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食べても太らない“幻のダイエットアイス”物語

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株式会社アイ・ティ・ビ・エス代表取締役社長 瀬井 冨雄さん

古くから健康素材として注目を集めてきた朝鮮ニンジン。実は、根よりも果実の部分に有効成分が多く含まれていることが分かっています。有効成分のサポニンを用いたスイーツを食べると、太らないどころか、むしろ健康になれるという驚きの情報を取材しました。

朝鮮ニンジンは根よりも果実のほうに有効成分が豊富に含まれていることが証明されている

朝鮮ニンジンは「オタネニンジン」「高麗ニンジン」とも呼ばれ、ウドやヤツデと同じウコギ科の植物です。滋養強壮をはじめ、さまざまな健康効果を発揮する万能薬として珍重され、中国では2000年以上も前から食用や薬用に利用されてきました。日本には8世紀頃に漢方薬として伝来しています。

朝鮮ニンジンには、ビタミンやミネラルなどがバランスよく含まれています。中でも、朝鮮ニンジン特有の成分がサポニンです。サポニンは植物に多く含まれる配糖体と呼ばれる化合物の一種で、抗酸化作用や免疫力向上作用といった高い薬理効果が期待できます。

朝鮮ニンジンといえば、根の部分ばかりが珍重され、果実についてはほとんど注目されることがありませんでした。ところが、近年の研究によって、朝鮮ニンジンは根よりも果実のほうに有効成分が豊富に含まれていることが証明されています。朝鮮ニンジンの果実には30種類以上のサポニンが含まれているだけでなく、根に比べて約4倍、抽出したエキスには5倍も多く含まれていることが明らかになったのです。

株式会社アイ・ティ・ビ・エスの社長を務める瀬井さんは、朝鮮ニンジンの果実の美しさとさまざまな薬効に魅せられたという

そんな朝鮮ニンジンの果実に魅了されたのが、株式会社アイ・ティ・ビ・エスの社長を務める瀬井冨雄さんです。学生時代、カリフォルニアでアメリカ式大型農業の経営について学んだ瀬井さんは、青年海外協力隊員としてフィリピンで活動。帰国後は大手商社に入社し、世界各国の農業プロジェクトに携わりました。

瀬井さんに転機が訪れたのは、仕事中に赴いた中国東北部で朝鮮ニンジンの果実を目にしたときです。朝鮮ニンジンは発芽して3年たつと、真っ赤な果実を実らせます。朝鮮ニンジンの果実の美しさとさまざまな薬効に驚いた瀬井さんは、高齢化社会に伴うQOL(生活の質)の低下に歯止めをかけられるのではないかと期待を高まらせたといいます。

「それまで研究されてこなかった朝鮮ニンジンの果実の分析を北里大学と昭和大学の研究者に依頼したら、根以上の有効成分があることが分かったんです。ますます朝鮮ニンジンの果実に魅せられた私は、商社を退職してアイ・ティ・ビ・エスを設立しました。そして、世界で初めて、朝鮮ニンジンの果実の成分を原料とした健康食品を開発・販売することに成功したんです」

朝鮮ニンジンは発芽して3年たつと、真っ赤な果実を実らせる

ところが、発売当初は朝鮮ニンジンの果実についての知名度が低く、健康食品の売れ行きも伸び悩んでいたそうです。どんなにすばらしい効果が期待できる素材であっても、多くの人に手に取ってもらえないと、ほんとうに必要としている人のもとへは届かないことに気づいたという瀬井さん。そこで考えたのが、大人から子どもまでおいしく食べられるスイーツへの応用です。

「アイスクリームやチョコレートは人気の高いスイーツですが、脂肪と糖がたっぷり含まれていて高カロリーなのが難点です。ダイエット中の人だけでなく、糖尿病や脂質異常症の患者さんにとっても、スイーツはできるだけ控えなければならないもの。甘いものに目がないのに健康上の理由で泣く泣く我慢を重ねている人たちのために、低カロリーどころか“食べると健康になれるスイーツ”を作ろうと決心しました」

朝鮮ニンジンの果実の成分を活用したら夢のスイーツが生み出せることを確信していたという瀬井さん。5年以上研究を重ねた末、ついに1990年代後半に「食べても太らない夢のダイエットアイス」の開発に成功したのです。

「朝鮮ニンジンに含まれる有効成分のサポニンには、私たちの中枢神経に対する対照的な2つの作用があります。中枢神経に適切に働きかけて興奮状態を鎮静化して精神を安定させたり、反対に興奮させて疲労回復を促したりする効果があるんです」

朝鮮ニンジンの果実のサポニンは、自律神経の乱れやホルモンバランスのくずれ、冷えなどによって引き起こされるさまざまな体の不調を改善する効果が期待できるそうです。さらに、骨髄細胞に働きかけて造血作用を高めたり、新陳代謝を促して全身の細胞を賦活する働きもあるのです。

「驚いたことに、朝鮮ニンジンの果実のサポニンが入ったダイエットアイスを食べると、体が冷えるどころか、ポカポカと温まってくるんです。アイスだけでなく、チョコレートも作りました。10個入りで5000円という高価なものでしたが、サポニン独特の苦みがチョコレートのコクと混ざり合い、大人にピッタリのほろ苦いスイーツができたんです」

甘味には砂糖を用いず、低カロリーで虫歯になりにくいとされる甘味料のマルチトールを使用。体に良いとされる素材を使うことにとことんこだわったといいます。

「ただ、サポニン入りスイーツが発売された1990年代後半は、いまよりも『スイーツは甘いもの』という感覚が一般的だったんです。残念ながら、サポニンの苦みはあまり受け入れられませんでした。さらに、スイーツの製造を依頼していた会社の倒産といった事情もあって、スイーツを発売しつづけることができなくなってしまいました」

食べると、体が冷えるどころか、ポカポカと温まるという“幻のダイエットアイス”

それから20年以上がたって健康への意識が高まり、食の多様性が受け入れられるようになったいま、国内での製造・販売が中止された“幻のダイエットアイス”はインドネシアで発売され、大好評を博しているそうです。日本国内でも、サポニン入りチョコレートの再販が検討されているといいます。

カロリーを気にせず食べられるどころか、血流改善や新陳代謝を促進する効果が期待できるダイエットアイスやチョコレートは、まさに夢のスイーツ。瀬井さんは、「味や価格がより多くの人に受け入れられるよう試行錯誤していきたい」と熱く語ってくれました。