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さまざまな疾患に効く非晶質の「水溶性ケイ素」とは?

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会理事長 小林 平大央

小林平大央
[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主宰。一般社団法人日本先進医療臨床研究会理事長(臨床研究事業)、エポックメイキング医療研究会発起人代表(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

「水溶性ケイ素」という成分をご存じでしょうか。ケイ素は元素記号Siで表される元素で、地殻中で酸素に次いで2番目に多く存在する元素とされています。英語では「シリカ」や「シリコン」と呼ばれ、半導体やガラス、レンズなどの原料として使用されるため、工業製品の世界では非常に有名な元素です。また、ケイ素は人体にも必須のミネラルであり、細胞や内臓、血管、骨、筋肉、皮膚など、あらゆる臓器や組織の構成成分として分布しています。

ところで、ケイ素という元素には大きく分けて2つの形態があります。工業製品などに使用される、一般によく知られているケイ素は「結晶質」という形態です。この形態はがっちりとスクラムを組んだような状態で、ケイ素が身動き取れない構造となっていて、「二酸化ケイ素」という水に溶けにくいケイ素です。

それに対して、一般にはあまり知られていませんが、水に溶けやすいコロイド状態で水溶液中に分布している「水溶性ケイ素」という形態があります。一般的なケイ素(二酸化ケイ素)に対して、水に溶けやすい水溶性ケイ素には次のような特徴があります。

身体に有益

一般的な二酸化ケイ素は発ガン性を有するなど多量に身体に入ると有害ですが、水溶性ケイ素は身体のさまざまな部位の構成成分になるなど身体にとって非常に有益です。

体内吸収性が高い

水溶性ケイ素は体内で吸収されやすい形態であるため、体内でのケイ素の利用効率が高くなります。

コロイド状である

水溶性ケイ素はコロイド状といって非常に小さな粒子が液体中に分散している状態で、体内でコラーゲンの合成を促進し、骨や関節、皮膚、髪、つめなどの健康維持に非常に役立つとされています。

一般的なケイ素は二酸化ケイ素という結晶構造を持っているため、水溶性ケイ素とは異なる物理的性質を示します。二酸化ケイ素は、主に工業的な用途でガラス、セラミックス、コンクリートなどの原料として広く使用されています。そして、この結晶構造のケイ素は、体内に吸収されると発ガン性を示すなど、人体にとって害となる危険な成分でもあります。例えば、発ガン性が指摘されているアスベストも二酸化ケイ素を主成分とする物質です。

それに対して、水溶性ケイ素は一般的なケイ素(二酸化ケイ素)とは異なる「非晶質(アモルファス)」という構造を持っており、人体に対して有益であることが知られています。また、水溶性で体内での利用効率が高いことから健康増進や疾病予防の効果があるとされ、実際に医療の現場で使用されています。ケイ素を含む食品やサプリメントは多く存在しますが、この非晶質という性質が非常に重要なのです。

日本先進医療臨床研究会理事兼愛知医科大学名誉教授の福沢嘉孝ふくざわよしたか先生の研究によれば、非晶質の水溶性ケイ素は、抗酸化作用が非常に高いだけではなく、骨密度の強化や免疫力の向上、動脈硬化の抑制、老化防止などの生理的効果の報告が過去の文献で多く見つかるとのことです。実際、愛知医科大学で倫理委員会の承認を受けて水溶性ケイ素を使用した臨床試験を行ったところ、摂取群は非摂取群と比べて体重とBMI(肥満度を表す体格指数)が有意に減少し、脂肪細胞から分泌ぶんぴつされて脂肪を燃焼させる「アディポネクチン」という成分の数値が明確に増加しました。

水溶性ケイ素は、単体での使用以外でも、ほかの機能性素材との組み合わせによって相乗効果を発揮する素材として期待されています。実際、骨密度の研究では、カルシウムとの併用で効果が発揮されるとの報告があります。そのため、医療・健康・美容関連で効果が報告されているさまざまな機能性成分との併用によるヒト臨床試験などを通して、今後さらに水溶性ケイ素の研究が進展することが期待されています。

『医師が臨床する珪素の力』
日本珪素医療研究会編・監修(青月社)

内藤ないとう医院院長の内藤真礼生まれお先生(医師・医学博士)の研究によれば、ケイ素は脳の「松果体しょうかたい」という器官に多く含まれているとのことです。松果体は、脳の中心にあって光に反応する生体内での情報伝達の重要な器官です。

また、ケイ素は生体内でさまざまな情報を瞬時に伝達する情報伝達経路である「生体マトリクス」の重要な成分でもあります。人体は細胞から組織、臓器、皮膚まで張り巡らされた生体マトリクスによってさまざまな生体情報をやり取りしています。

そのため、松果体や生体マトリクスの重要な成分であるケイ素が不足するとさまざまな情報伝達に不具合が生じます。こうした不具合は、発達障害や睡眠障害、骨病変、骨粗鬆症こつそしょうしょう膠原病こうげんびょう(SLE、レイノー症状、シェーグレン症候群など)を引き起こすと考えられています。また、ケイ素不足によって松果体が萎縮いしゅくすると、松果体の働きによって分泌されるセロトニンやメラトニンが不足し、うつなどの精神疾患や睡眠障害が生じる要因の1つになるとされています。

富山県立大学准教授である立田真文たてだまさふみ先生の研究によれば、ケイ素には老化の原因の1つともいわれる糖化物質である「AGEs(最終糖化産物)」の発生を防ぐ効果があります。AGEsは体内のたんぱく質と余分な糖分が体温によって不正常な結合をすることで発生します。身体内のあらゆる部位に存在するコラーゲンというたんぱく質が加齢によって弾力を失うのも糖化が原因です。

ケイ素はたんぱく質やコラーゲンを部分的にコーティングすることで、糖化反応をブロックして糖化を防ぐことが分かってきました。ケイ素の糖化ブロック作用から、水溶性ケイ素を日常的に飲用すると老化の予防になるといわれています。

一般的に「老化は血管から」といわれます。毛細血管の血管壁はたんぱく質でできているため、これが糖化によって損傷されたり、「ホモシステイン」というアミノ酸の一種が血管壁に付着したりすると血管の弾力性が損なわれて各臓器や組織への血流が不足し、さまざまな不具合が生じます。これも加齢による老化現象とされます。水溶性ケイ素は、糖化やホモシステインの付着による血管の硬化を防ぐ効果もあるとされており、その点でも老化を防止する成分であると考えられているのです。