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オレンジ色の花が特徴的なクワンソウ! 睡眠薬の減量や離脱に役立つと期待

ご当地研究最前線

健康365編集部の朝倉です。

2018年9月10日(月)に沖縄県那覇市にあるソムノクエスト株式会社の江口社長(薬学博士・薬剤師)にクワンソウの歴史や科学的エビデンス、PR活動などについてお話を伺ってきました。

沖縄にはウコンや青パパイヤ、ゴーヤ、島ラッキョウといった伝統野菜が多くあり、いろいろな効能が知られています。その中で、ユリ科植物であるクワンソウも沖縄伝統野菜の1つです。クワンソウは沖縄で古くから薬用や食用に用いられてきた多年生単子葉植物で、琉球王国時代から安眠に効果があることが知れており、「ニーブイ草(眠り草・沖縄方言)」の別名があるほどです。

当時1800年代の書物には、クワンソウは不眠や鳥目(夜盲症)の改善、疲労回復などの効能もあると記されていて、琉球王国の宮廷では薬膳の1つになっていたといいます。

その後も『沖縄民俗薬用動植物誌』などで薬効を持つ植物として紹介され、クワンソウの効能は幅広く知られるようになりました。一方で、近年までクワンソウの睡眠に対する科学的なメカニズムは十分には解明されていなかったそうです。

クワンソウに含まれる成分や化学構造は、1970年代から研究・分析が始まったといいます。さまざまな大学で研究が行われ、2007年に早稲田大学の研究チームがクワンソウの葉や白茎(葉の一部)から新たな有効成分(ヒプノカリス)を抽出することに成功。クワンソウに含まれる毒性のある物質(アルカロイド)を取り除いた「ヒプノカリス」は、その後健康食品として商品化されています。

多くの研究データがある中で一部をご紹介します。

睡眠脳波計と顔の筋肉の緊張度を測定する装置を用いて、動物の睡眠の実験が行われました。その結果、ヒプノカリスを飲ませた動物は1時間後からノンレム睡眠(熟睡・深い睡眠)の量が明らかに増加したことが確認されました。また、活動時間帯に動物が眠くなるようなことはなく、生活リズムへの影響は見られません。さらに、実験によってヒプノカリスは、脳の睡眠中枢には影響を与えずに皮膚近くの血流をよくすることで放熱をうながし、深部体温を眠りやすい温度に下げる特長があることもわかってきました。

ボランティアの協力を得てヒプノカリスを飲んだ後、試験用の室内で一晩眠ってもらい、夜10時~翌朝7時までの睡眠中の脳波と筋肉の緊張度などの記録もしています。試験の結果、ヒプノカリスを飲んだ13人中12人に、ノンレム睡眠の理想的な増加とレム睡眠(夢見・浅い睡眠)のバランスのよい出現が認められています。ヒプノカリスを飲むと入眠しやすいうえに、眠りのリズムが整えられて熟睡できることがわかったのです。

上記の結果から、「ヒプノカリスは自然な眠りを誘う野菜抽出物ですが、軽~中程度の不眠を訴える人たちの症状緩和に役立てたい」と江口社長は話します。

不眠の治療に睡眠導入剤や効果の長い睡眠薬を使うときは、いくつかの注意点があるといいます。睡眠薬を飲むことで特徴的な脳波が現れ、十分な熟睡感が得られないことがあります。また、習慣性と依存性の問題もあります。最近、汎用されている睡眠導入剤や睡眠薬は安全性が高くなっていますが、習慣的に飲むことによって慣れが起こってさらに強い効果を求めて一回の用量が増えたり、飲まないと落ち着かない依存的になったりするケースも多くみられます。また、半年間睡眠薬を飲みつづけるとかえって不眠症になる副作用も報告されていることから、「薬を減らしたい。やめたい」と思う人たちもいます。そうした人たちには、睡眠薬を処方した主治医に相談して、ヒプノカリスを併用した睡眠薬の減量スケジュールを作ってもらうように提案しているそうです。後日、数ヵ月~一年間ほどヒプノカリスを飲みつづけた結果、睡眠薬の減量や離脱に成功して正しい睡眠習慣がついたと知らせてくれた人がいて、「ヒプノカリスを開発してほんとうによかった。研究者冥利に尽きる」と江口社長は嬉しそうに話していました。

また、「クワンソウを食べるだけでなく、オレンジ色の花を見て楽しんでほしい」という江口社長。クワンソウの開花時期は9~11月で、現地では花畑の散策や花摘みの体験などができます。江口社長から紹介の今帰仁ざまみファーム(沖縄県国頭郡今帰仁村字上運天)については次の機会にご紹介しましょう。