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良性発作性頭位めまい症の大半は首・肩の凝り・姿勢に起因する脳の血行不良の可能性大

耳鼻咽喉科
額田記念病院めまい外来医師 中山 杜人

頸椎の異常や首・肩の筋肉の凝りによる血行不良でめまいが起こり中高年は要注意

中山杜人[なかやま・もりと]

1971年、群馬大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科に入局。同大学院修了。医学博士。1977年、武蔵野赤十字病院耳鼻咽喉科副部長。1982年、横須賀共済病院で呼吸器内科を担当(後年、内科部長)。耳鼻咽喉科に入局以来、めまいの診療に携わり、めまいに悩む患者さんの役に立ちたいという思いから、1987年、同病院でめまい外来を内科に開設。2003年、同病院を退職後、非常勤としてめまい外来を担当し、2005年まで勤務。現在は額田記念病院で呼吸器内科とめまい外来で診療を行っている。

良性発作性頭位めまい症は、頭を特定の位置に動かしたり、頭位や体の向きを急に変えたりしたときに、発作的に強い回転性のめまいが起こる疾患です。めまいは長く続くことはなく、20秒~1分程度で治まりますが、めまいの発作を何度も繰り返すのが特徴です。めまいの他に吐き気を伴うこともあります。

良性発作性頭位めまい症の原因は、平衡感覚をつかさどる内耳の器官の異常といわれています。平衡感覚は三半規管と2つの耳石器(卵形囊と球形嚢)によって維持されていますが、耳石器に障害が起こると、良性発作性頭位めまい症が発症すると考えられています。

耳石器の内側には耳石というカルシウムの粒がたくさん入っており、耳石の下には感覚毛を持つ有毛細胞があります。頭の位置が傾いて耳石がずれることで感覚毛が動きを感じ取り、前庭神経を通して平衡感覚の情報を脳に伝えているしくみになっています。

ところが、加齢や衝撃など、なんらかの原因で耳石がはがれ落ち、隣接する三半規管の中に入り込んでしまうことがあります。体の回転を感知するセンサーである三半規管は内リンパ液で満たされており、頭の位置が変わるたびに耳石の塊によって内リンパ液が乱され、めまいが起こると考えられているのです。

通常、良性発作性頭位めまい症と診断されると、「頭位治療」が行われます。頭位治療は、医師が頭の位置をゆっくりと上下左右に動かすことで、三半規管の中に入り込んでいる耳石を移動させて、三半規管から追い出す治療法です。

頸椎に不具合が起こると血流がよどんで脳の血行不良を生じやすくなる

私は約10年にわたって耳鼻科で勤務した後、内科に移って計46年間めまいの患者さんを診てきました。もちろん、良性発作性頭位めまい症の原因が耳石の場合もありますが、多くの患者さんを診ていく中で、むしろ小脳や脳幹の血行不良が大半の原因ではないかと考えるようになったのです。

特に中高年の場合、頸椎(首の骨)の異常や首・肩周辺の筋肉の凝りによって起こる脳の血行不良が問題です。実際に内科の臨床現場の第一線では、良性発作性頭位めまい症ではなく「中枢性発作性頭位めまい症」という診断名が70~80%という高確率で見られるのです。

中枢性発作性頭位めまい症は、脳の後方に血液を送り届けて栄養や酸素を供給している椎骨動脈の血流が障害され、脳の血行不良が起こることで発症します。椎骨動脈は首を曲げて下を向いたり、上を向いたりするだけで血流が悪くなりやすい特徴があります。しかも、動脈自体が細くて左右の椎骨動脈の太さが異なることも多く、動脈硬化(血管の老化)の影響を受けやすいと考えられます。

動脈硬化からの危険因子には、椎骨動脈の屈曲・蛇行や椎骨動脈の起始部(椎骨動脈が他の血管から枝分かれしている部分)の屈曲・蛇行、小脳や脳幹に古い小梗塞(脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞)、古い微小出血が認められるケースがあります。

また、頸椎に問題がある場合も首・肩に凝りを生じやすく、椎骨動脈の血行不良が助長されます。例えば、変形性頸椎症やストレートネック、後彎などが挙げられます。ネコ背のように姿勢の悪い人や、仕事でパソコンを一日中操作していたり、うつむき姿勢でのスマートフォンや編み物、裁縫、読書などに没頭したりする人も要注意です。

首・肩の凝りがあると、椎骨動脈周囲の自律神経(意思とは無関係に内臓や血管の働きを支配する神経)の一つである交感神経(心身を活発にする神経)が刺激され、容易に活性化しやすい状態になっています。その結果、必要以上に首を伸ばしたり、曲げたりしたときや頭を過度に左右に動かしたときなどに、左右の椎骨動脈が収縮して細くなります。すると、椎骨動脈が頭の中で合流する脳底動脈と呼ばれる領域の血流が悪化し、めまいが生じるようになります。

長時間のパソコン作業で起こっためまいは首の血行不良が原因で薬とマッサージで改善

中枢性発作性頭位めまい症の注意点

次に、私が実際に治療した患者さんをご紹介しましょう。

Aさん(50代・男性)は、設計の仕事でパソコンを毎日長時間にわたって使用していました。仕事中にめまいを感じることが多く、耳鼻咽喉科を受診したところ、良性発作性頭位めまい症と診断されたといいます。

その後、めまいの改善を求めて私の病院を受診したAさんは、頭を動かす理学療法(頭位治療)を行うとめまいが悪化したと訴えていました。そこで、Aさんの首の状態を調べると、本来は前方に彎曲しているべき頸椎が後方に彎曲し、首・肩が板のように凝っていました。その結果、良性発作性頭位めまい症と分かりました。

私は、Aさんに頸部の血流を改善する薬を飲んで、低めの枕を使って寝る生活を心がけるようアドバイスしました。さらに、定期的に鍼やマッサージ療法を受けてもらった結果、悩みの種だっためまいが消失したのです。

動脈硬化などの血管病変に首・肩の筋肉の緊張が加わることで血流がさらによどみ、脳の平衡機能が障害を受けてめまいが起こることは十分考えられます。めまいを起こしたら、脳の組織や血管の状態を調べるMRIやMRAなどの磁気共鳴断層撮影装置による検査だけでなく、首の血管の状態が分かる頸部MRAによる検査も受けるといいでしょう。
 

この記事は「健康365」2018年11月号に掲載されています。