたいと思います。
Youtubeを使った自宅レッスンもいいですが、仲間と一緒に行うレッスンは、自宅では代えがたいものがありますよ。