365調査隊
運動の後にやってくる筋肉痛。誰しも経験があるものの、昔に比べると遅れて筋肉痛が起こっているような気がする……。そんな筋肉痛について、調査隊がウソ・ホントに迫ります。
最新の研究が筋肉痛の誤解を解く!
久しぶりに運動をしたり、重い荷物を運んだりした翌日、筋肉がきりきりと悲鳴を上げている。そんな経験、誰しもあるでしょう。いわゆる筋肉痛のことです。
その筋肉痛について、昔からまことしやかにささやかれている〝都市伝説〟があります。年を取ると筋肉痛の発症が遅くなる、というやつです。
実際、わが身を振り返ってみても、若い頃は運動した翌日には筋肉が痛みだしたものが、40代に差しかかってからは、運動の2日後くらいに筋肉痛を自覚するようになった気がします。
しかしこれ、医学的に事実なのでしょうか? 久我山整形外科ペインクリニックの佐々木政幸先生に聞いてみました。
「筋肉痛のメカニズムというのは、実はまだ完全には解明されていないんです。ただ、運動の強度が関係していることはおそらく間違いなく、筋肉に対する負荷が高い運動を行うと比較的早く筋肉痛が現れ、負荷の低い運動を長時間行うような場合は、筋肉痛が遅く出てくるとされています」
なるほど。確かに年を取ると激しいスポーツよりもジョギングのような緩やかな運動にシフトしがちだから、まさに〝負荷の低い長時間の運動〟に当てはまります。
「また、一つの可能性としては、運動不足や加齢による筋力低下によって血流が滞ると、筋線維を修復する物質が各部位に届きにくくなるため、筋肉痛が遅れて現れるということも考えられますね」
そもそも、よほどトレーニング好きなシニアでない限り、年を取るほど運動する機会は減っていきます。それに伴って筋肉の質も低下してしまうのは致し方のないことで、それ故にささいな刺激(負荷の低い運動)であっても筋肉痛の原因になると考えれば、加齢とともに発症が遅くなるのも納得がいきます。
なお、佐々木先生によると、これまで一般的にいわれてきた、運動によって疲労物質の「乳酸」が蓄積することが筋肉痛の原因であるとする説は、最新の研究では否定されているといいます。
「乳酸に原因を求めるには医学的に矛盾が多く、近年では運動によって傷ついた筋線維を、体が修復しようとする時に発生する痛みが筋肉痛の正体であるという説が有力です」
また、加齢によって血流が衰えると、痛みを発生させる物質を除去する作業が遅れてしまい、筋肉痛の回復に時間がかかるようにもなるとのこと。運動習慣は大切ですが、体をいたわることも忘れないようにしてください。