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更年期・妊活からAGAまで有効な「アグリコン型イソフラボン」とは?

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会理事 小林 平大央

女性ホルモン様成分のエクオールを大量生産するダイゼイン由来のイソフラボンとは?

小林平大央
[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主催。一般社団法人日本先進医療臨床研究会理事(臨床研究事業)、一般社団法人不老細胞サイエンス協会理事(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

「イソフラボン」という成分をご存じですか? イソフラボンは、大豆だいずくずといったマメ科の植物に多く含まれるポリフェノールの一つです。ポリフェノールは、植物性の成分で抗酸化力が強く、体内で発生する活性酸素(酸化作用の強い酸素)を抑えることで生活習慣病の改善・予防に役立つとされています。イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンに非常に似た分子構造をしているため、更年期障害の改善や妊活などに効果があるとされています。

ところで、イソフラボンにはさまざまな種類があります。一般的なイソフラボンは、糖と結合した「グリコシド型イソフラボン(以下、グリコシド型と略す)」で、大豆などのマメ科の植物中に多く存在しています。糖と結合した状態のグリコシド型は分子量が大きく、腸内細菌の酵素の力を借りて糖を分解しなければ体内に吸収されません。

一方、吸収しやすい形のイソフラボンが、グリコシド型から糖が外れた状態になっている「アグリコン型イソフラボン(以下、アグリコン型と略す)」です。アグリコン型は、吸収の妨げになっている糖が外れた状態のため、腸内細菌の働きを必要とせずに腸で速やかに吸収されるのです。

イソフラボンは主に大豆に多く含まれる成分ですが、大豆の部位によって含まれるイソフラボンの種類も異なります。アグリコン型には、主に丸大豆に多く含まれる「ゲニステイン」や「グリシテイン」、大豆胚芽はいがの部分に多く含まれる「ダイゼイン」の3種類があります。また、糖と結合したグリコシド型には、主に丸大豆に多く含まれる「ゲニスチン」や「グリシチン」、大豆胚芽の部分に多く含まれる「ダイジン」の3種類があります。これらの種類の中でエストロゲン様成分である「エクオール(大豆イソフラボンの代謝物)」を最も多く産生できるのは、アグリコン型のダイゼインであることが分かっています。

エクオールはエストロゲン受容体に先回りして結合するため、閉経前のようなエストロゲンの存在下ではエストロゲンの作用を弱めることが知られており、この働きが更年期特有の症状の緩和に働くと考えられています。また、一般的な更年期障害治療のホルモン補充療法では、不正出血や胸の張り・痛み、胃のむかつき、吐き気、ごくまれに血栓症けっせんしょうなどの副作用が現れることがあるのに対し、アグリコン型のダイゼインを摂取することでエクオールを産生する方法では、副作用は現在のところほとんど報告されていません。

アグリコン型の体内でのエクオールへの代謝量は、グリコシド型と比べて2倍以上多いことが分かっています。エクオールを直接摂取する場合と比べても、尿中の排泄量はいせつりょうに差はほとんど認められなかったとする動物実験データが、武庫川むこがわ女子大学薬学部とニチモウバイオティックス社の共同研究によって学会発表されています。

高齢の女性に多い骨粗鬆症こつそしょうしょうの予防にも、アグリコン型は効果を発揮します。骨粗鬆症を予防するには、日光浴や適度な運動、骨の元となるカルシウムやビタミンDを摂取することに加え、カルシウムの流出を防ぐ効果のあるエストロゲンの働きをサポートすることが重要とされています。

ところが、前述したとおり、高齢の女性では、体内で生産されるエストロゲンが大幅に減ってしまうため、骨からのカルシウム流出を防げず、骨粗鬆症が頻発するのです。そこで、ここでも体内で減少したエストロゲンの代用としてアグリコン型が大活躍するのです。

また、ある研究では、大豆・豆腐・納豆などをたくさん食べる人ほど、乳ガンになりにくいと報告されています。この事実から、吸収性の高いアグリコン型の摂取が乳ガンの予防につながることも期待されているのです。

ところで、アグリコン型は、薄毛予防や脱毛治療、前立腺肥大ぜんりつせんひだいの予防など、男性にとっても魅力的な効能を備えています。

男性の薄毛に多い症状に「男性型脱毛症(AGA)」という特徴的な症状があります。この症状は男性ホルモンの「テストステロン」を〝脱毛ホルモン〟と呼ばれる「ジヒドロテストステロン」に代謝させる「5アルファリダクターゼ」という還元酵素が活発になることで発症することが分かっています。

5アルファリダクターゼは、薄毛ホルモンであるジヒドロテストステロンを多く発生させて髪の成長期を短くしてしまいます。その結果、髪が十分に育たなくなったり、成長途中で抜け落ちたりするため、本来の髪の密度を維持できずに薄毛になる可能性が高くなってしまうのです。

そこで、ジヒドロテストステロンの発生を抑えることがAGAの予防と治療に対して非常に効果的です。現在、AGA専門のクリニックなどで多くの方法が考案され、ジヒドロテストステロンの発生を抑える治療が行われています。

注目なのは、ジヒドロテストステロンの発生を抑える作用を女性ホルモンの一つであるエストロゲンも持っていることです。そして、エストロゲンに似た働きを持つ大豆イソフラボンも、エストロゲンと同じく5アルファリダクターゼの活発な働きを抑制させることができることが分かってきています。大豆イソフラボンは薄毛トラブルを予防したり、和らげたりする作用が期待できるという研究結果があるのです。

ジヒドロテストステロンは、AGAだけではなく、前立腺肥大などでも悪玉ホルモンとして働くことが知られています。アグリコン型は、肥大化した前立腺を刺激するジヒドロテストステロンを産生したり前立腺に作用したりするのを防止する役割を果たしてくれることも判明しているのです。