プレゼント

視覚の記憶力を刺激する「お金の柄クイズ」

Dr.朝田のブレインエクササイズ!

メモリークリニックお茶の水理事長 朝田 隆

皆さん、十円玉の表には何が描かれているか、すぐに思い出すことができますか。記憶には、文字で表すことができる記憶のほか、聴覚や嗅覚、触覚などの五感の記憶があります。今回の問題は、五感の中でも視覚の記憶に注目した問題です。

お金の柄を思い出す問題で視覚の記憶力を刺激して脳を活性化させよう

[あさだ・たかし]——筑波大学名誉教授。1982年、東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科、山梨医科大学精神神経科講師、筑波大学精神神経科学教授などを経て現職。数々の認知症の実態調査に関わった経験をもとに、認知症の前段階からの予防・治療を提案している。著書に『その症状って、本当に認知症?』(法研)など多数。

お金と私たちの生活は、切っても切り離せないものです。最近では、どんどんとキャッシュレス支払いが広がりつつあります。しかし、紙幣や硬貨は、少なくとも私のような世代にはありがたみのあるものです。私たちが毎日使っている紙幣の中でも特になじみ深いのが一万円札と千円札ではないでしょうか。さまざまな肖像画が紙幣に印刷されてきましたが、2024年から発行される新しい千円札の肖像画は北里柴三郎(きたざとしばさぶろう)になるそうです。

ところで、私たちが普段使う〝記憶〟という言葉は、「過去の出来事」や「仕事の知識」など、文字で表すことができる記憶を指す場合がほとんどです。しかし、普段は意識しませんが、いわゆる五感の記憶もそれぞれあります。視覚、聴覚、触覚、味覚、(きゅう)(かく)の情報が記憶として脳に保存されているのです。街並みを見て、「ここは観光で来たことがあるな」と思い出すのは視覚の記憶による働きです。

さて、今回は、視覚の記憶から脳を刺激する「お金」を題材にした問題です。

お金の柄クイズ 問1

千円札は、野口英世(のぐちひでよ)伊藤博文(いとうひろぶみ)夏目漱石(なつめそうせき)などの肖像画が描かれてきました。

最初の問題ですが、この中でいちばん古いものはどれでしょうか。一見すると、簡単な問題に思われるかもしれません。確かにそれぞれの絵柄を見て、「あった、あった」と思い出すのは視覚の記憶です。しかし、「順番は?」と考えると、どうでしょうか? 順番は言葉で説明できる記憶であり、視覚ではなく文字の記憶です。記憶の中でも、特に文字の記憶は、年を取るごとに残りにくくなるといわれています。

お金の柄クイズ 問2

次に上のイラストをご覧ください。百円玉の絵が三つ並べてあります。このうちほんとうの百円玉の柄はどれでしょうか。この問題は意外に難しいと思います。

この問題は視覚的な記憶も関係しますが、むしろ「注意」や「関心」が問われる面もあります。普段から百円玉の表と裏を注意深く観察する人はめったにいないのではないでしょうか。実は、筆者もこの問題を作るためにしげしげと百円玉を見て、初めて「ああこういう柄だったんだ」と思いました。

百円玉に限らず、ほかの硬貨であっても、お札であっても、普段私たちはいろいろな物を注意深くは見ていないものです。実際、日本の硬貨に似ているせいで外国の硬貨だと気づかれることなく使われることが時々ニュースになっています。

今回は、お金と視覚の記憶の問題でした。この機会に、お金をじっくり眺めて、視覚の記憶として保存してみてはいかがでしょうか。

答えは次ページです。

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